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燈 ともしび
2026-05-31 21:07:43
1349文字
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ぎゆさね【微睡む】
余生軸。甘め
柱時代の屋敷をお返ししてしまった後、共に暮らすための家を探してきたのは不死川だった。
市井から少し離れているから静かで、でも山の中腹にあるから日当たりは抜群に良い。古い家だが、移り住む前にある程度の手入れはされていたし、畳は入れ替えたのでとても居心地が良い。ただ、広すぎる庭は男二人ではきちんとした本来通りの手入れが出来ず、半分を畑のように耕して野菜作りに使ってしまっているのだがこれもまた楽しい。
時々、宇髄一家や炭治郎達が約束も無しに突然ふらりとやってきて、不死川は文句を言いつつも美味い飯を作ってもてなす。
この家ではそんな幸せで穏やかな日々を過ごしていた。
一緒に暮らし始めて分かったことだが、不死川は割とどこでも寝てしまう。
「野良時代は寝れる時、どこででも寝てたからなァ」
なんて、なんてことないように笑うけれど、鬼殺隊に入る前ならば刀も無く、鬼を倒す知識も碌になかった時だろう。柱になってから以上に精神的にも限界なくらい張り詰めていたに違いなく、寝ると言うよりも気絶するに近かったのだと推測出来る。
もしあの頃、俺が隣にいられたのなら一晩中でも守りたかった。当時から守られる必要がないほど強かったとは分かっているが、俺がそうしたくて仕方がなかった。
過去は変えられないし、今日まで生きてきた軌跡を間違っているとは思わない。
今、目の前で鬼の脅威に晒されることもなく、ぬれ縁で不死川が無防備にただ眠いからと寝ていることがとても嬉しい。
「不死川」
呼びかけても春の柔らかな日差しは微睡を加速させてしまう。茶を淹れたので声をかけたが、不死川は薄ら目を開けてもまたすぐに眠りに落ちてしまった。
色素の薄い髪の毛が太陽の光を浴びて輝いて見えて、思わず手を伸ばして触れる。昔はそれこそ般若のような顔をして伸ばした手をはたき落とされたけれど、今は大人しく触れさせてくれる。
嬉しくて額あたりから耳を通り、うなじまで手を滑らせてみる。ここまで無抵抗、無反応だとどこまで触れたら起きるのか試したくなった。鬼が去ったこの世はこんな戯れが出来る暇が俺たちにもある。
うなじから首すじを通って顎の下まで。
流石にくすぐったいのか、小さく吐息のようにふふ、なんて声が聞こえてくるも不死川の目は開かない。顎の下に置いた手を軽く持ち上げれば不死川の顔もこちらを向いて持ち上がる。
まつ毛が長い。こちらも髪の毛と同じくきらきらとして見えた。
そっと唇に唇を重ねる。まだ抵抗されないし、起きないから調子に乗って何度も触れた。
や、とむずがるような仕草と声にようやく顔を離したが、見下ろしている不死川の目元も唇も、俺に吸われすぎて赤いから誘っているようにしか思えない。
「不死川」
「ちゃんと言葉にして言わないとやめないぞ」
俺は鈍いらしいからな。くつくつと笑いながら耳元に囁けば、不死川の耳まで赤く染まった。
「い」
「い?」
「言わねェ
……
」
目は開いていないが、会話のやり取りが出来るのだから起きてはいるのだろう。
ならば遠慮はいらないかと本格的にその身にのしかかった。
不死川の唇は甘い吐息を吐き出したが、その後も静止する言葉は出てこなかった。
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