ortensia
2026-06-01 11:45:32
1665文字
Public 傭リ
 

ファンタジー?傭リ+配

手紙屋というフリゲの四角四面な手紙の回。摩耗して彷徨ってる(,,✾︿⊗,,)×傭を待って何度も生まれ変わってる🌻+🍁。

 ずっと、何度も配達を受けている手紙がある。その差し出し人の方は旅の人らしく、手紙はポストに投函されず、行く先々で出会った時に、預かっている。
 不思議なのは、赤い装束のその人が毎度言うのだ。
「手紙というものは初めて書くが、一度、出してみたくてな。」
 僕は、彼曰くの初めての手紙を、もう何度も届けている。金色の楓を拾い集めるように。
 届け先はいつも同じ。
「ありがとうございます。今回も、読んでいただいても?」
 僕は頷いて、僭越ながら手紙を開ける。
 僕が手紙を読んでいる間、配達犬は楽しそうに彼の回りを駆け回っている。楓と似た色の金色の彼、金色の花の彼。
 彼はここから動かないし、手紙も読まない。返事を出すこともない。
 手紙を読み終える。
「どうも毎度お手数を。……分かっています、まただいたい同じ内容でしたね。」
 そう。そうなのだ。
 送り先の彼は毎回初めての手紙を書くから、毎回同じ部分が出てくる。
 それに、彼は旅をしていると言うが、もうずっとこの付近を彷徨っているように思う。
……え?……ああ、いいんです、別に。ここままで。大丈夫です。」
 彼本人をここに連れてくるかと提案した。
「あの人はここに居たのです。」
 驚いて花を見る。
「あの人に、向日葵が咲かないような所を代わりに見てきてと言った。」
 だから彼は旅をしているのだろうか。
「まあそれは適当な口実で……あの人が色々と分からなくなる前に、世界を知りに行けばいいと思った。」
 花はおどけるように言うが、赤服の彼は色々と分からなくなって、そのせいで今は彷徨っているのかもしれない。
「それでここに戻って来ないのなら、それでいいと思っています。」
 花はそう言うが、彼はどうなのだろう。
 そういえば、彼の手紙は不定期に何度も受け取るが、ここに花が居ない時期もある。楓が金色に色付く頃には、入れ替わるように、居なくなってしまう。それでも次の夏にはまた、ここに居る。夏の初めには、預かっていた手紙の数枚を、纏めて読み上げる。
 赤服の彼がここに戻って来られたとしても、花の彼がここに居なければ、きっと意味がない。また、別の場所へ迷って行ってしまうのだろう。だから迷子はこの辺りで、ずっと彷徨っているのかもしれない。
「もし、あの人が本当に全部何も分からなくなって、世界の全てを殺してしまっても、それならそれでいいと。……ふふ、恐ろしいことを言ってしまいましたか?」
 それは、確かに恐ろしい。けれど、そこに生き残ってしまうことの方が、恐ろしいかもしれない。
 気が付いたら、配達犬が遠くに行って吠えていた。尻尾を元気よく振っている。
 そちらを向くと、迷子の目と合った。
 赤服がこちらに近付いてくる。ゆっくりと。配達犬が嬉しそうにその後に続く。
 そして花の前で見上げた。その両手を掬い上げるようにして握り、触れる。
「おや、まあ。」
 赤服の彼は感慨深げに、しかしどこか夢見心地に暫く花を見ていた。
「おまえ、何回目のおまえだ……?おれは、いつからか、夏が数えられなくなった……。おれは、おれは……。」
 花は何度か頷いた。それは軽くあしらうようであったが、羽ばたく白い眼差しをよく見ていた。
「まあまあ、いいじゃないですか、そんなことは。」
……そうか。そう……かもな。」
 赤い手がより強く握った。
「ここに戻って来れたから。おまえが、ここに居てくれたから。」
 その場で二人は暫し黙っていた。思い出した、手紙とは、本来黙って読むものだ。二人は互いに互いという名の手紙を読み合っているようだった。この手紙ばかりは、配達人は必要ないみたいだ。
「おまえ、手紙を出したことはありますか?」
「手紙?……いや、ないな。」
……そう。」
 夏が終わったら、この人はまた彷徨い行ってしまうだろうか。
 そうなる前に、僭越ながら、花の彼の代筆を引き受けても、いいだろうか。隣では、それは名案だとでも言うように、配達犬が元気よく一声鳴いた。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。