usagipai
2026-05-31 22:53:41
1199文字
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No title


「あっ〜!! アニェラ〜!! お兄ちゃん?」

少女は嬉しそうに手を振る
ふわりと揺れる銀色の髪
宝石のように輝く瞳
無邪気な笑顔

その全てが、あの子と同じだった。
けれど違う
決定的に違う
目の前にいるのは、僕が愛した妹じゃない。
妹の姿を借りた怪物だ。

……ふふ」

少女は首を傾げる。
まるで何も知らない子供のように。

「ぼくは君のお兄ちゃんでもなんでもないよ」

そう言って突き放す。

けれど少女は気にした様子もなく、一歩、また一歩と距離を詰めてくる。
その顔を見るたびに胸が痛んだ。

悲しくなる。

苦しくなる。

思い出が抉られる。
あの子はもういない
どれだけ願っても
どれだけ探しても

もう帰ってこない

いるのは狂ったこの怪物だけだった

――この世界へ魂を移した時

ほんの少しだけ希望が見えた

あの世界では終わっていたからだ

皆が死に

僕達は輪廻転生すら許されず

消えていった
スフィーも
僕も

もう二度と会えないと諦めていた
だから選んだ

スフィーと共に、この世界へ来ることを

新しい未来のために
失ったものを背負いながら、それでも歩くために

……なのに

一緒に現れたのは
救われるはずだった未来に現れたのは
あの世界を壊した張本人
スフィリアだった
心臓が嫌な音を立てる
こいつはまた奪う
また壊す
またスフィーを苦しめる

また――

「ふふ……

少女は僕を見上げる

そして、あの頃と同じ笑顔を浮かべた

「お兄ちゃんは本当にワタシが好きなんだね!」

両手を広げてくるりと回る

「嬉しいなぁ〜! 嬉しいなぁ〜! 愛されてるな〜!!』

「違うッッ!!!!」

気づけば叫んでいた
喉が裂けそうなほどに
少女の動きが止まる

「お前じゃない……

拳が震える

涙が滲む

「お前じゃないんだ……

目の前の顔は同じなのに

声も同じなのに

仕草も似ているのに

何一つ違う

あの子はもっと優しかった

あの子はもっと温かかった

あの子は――

「もう返してくれ……

掠れた声が零れる

「返せ……
縋るように
祈るように
……あの子を……返せ……

沈黙が落ちる

だが次の瞬間

スフィリアは口元を押さえて、くすくすと笑い出した

「ふふ……

一歩

また一歩

今度は逃がさないと言わんばかりに距離を詰める

「優しいお兄ちゃん」

耳元で囁く
甘く
優しく
それでいて底知れない悪意を滲ませながら

「リテムにいた時……どんな気持ちだった?」

瞳が細められる

獲物を観察するように

壊れかけた玩具を弄ぶように

「"あの子"だと思って追いかけてきて私に会ってどう思った?」

返事を待つこともなく
少女は愉快そうに笑った

「教えてよ!」

妹の顔で語られながら