燈 ともしび
2026-05-31 21:24:48
1121文字
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ぎゆさね【はじめる、はじまる】

キ学軸。新年初めての朝のお話

「眩し……
 閉じていた目蓋の奥まで朝日が届き、目が覚めた。
 一月一日。元旦。新しい年の始まり。
 ずいぶんとおめでたい日だというのに、日はもう昇っているしカーテンはきちんと閉め切らずに隙間が開いている。それもこれも昨日うっかり盛り上がってしまったせい。

 冨岡も俺も普段はそれほど飲まないが、年末年始はほぼ唯一の長期休みとあって飲みの機会が増える。
 大晦日に飲もうぜと声をかけられ昼から宇髄達と飲み、その後は家で冨岡と二人で飲み、準備だけはしていたのでなんとか年越し蕎麦は食べられたがその辺りから記憶が薄い。なんかずっとキスばかりしていた気もするが本当かどうかまでは覚えていない。まァ、ここは自宅だし相手は恋人だし、していたとしても別になんの問題もないのだが。
 布団をめくって中を覗けば、冨岡も俺も部屋着のスウェットは上下共に着ているからキスまでしかしなかったらしい。新しい年に一番最初に確認するのがそれかよと思ったらなんだか笑える。

 横を向けば冨岡はまだ気持ち良さそうに寝ているから、そっと起き上がり開いていたカーテンを閉めた。どうせ今日も休みだ。ゆっくり寝かせてやりたい。雑煮用の肉や野菜は切ってあるし、おせちは昨日宇髄から重箱で貰ってるし、寝坊してもなんの問題もない。
 それに、実はひっそりと冨岡の寝顔が気に入っていたりする。いつもは雛人形のように凛々しく整った顔が、俺と寝ている時だけは無防備になる。それがめちゃくちゃ嬉しい。こっちを向いたままの冨岡の寝顔は新しい年になってもやっぱり無防備だったからその唇に触れるだけのキスをした。
 冨岡がこの顔を見せるのは俺だけなんだ。そんなの堪んねェだろうよ。

「ん」
 起こしたか? と一瞬焦ったが冨岡は数回パタパタと敷布団の上を叩くとまた寝てしまった。俺が布団から出ているから寒くなったか。
 慌てて布団の中に戻れば眠ったままの冨岡の両腕が伸びてきてぎゅっと抱きしめられてしまった。むふ、なんて満足げなため息も聞こえる。
 はいはい。俺もしばらくこの腕に捕まえられておいてやるよォ。一緒に朝寝坊しよう。
 抱きしめられるがままに冨岡の胸に顔を押し付けると大好きな匂いと体温に包まれる。そうなると無条件に無意識に俺もまた眠くなってしまう。
「さねみ……
「はいよォ」
 寝ぼけて名前を呼ぶ声とほとんど眠りに落ちている声。きっと起きたらどっちも覚えていないであろうやりとり。
 でも、とても幸せなやりとり。
 
 ああ、どうか。
 どうかまた今年も二人健康で幸せでありますように。この腕を離さないでいられますように。
 目蓋の奥に残る今年初めての朝日にそっと願った。