燈 ともしび
2026-05-31 21:23:49
1276文字
Public
 

ぎゆさね【更新する】

キ学軸。幸せを更新する

 不死川に習いながら料理を始めてみた。
 一緒に暮らすのに俺達は対等で、それなのに俺が不器用なばかりに不死川に家事の天秤が傾いてしまうことがいつも申し訳なく、ならば俺が甘えた考えを捨てて料理をしっかり作れるようになったら良いのだと、そんな考えからだった。

 俺が料理を教えて欲しいと頭を下げると不死川は笑いながら承諾してくれた。おまけに冨岡は形から入るとやる気が出るかもなァなんて言って、お揃いの濃紺のエプロンまで買ってくれたのだ。俺は単純だからそれでやる気が出た。
 不死川が作ってくれるご飯はいつもとても美味しい。だから不死川にも美味しいご飯を食べてもらいたい。パンを焼き、千切っただけのレタスサラダとかそんなもので作った気になって満足している場合ではない。頑張れ、俺。
 俺は和食が好きなのでまずは基本の味噌汁から教えてもらう事にした。不揃いの野菜は生煮えの原因になるし、煮立たせ過ぎると風味が飛ぶ。ひとつひとつ、教え上手な不死川に教わって数ヶ月。味噌汁だけは一人でも作れるようになった。
 あと水加減をちゃんと測って作る事で、以前まではべちょべちょだったご飯も普通には食べられる固さになった。
 ご飯と味噌汁とメインのおかずを何か一品。それが自分に課した朝ご飯の献立。
 魚は焼くだけで良いから簡単で、つい魚メインに傾いてしまうが、不死川はいつも美味しいと笑って食べてくれた。焼き過ぎてパサパサでも笑いながら完食してくれる。冨岡が作ったご飯は美味しいと褒めてくれる。優しい。嬉しい。
 料理を作り始めたら不死川のことがもっと好きになってしまってどうしようか。この気持ちの深さに底はあるのか。いや、ない。だって毎日好きが更新していく。

「不死川、これからもずっと俺の作った味噌汁を毎朝飲んでくれ」
 気持ちが高まるあまりそう言えば
「嬉しいがプロポーズはもう去年されてんなァ」
 と大笑いされてしまった。
 俺の伴侶殿は笑った顔がめちゃくちゃ可愛いから嬉しい。一緒に暮らすようになって、前よりもたくさん笑ってくれることがとても嬉しい。愛おしくてたまらない。
「料理、習って良かった」
「そーかい」
「不死川が可愛くてどうしたら」
……俺も、俺が作った飯を冨岡が幸せそうに食べてくれるのを見てんのが好きだぜ」
「うん。嬉しい。おんなじだ」
 ぎゅうっと不死川を抱きしめる。やっぱり昨日よりも今日の方が愛おしさが増している。

「明日の味噌汁は何を入れようか」
「なんでもいいよ。冨岡が作ってくれんのが最高なんだ」
 欲がない不死川はそう言ってまた笑うけれど、出来れば不死川の好きなものが良い。ずっと不死川のご飯もそうだった。俺の好物がたくさんだった。それは全て愛情だった。
「いっそ俺のことを煮込んでみるか」
 半分冗談、半分本気で提案すると、不死川はとうとうお腹を抱えて笑い出した。
「冨岡といると毎日飽きねえわァ」
 笑い泣きながら俺にキスしてくれる。

 俺も、毎日幸せと愛おしいが更新するんだ。
 不死川じゃなきゃ、駄目なんだ。