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燈 ともしび
2026-05-31 21:34:58
1315文字
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ぎゆさね【愛をどうぞ】
キ学軸。愛情たっぷりなので
トントン、と。規則正しく包丁の音が聞こえる。
一番初めはそれは酷かった。指は切るわ、食材は粉々にするわで、見てるほうがストレスが溜まりそうだった。それでも「料理を覚えたい」という冨岡の願いを叶えてやりたくて俺も共に頑張った。その結果が、この規則正しい包丁の音だ。
俺は味噌汁が得意だと思うと自分から言うレベルまできたので、今では朝と夜の味噌汁作りは冨岡の担当になっている。俺は割とシンプルな味噌汁を作ることが多いのだが、冨岡は食材が多めの味噌汁を作る。おかず味噌汁とでも言えば良いのか。色々な出汁が出て美味しい。まあ、たまに食材が半煮えだったりもするけれどそれはご愛嬌。
こたつに入ってぬくぬくしているとキッチンから徐々に良い匂いがしてくる。今夜は鮭入りの味噌汁らしい。今日は休日なので買い出しも二人で行った。
「俺は鮭を選ぶのが上手い」
と胸を張っていたので食材を選ぶのも冨岡に任せた。確かに一番美味しそうなのを選んでいたから家に帰ってからちゅーしておいた。
「出来たぞ」
大鍋を抱えて冨岡がこたつに戻ってきたので、二人揃って手を合わせ、いただきますをする。
蓋を取ると鮭大根を味噌汁にしたような中身が見える。とても美味しそうだったが、ひとくち食べればやっぱり美味しいに変わる。
「美味しい」
そう言えば、冨岡は嬉しそうに目を細めて笑う。普段は切れ長の綺麗な目なのに、この目の縦幅がなくなるような笑い方が俺は大好きだ。見ていたら少し照れ臭くなって慌てて味噌汁に集中することにした。
温かなこたつに入って、大好きな人が作ったご飯を大好きな人と食べる。それはなんて幸せな時間だろう。
「今日の味噌汁も美味い」
「それは良かった」
「これ明日の朝に玉子落として飲みてえなァ」
「作ろう」
「半熟なァ」
「
……
努力する」
料理の腕は上がってきているが、まだ玉子の硬さは難しいらしい。眉間に皺が寄ったので伸び上がって眉間をさすっておく。その後、本人も同じようにさすっていたので大笑いした。
俺はさァ、半熟が好きだけどそれ以上に冨岡の作る味噌汁が大好きなんだよ。だから気にすんな。カチカチの玉子でも俺は絶対美味しく食べる自信がある。いや、自信しかないから。
また手を合わせてごちそうさまをして。キッチンに二人並んで洗い物をして。この時間も幸せだからうちは食洗機を買えないんだ。
最後の皿を布巾で吹いている冨岡に近寄って、横から腰に両腕を回して抱きつく。
「
……
どうした」
問うてるのに、冨岡の声が優しくて甘いから。
「甘えてるゥ」
俺も甘ったれになってみる。
「もう終わりだから」
あやすように目蓋にキスを落とされるから。
「こっちも」
わざと唇を突き出したら、そこにも優しい温もりが落ちてくる。
やめられないんだ。これが。幸せで、幸せだから。
「今日も美味しかった。ありがとうなァ」
ちゅ、ちゅ、なんて可愛いリップ音を繰り返しながら合間に感謝を伝えれば
「愛情がこもってるから」
と笑われたので
「知ってるゥ」
と、今度は冨岡の首に両腕を回して抱きついた。
この愛情は、俺だけの。
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