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燈 ともしび
2026-05-31 21:06:45
1127文字
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ぎゆさね【補給】
キ学軸。不意打ち
「オイ」
頭上から声が降ってきたので振り返ると不死川が窓から身を乗り出してきていた。
「まァーたぼっちメシしてんのか」
「
……
ここが落ち着くんだ」
食べているものが定番だったぶどうパンから不死川手作りのお弁当に変わったが、俺のぼっちご飯は変わらない。あと定位置の階段も。
キメツ学園の同僚達は気の良い人間が多く生徒もそれほど手がかかることもない。教師としてとても働きやすい環境だしそれは本当にありがたい。
けれどそれとこれとは別というか、人が多いととても疲れやすいのだ。それは俺の性格だから仕方ない。昼休みくらいは一人でのんびり静かに過ごしたくて、気付いたらいつの間にかこの定番を崩せなくなっていた。
恋人である不死川なら近くにいても疲れないのだが、昼休みはご飯を食べつつミニテストの採点や次の授業の問題を考える時間にしていると聞いているので誘えない。やはりこのスタイルしかない。
「不死川はもう食べ終わったのか?」
「今日は早めに食べたからなァ」
言い終わるなり、窓を飛び越えてこちらにやって来た。嬉しい。少しでも近くに居られるのはとても嬉しい。
「蓮根のおかずがとても美味しかった」
「あ? ありがとな。あれ簡単だからまた入れてやるよ」
「あと紅しょうが入りの卵焼きは初めて食べたけれどこちらも美味しかった」
「卵焼き、いつも甘くしちまうからたまにはな」
不死川の作ってくれるご飯はいつも美味しい。家で食べる温かいご飯も、どうしても冷めてしまうお弁当もどちらも美味しいのだ。作り方を習って自分で作ってみたが、俺が作るとあまり美味しくなかった。不死川は美味しいと食べてくれたがレベルが違った。
「冨岡はいつも美味しいとありがとうを言ってくれるから作り甲斐がある」
「手間をかけて作ってくれるのだから礼を言うのは当たり前だろう。味は本当に美味しいから美味しいと言っているが」
言い切れば不死川は嬉しそうに笑う。
「冨岡のなァ、そーゆーとこな」
ふと影が出来て、不意打ちのように不死川がキスしてくれた。
「好きだ」
その後、もう一度。
「ミニテスト作りで煮詰まってたんだよ。元気補給出来たわ。じゃあな」
まさか職場でキスして貰えるとは、なんて呆然としている間に不死川は軽々とまた窓から中へと戻っていってしまった。
風のように身軽な恋人が大好きなのだが、一方的なキスで火がつけられてしまった俺はどうすれば良いのか。抱きしめたかったので無意識のうちに伸ばしていた両腕は空振りとなってしまって虚しい。
「
……
帰ったら覚えてろ」
弁当の残りを食べつつ、俺は今夜はどうやってあの恋人を食べてやろうかなんて物騒なことを考えていた。
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