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燈 ともしび
2026-06-01 19:23:47
1571文字
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ぎゆさね【ぬくもり湯たんぽ】
キ学軸。冬の必需品
見た目的には体温が低そうなのに、と。よく言われるらしい。
切れ長の目元も一筆で描いたような通った鼻筋も薄めの唇だって。確かに全て印象的には涼しげに思える。それなのに生徒指導の時はむしろ熱苦しいくらい熱いし、大切なものを守るときには誰よりも強くある。
あとこれは俺しか知らないのだけれど、恋人への愛情も熱い。それが冨岡義勇という男だった
喉元が締まっているのが苦手だからワイシャツのボタンをつい開けてしまっているけれど、俺は元々寒がりだ。我ながら矛盾していると思うが、苦手と体質は別物だから仕方ない。だから冬は好きじゃない。
実家にいた頃は良かった。チビ達が勝手に俺の布団の中へ潜り込んでくるから天然の湯たんぽに囲まれて眠れた。それはぬくぬく天国で。でも今は一人暮らしだからもう出来ない。
ネットで探したり、同僚に聞いてみながらあれこれ試したけれど、やはり人の体温が一番暖かくて落ち着くという結論になってしまっただけだった。
せめて週末だけでも実家に帰るかァと考えていたら
「俺ではダメだろうか」
なんて真顔の冨岡に迫られてしまった。
明日のミニテストの問題を考えていた時だったので油断していた。俺としたことが軽々と体育教師控え室に連れ込まれてしまった。
「ダメってなにが」
「俺は不死川よりも体温が高いぞ」
「
……
ああ」
知ってる。だって冨岡は俺の恋人なので。過去にも一緒に寝たことがある。でも流石に俺も恋人を湯たんぽ代わりにしようとは思っていなかった。
「寒い時期だけでも俺の部屋に来れば良い」
「部屋に着く前に冷えるだろ」
「一緒に帰れば俺が温められる」
「いや、生徒や保護者に見られたらどうすんだよ」
「うちの学園は教師同士の交際は禁止されていないから大丈夫だ」
「それ、絶対に大丈夫じゃねえだろ」
放課後で施錠してあるとはいえ、学園内で恋人を自分のテリトリーに連れ込んだ挙句に迫ってくんなァ。
そう思ったらなんだか可笑しくなってきてつい吹き出してしまう。しかも疲れているからか一度笑い出したら止められない。
「
……
」
「悪い、悪い」
まだ笑いながら一応謝れば、冨岡は変な顔をしているからまた吹き出してしまった。いつもは無表情のくせに俺の前では表情豊かなんだよな、冨岡は。
「笑われたのは解せないのだが、笑う不死川が可愛いからどんな顔をすれば良いのか悩んでる」
「ぷ、く、くくく。それはありがとよォ」
だめだ。やっぱりこいつは俺のツボだ。
ケラケラと笑いながらゆるく抱きつくと、冨岡は相変わらず変な顔をしながらも俺の腰を抱き寄せてくるから力を抜いてもたれかかっておく。
「てめえはさァ、湯たんぽよりも抱き枕のが向いてんじゃねぇの」
こんなに癒されるし、と耳元に呟けば
「別に抱き枕でも良い」
なんて言い出すからまた笑いたくなる。
「抱き枕でも湯たんぽでも良いんだ。全部口実だから」
「ん?」
「不死川を俺の部屋に引きずりこむ為の口実にしようと思っていただけだから、理由なんてなんでも良いんだ」
「
……
ばーか。自分からネタバラシしたらダメだろうがァ」
クスクス笑って冨岡の首にぎゅっと抱きついてみる。見た目は冷たそうなのに、やっぱりとても温かい。触れなければわからないこと。でも、これは俺だけに許された距離だから。
「年末前に探すか、部屋」
「え」
「もっと一緒にいてえって思ってんのがお前だけだと思ってんなよ」
「! 分かった!」
「声でけぇっての」
ほら。やっぱり熱いんだこの男は。恋人にも全力だ。
だから冷え性で寒がりな俺はピッタリじゃねぇ? なんて考えたらまた可笑しくなって、笑う。
冬の間、くっついていようか。ずっと。そうしたらよく眠れるし幸せに違いないから。
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