重たい瞼をどうにか持ち上げる。ゆらめく視界の中できれいな青が目に入った。もう少しだけ、目を開く。数センチしかない程の距離に、龍胆くんがいる。
とく、とく。触れている場所から鼓動と体温が伝わって来て、そのリズムがとても心地よかった。できるだけ大きく空気を吸い込む。龍胆くんと、自分と、この空間が全部同じ匂いで満ちていた。それは同じシャンプーのせいかもしれない。それとも、先程までの行為のせいなのかも。
龍胆くんの髪をすくってみる。さらりと指の間を通る青は、きっちり乾かして梳かしたおかげで常よりも触り心地が良かった。と言っても、いつだって龍胆くんの髪はきれいなのだけれど。
彼の胸元に視線を落とす。うーん、これは明日怒られるか微妙なラインだろうか? どさくさにまぎれてギリギリを狙ってみたんだけれど、どうだろう。もしかしたら消えてくれるかもしれないけれど、しばらく残ってるとなるといつものシャツの開き具合では見えてしまうかもしれない。さっきは気づいてなさそうだったので、明日着替えたときに何か言われるかもなぁなどと思う。でも、そういうときの龍胆くんの表情が見たいなとも思ってしまうので、特に反省はないんだけれど。
特定の個人に対してこんなにも独占欲が強かったんだということは、二十八年生きてきて初めて気づいたことだった。これには自分が一番驚いている。
「……じゅーいち?」
柔らかな光を持って、赤い目がこちらを見ていた。掠れた声に至近距離で話されて、どきりと心臓が揺れる。
「起こしてしまったね」
「それはべつにいーけど。なに、寢らんない訳?」
「ああ、いや。君を見ていたんだ」
「なんでだよ……」
「なんでも何も。ずっと見ていられるよ」
言い終わる前に、思い切り引き寄せられる。ほとんど龍胆くんの身体に押し付けられるような格好で、ほんの少しあった隙間さえも埋まってしまう。
「起きたら好きなだけ見ればいいだろ」
頭の上から、あくび混じりの囁き声が降ってくる。
「うん、そうだね。あ、ねえ龍胆くん」
「あん?」
「眠る前に、キスをもらってもいい?」
「さっき散々したろ」
「だめかい?」
ふうと息を吐く音。抱きしめられていた腕が緩んで、龍胆くんの顔が近づく。唇が軽く触れた。
「満足したかよ」
「うん。今は、ね」
「……足りないって?」
「欲を言えば、ずっとしていたいくらいだよ。でも今は、うん、これで満足」
「そーですか」
「ふふ。そうだな、明日の朝のキスは、僕からにしよう」
龍胆くんの表情が、とびきり優しくなる。
「ふっ。そうしてくれ」
同時におやすみと呟いて、瞼を重力に任せた。
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