燈 ともしび
2026-05-31 21:15:22
1773文字
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ぎゆさね【そういうところ】

キ学軸。ほんのりいかがわしいです。甘め

「ッは……
 全力疾走したあとみたいに息が切れる。いつもそう。冨岡とシたあとは一度死んだくらい疲れる。
 いや、死んだことはないが、それくらい疲れる。
 お互いもう若くないのだからそろそろ飽きたりとかしねェのかなと思ったりもするが、残念ながらそんな気配がない。冨岡はいつも丁寧に、そして幸せそうに俺を抱くから大切にされてんなァとか、愛されてんなァとか、そう思う。
 でも俺はつい聞いてしまう。女と違い、柔らかくて面倒な準備をしなくても冨岡を受け入れられる身体が無いから。
「そろそろ飽きねえの?」
 って。

「飽きる?」
 問われた冨岡は意味が分からなかったようで首を傾げていたから追加する。
「俺のこと、抱くの飽きねえのかなって」
 流石にそこまで言えば伝わったのだろう。冨岡は後始末をしながらものすごい顰めっ面になっていた。不快、心外。そう顔にデカデカと書いてある。
「俺は何か不死川の気に障るようなことをしただろうか」
「いや、なんにもしてねぇよ。すげえ気持ち良かった」
「じゃあなんで」
……んー、なんでだろうなァ」
 同性との恋愛が初めてだから怖いんだよ。
 それが本音なのに言えない。情け無い気がして。
 冨岡との恋が本気だから、だからこそ怖気付いたりするし怖いのだ。

 後始末を終えた冨岡はベッドに戻ってくるなり背後から俺を抱きしめる。さっきまでは欲と熱に塗れた感じだったが、今は慰撫というか温めようとしているかのような、そんな感じで優しい。

「俺も、不死川を抱く時は毎回怖い」
「は?」
 予想外の言葉に思わず声が出た。
「怖いんだ、実は」

 いや、なんだそれ。頭が痛くてぐらっと目が回る。なんか、ショックで。怖がってる奴に抱かれてたのか俺はって。自分のことは棚に上げてショックだった。逃げたい。でも冨岡は更に力を込めてぎゅっと抱きしめてくるから逃げられない。

「怖いに決まってるだろう。大好きで大切でずっと愛おしい相手なのに、する度に更に好きになるんだから」
「は」
 え? は?
 思考をシャットアウトしてる間に、なんかものすごく小っ恥ずかしいことを言われた気がする。

「今も、する前よりずっと不死川のことが好きで大切でどうしようか困ってる」
 このままいったら離れたら泣くかもな、俺は。
 そんなことを背後で鼻を啜りながら言うから固まってしまった。
 恐る恐る後ろを振り返れば、冨岡はひどく真面目な顔をしている。とても冗談とか閨の睦言を言っているようには見えない。
「気持ち悪いか? 引いてしまったか? 確かに俺も自分で引くくらい不死川のことが好き過ぎるなとは分かっているんだ」
 いや、心配すんのそこかよ。振り返って突っ込めば、それくらい不死川が好きだから怖いんだって開き直ってくる。
「飽きるどころか、毎回新記録更新中なんだ。好きが止まらない。底が見えないから怖い」
 今度は正面から抱きしめられてしまった。ぎゅっと。力一杯。
 あー、バカなこと聞いた。今更ながら思う。
 冨岡はすげえ俺のこと好きじゃねえかよ。抱かれてるとき感じてる全ては、冨岡の本音そのものじゃねえか、って。
 なんか。なんか、泣きそう。

「毎回聞いてくれていい」
「お?」
「何度でも不死川が好きだって愛してるって、大切だって言葉を惜しまず言うから、聞いて」
 だから、引かないでくれ。
 そう言うから笑えてきた。

 引くわけねぇのに、俺が。
 だって言葉でも触れ方でも、全て気持ち良くて幸せなんだから。

「冨岡のそういうところ、好き」
 ぐす、っと鼻を啜りながら言うと後ろ頭をポンポンとされた。
「引かない不死川は優しいな」
「優しくねえっての。強欲だもん」
「俺に対して強欲ならいくらでも」
「ばか」

 冨岡は俺のことを甘やかしすぎだろ。
 俺も、冨岡のことを好きな気持ちの底が無いから怖えよ。

「冨岡ァ」
「うん」
……もういっかい、する」
「うん。もういっかいしたい」
 ぐすぐす鼻を鳴らしながらキスされて押し倒される。涙と鼻水できっと酷い顔になってるだろうに、俺を見る冨岡の顔は蕩けそうに甘い。

「嘘ついた」
「え?」
 重ねるだけのキスを何度もしながら、冨岡は言う。

「いっかいだけじゃ、足りない」