燈 ともしび
2026-05-31 21:17:11
1059文字
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ぎゆさね【油断大敵】

キ学軸。隙だらけ、好きだらけ

 休みの日、二人でこたつの端と端に座ってテレビを観ていたら
「面白いんかこれェ」
 なんて、やや不満そうな声が向かいから聞こえてきた。
 面白いか面白くないかで言えば特に面白くはなかったのだけれど、寒くてこたつから出られなくなっていたのとチャンネルを変えても同じような内容の番組しかやっていなかったので、それならこれで良いかと妥協した結果だった。
「変えても良いぞ」
「やだ。なにもやってねェし」
 珍しく不死川は駄々こねモードらしい。本当に珍しい。いつもなら俺が甘えさせてもらう事が多いのだが、なら今日は俺が甘えて貰えば良いのか。でもどうしたら不死川は機嫌を直してくれるのだろう。

「おいで」
 両腕を不死川に向かって広げてみる。
 俺は単純だから自分がやって貰って嬉しいことをやることにした。
 が、不死川は顔をしわくちゃにして微妙な表情をしている。どうやらこれはハズレらしい。難しい。

 目の前で山になっているみかんをひとつ取り、皮を剥いて差し出してみたがそっぽを向かれてしまった。これも違う。
 行き場をなくしたみかんは仕方なく自分の口の中へ。予想より酸っぱくて思わず咽せる。いつも不死川が剥いてくれるみかんは甘いから油断した。
「ばーか。ヘタが小さめの平たいやつが甘いんだっての」
 甘えさせるつもりだった不死川は、俺のみかん選びの失敗を面白そうに笑って見ている。笑っているということさ機嫌は少し直ったのか。それなら酸っぱくてびっくりしたのも無駄にならなかったので良かった。
 
 ちょっと寒かったが、温いこたつから出ると思いきって不死川の隣へ移動する。不死川はまだ笑っていた。笑いながらみかんをひとつ取って剥いてくれた。条件反射で口を開けるといつものように食べさせてくれる。
 でも、それもやっぱり酸っぱくてまた咽せた。

「油断大敵ィ」
 やられた。酸っぱくて顎の下が痛い。
 でも大笑いする不死川は可愛いし、ご機嫌だ。
 不死川の手からみかんを取り上げてこたつの上に置く。
 なにすんだよ、そんな顔をしていたがそのまま覆い被さるように押し倒す。
「油断大敵だな」
 今度は俺が笑ってそう言ってみたのだけれど、
「別に俺は油断してないぜ?」
 なんて笑いながら首の後ろに両腕を回されてキスされてしまった。明るいうちはあまりさせて貰えない、深いキスだった。

 とても気持ち良くて夢中になってキスをしていると
「冨岡は隙だらけェ」
 と、鼻の頭に齧り付かれてしまった。
 今日はずっと俺の負けだ。