別に、強く勧誘されたわけではない。それはあのシスターの場合もそうだ。ただいつも祈りを捧げるように静かで大人しい。こちらにそれを強いてくるわけでもない。それどころか、ただ猫を撫でたがる他の者達に、そっと膝を突いてみせる。
ただこっちがどうしても気に障って、気になって、過剰に反応を起こしてしまう。シスターの方ではない。
隠者だ。
それをあの人は聞き分けのない子供相手のようにあしらうから、益々気が立って、引っ込みがつかなくなって。これじゃ本当に子供のようだ。
「……どうして神を拒絶する?」
溜め息をつかれる。
しかしこちらも生半可な気持ちで突っ掛かっているわけではない。信じられない気持ちなのだ。
何もかも。
「どうして!どうしてだって!?非科学的だからさ!」
それをアンタが言うのかと。理論を追い越して声が荒む。
「ヘルマンの……君の研究が叶うというのに?」
「……は?」
隠者は何かを痛ましく思うかのように一度目を伏せた。彼は荘園に来てからは滅多に表情が変わらない、いや、死んでから。私が、殺してから。
「私が否定した永久機関、今もしているから決して過去形ではないのだが……。ヘルマンの話も否定したし、君の、ルーカスの時もそれは同じだ。無理は覆らないから。」
違う事には、どうあっても違うと言う。それを、人によって対応を変えるなどしない。先生らしい。
自分の贔屓の相手に対しても変わらぬ対応を取る事、それで自分自身も苦しむとしても。
「だが奇跡なら、無理を叶えられるだろう。」
「は……?」
つまりこの人は、この隠者の男は、人が心血注いだ実験研究がもし叶うような事があれば、それは奇跡だと言っているのだ。神でもいなければ、叶う筈のないことだと。馬鹿にしている。頭が酷く痛む。
「ハ、ハハッ!それじゃまるで、私の発明を叶えたいから、隠者になったみたいじゃないか!」
言い放った言葉に、彼は悲しげな表情で笑った。
「もっと早く、こうなっていれば良かったのかもしれないね。」
それはあまりにも予想外だった。
そんなの、私がアンタに本当に死んでほしかったみたいじゃないか。馬鹿にすんな。胸が苦しい。
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