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ながみね
2026-05-31 20:00:55
4438文字
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シミュレーター・ルームの幽霊
fgo。偽ソがいるご都合時空アフタータイムにて、生前レフが残したフラ対策のギミックが発見される話。ギャグ。レフオルのような要素が含まれます。
それは突然のできごとだった。
アフタータイムに再現されたカルデア基地。色々あって戻ってきた偽典ソロモンを連れ、新しい魔術礼装との相性を試そうとしたときのことだ。
『先輩! なにかおかしいです、シミュレーターの設定が勝手に完了してしまって、まもなく起動しようとしています。
一旦こちらで終わらせますね』
「そうなの? 分かった。こっちは特に問題ないから
……
」
問題がない、ことはなかった。
一瞬周りの光景がノイズが入ったようにぶれ、気づけば藤丸たちは薄暗い書斎に立っていた。
見覚えのない部屋だ。壁には本棚が並び、なにか魔術的に意味のありそうなタペストリーが飾られている。個人の部屋に窓がある、ということは少なくと南極ではないのだろう。
その部屋には男が一人立っていた。細身で背が高く、緑色のスーツを身にまとい、こちらに向けて帽子のつばを軽く持ち上げる。
「おや、いらっしゃい。来客とは珍しいな」
「レフ教授
……
!?」
驚く藤丸を庇うように偽典ソロモンが前へ出る。
「落ち着け。あれに攻撃を仕掛けるなよ」
「いきなりそんな失礼なことしないよ!!」
内輪で言い合っていると、レフ教授らしき人物は偽典を見てすこし首を傾げた。
「もしかして、君はこれが初めてではないのかな?
──ああ、どうりで。これでは役目が果たせない。私は機能不全を起こしているようだ」
「え?」
何を言っているのかよく分からない。
発言内容に薄ら寒さを覚えながら、まじまじと彼の姿を見つめる。どうみてもレフ教授だ。けれど現在のレフ本人はサーヴァントとして藤丸のすぐそばに立っているはずで。
その偽典ソロモンはといえば、なぜか気まずそうに相手の様子を窺っていた。
「まあ、良しとするか」
レフ教授の姿の誰かは一人で納得すると、藤丸に向けて初めて友好的に微笑んだ。
「あらためて、ようこそ私の領域へ。ここは獣の夢を止めるための罠であり、その残骸だ。
残念ながら殺傷能力はそこの魔神によって既に奪われている。製造目的は既に果たされている。
君たちに害をなすつもりはないから安心してほしい」
「
……
ええと、つまり?」
「うん、もう帰っていいよ。
この機能はもはや無意味だから、早めにシミュレーターから削除することを勧めよう」
「待って待って待って」
まもなくシミュレーションを終了する旨のアナウンスが流れだし、藤丸は全力で叫ぶ。
「マシュー!! 聞こえてたらちょっと終了作業を止めてほしい!
今からみんなでお話があります!!」
◇◇◇
そういうわけで急遽『第一回「レフ教授の部屋」実装検討委員会』が開かれた。
メンバーは管制室からオルガマリー、マシュ、グラン・カヴァッロ。現地からは引き続き藤丸と、オブザーバーとして偽典ソロモン、レフ教授(仮)が参加している。
なにがオブザーバーだオレは帰るぞと偽典ソロモンは訴えたが、レフ(仮)の「彼がいなければ私も出てこれないよ」の一言であっさり却下された。
「経営顧問には
……
、そうね、まずこの場で叩き台を作ってから相談することにしましょう」
冠位英霊の経営顧問はオルガマリーの独断で外された。後ろめたさで若干所長の目が泳いでいたが、誰も文句は言わない。リソースの無駄だと即座に却下されそうだな、という認識は一致していた。
「それでは、カルデアの管理リストに未記載だった情報資源の扱いについて、会議を始めます。
まず前提として、該当資源は当時のレフの独断、それも職権濫用で許可なく作られたものですが、その製造理由は人理焼却を未然に阻止すること。カルデアの理念から外れるものではないと考えます。
事情を鑑みて今後は正式に管理・活用する方針でいいわね?
異議がある者は挙手の上で発言をお願いします」
「異議なーし」「異議ありません」「リソースにも余裕あるし、いいんじゃないかな」いささか緊張感に欠ける返答だったが、オルガマリーはもう気にしないことにしたらしい。
「いいでしょう、それでは具体的な運用方法について──」
「ちょっといいかな」
そこに水を差したのは"未登録の情報資源"本人だった。不可解そうな顔で手を挙げている。
「なぜ当たり前のように私の保存前提で話が進んでいるんだい?
これでもデス・トラップの残骸だよ。もう少し危険性や有用かどうかを検討してからの方がいいんじゃないか」
当然の指摘だろう。カルデアの連中はのんきすぎる。偽典ソロモンは表情には出さないまま内心で同調した。
所長は一瞬怯んだが、すぐに厳めしい顔を取り繕ろう。
「もっともな指摘ね。ソロモン王、あなたの評価はどうかしら?
そのレフはまだ危険だと思う?」
偽典ソロモンは隣に立つ男を横目で見やった。彼は特に気負うこともなく、"どうぞ"と肩をすくめてこちらの発言を促した。
「
……
脅威度は極めて低い。
危険性の高い礼装は既に取り除かれ、残っているのはデコイとしての人格だけだ。それも長期運用は想定していない、お粗末なつくりと推定される」
「その通り。一度限りの不意打ちの予定だったからね」
淡々と認めて、レフの姿をしたギミックはにこりともせずにモニターへ向き直った。
「勘違いしてもらっては困るのだけど、私はべつに故人の思考や感情を再現しているわけではない。
レフ・ライノールであればこうするだろうという計算結果をなぞっているだけで、自由意志もない。シミュレーターでの敵性体の挙動と同じだよ。
もし故人とのコミュニケーションのようなものを期待しているのなら、役には立たないだろうね」
「それは
……
、そんなつもりはありません」
オルガマリーは動揺を押し隠し、毅然と立ち向かう。
「誰であれ故人の代わりとするつもりはないわ。馬鹿にしないでちょうだい。
けれど、思いがけず見つかった同僚の形見で昔を懐かしんだり、仕事に励むための心の糧としたりするのは自由でしょう」
「そうです、それに私は貴方とお話ししたいです!
きっと他にも話したいという方はたくさんいるはずです!」
所長とマシュの反論に、レフは明らかに納得していない様子ではあった。だが口にしたのは別の話だ。
「私はメモリアルアイテムではないんだが。故人の意思や肖像権を考慮する気はあるのかな」
「ううっ」
倫理的な話を持ち出されると弱い。
なんでもありなアフタータイムとはいえ、管制室のメンバーは立場的に規範を守り、守らせる側だった。
「
……
ええと、そうね、レフ本人に意思確認できない以上、法務の人間に確認をとる必要があるでしょうけど、レフの名誉を傷つけないよう最大限配慮することは約束します。
おかしな改変はなし。24時間常駐させたりもしない。誰かが独り占めしないよう時間制限を設けて、予約制か抽選方式にして、利用者の依存防止対策も考えて
……
」
まごつきながらもなんとか体裁を整えようとする所長に対して、偽典が思ったことをレフが代わりに口にした。
「懐かしむだけなら、もう画像やビデオでいいんじゃないかな」
その方が安上がりだろう?
……
いやさすがにそこまでは思わなかったが。オレなら思っても口には出さないが。
地獄のような沈黙が落ちた。その中で、すぅーっとなにか空気が漏れるような音がする。気のせいかとも思ったが、オルガマリーが息を吸い込む音だった。
「いいかげんにしなさいよ!!?
この石頭の頑固者っ!!」
大音声に空気がビリビリと震えた。
「さっきから聞いてればなに? あれができない、これが無理。挙げ句の果てに『画像やビデオの方がいい』?
こっちはねえ、レフの代役を求めてるわけでもなければコスパ重視してるわけでもないのよ!!」
そう言って目の前のデスクを勢いよく両手で叩く。手元のコップが危うく揺れる。パワハラ認定されてもおかしくはない。
レフの様子を窺うと、軽く目を見張ってフリーズしていた。
「いいこと? 有用かどうかはこちらが判断する話です。
限界があるなら限界があるなりの使い途や運用制限を考えますし、お望みなら利用者に満足度調査をして結果を示してもいい。
そもそも貴方、私たちに見つかった時点で拒否権なんてないのよ。
貴方はもう私たちカルデアの財産なの。廃棄なんてもっての外。壊れようがどうしようが最後まできっちり面倒見てあげるから、そのつもりでいることね!!」
「
……
ああ、うん」
所長の啖呵に気圧されるように、レフは曖昧に頷いた。
「問題があることを理解した上で利用するというなら、私もこれ以上言うことはない。
拒否権がない点はもとより理解しているよ」
そのすまし顔をじとりと睨みつけ、立ち上がったままオルガマリーはしつこく確認する。
「いいのね? 聞いたわよ?」
「言ったよ、私は君たちのものなんだろう」
「そう。そうよね
……
」
先ほどの勢いから一転して、所長はへなへなと着席した。言いたいことを言って気が抜けたのだろうか。よせばいいのにそこへグラン・カヴァッロが茶々を入れにいく。
「いや〜、熱烈だね。プロポーズかと思ってどきどきしちゃったよ!」
「軽口はよしなさい、まだ会議中です。というかプロポーズじゃないから。真面目な話だから」
小声で注意しておいて、自分が何を言ったのか思い返したらしい。無言のまま一気に顔が赤くなり、その次に青くなる。忙しない娘だ。
「
……
ええと、先ほどのレフに対する発言は、少し言葉が過ぎたと思うわ。感情的に机を叩いたのもよくなかった。謝罪します」
「かまわないよ。別に気にしていない」
レフはそつなく受け流し、それからもの問いたげにちらりと偽典を見る。言いたいことはわかる。だが今のオルガマリーは"ああ"なのだ。
気にするなと小さく頷き返す。お前が死んでいる間に色々あったんだ。
「あのー、ちょっといいですか」
そんな中でのんきに挙手したのは藤丸だった。レフの方を振り返って無邪気に質問する。
「元のレフ教授なら、アフタータイムに呼び出されて助けてほしいって頼まれたら、なんて答えてたと思います?」
「ちょっと藤丸、あなた何を聞いているの」
「いいじゃないですか。教授がどんな人だったのかオレも知りたいし」
ごちゃごちゃ言い合う二人をよそに、レフは顎先をつまんで少し考える素振りをみせる。次に口を開いた時には、その声音は柔らかいものに変わっていた。
「──この身がまだ、今を生きる君たちの助けになるというなら」
仕方がないなというように眉尻を下げて、レフはモニター越しに所長に語りかける。
「私に否やはないよ、オルガ」
所長の突然の体調不良により、会議は15分間の休憩を挟むことになった。
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