ぐるさん
2026-05-30 21:44:22
1498文字
Public
 

5.30【下心】

ふみりかワンドロライ(@ fmrk_1draw)さんの2026.5.30お題をお借りしました

「理解」
「ま、待って、ふみやさ」
……理解」
「え、ちょ、。あ、うわああああああッ!?」
「あー……

 理解と付き合い始めて早数ヶ月、俺達は一緒に寝るどころか、未だに手を繋げてすらいない。

 互いの指が軽く触れるだけで大声で叫んで逃げ出してしまうのだ。

 それは理解の中の秩序との葛藤であったり、単純に耐性の無さからくる羞恥心であったり、どちらにせよ理解が理解である以上は仕方がない事であるのだが、それはそうとして俺は理解に触れたい。

 大事な言葉だから二回言う。俺は、理解にめちゃめちゃ触りたい。何だったら適宜イチャイチャしたいしベッドinもしたい。

 そのための第一歩として、ある作戦を用意した。
 
◇◇
 
「わぁ……!遊園地ですか?ふみやさん!」
「うん」

 出かけるもといデートの約束を理解にとりつけ、「向こうに着くまでのお楽しみ」と言って目的地をはぐらかし、目的の遊園地へと理解を連れて来る事に成功した。

 所謂世界的テーマパークでは無く、郊外のこじんまりとした親しみやすい雰囲気のそこは理解も気に入ったようで、早速入場口でもらったガイドマップを読み込んでいる。

 そのままゆるりと並んで歩きながら園内を一周する。

 時折手や肩が近づいたり軽く触れそうになるが、あえて気づかないフリをしてさりげなく調度良い距離感に戻る。

 そうして概ね見て回った所で理解が改めて口を開いた。

「さて……一体どのアトラクションから乗りましょうか?」

 予想通りの展開に、思わずニヤケそうになるのを堪えながら答える。

「それなら、お化け屋敷がいいな」
「お化け屋敷?」

 理解は俺がそんな事を言うのは意外だと言いたげに、キョトンと紅い瞳をぱちくりさせる。

 しかしあくまで意外だったと言うだけで、特に不信感などは無く「どんな感じなんでしょう?」と期待した様子で一緒にお化け屋敷の方向へと足を進めている。

 これが今日の俺の作戦。実はこの遊園地のお化け屋敷は、規模はそこそこながらかなり怖いとネット上で有名だったりする。

 なので、そこで驚いたり、怖がったりした拍子に、理解を俺へと密着させて、少しでも慣れさせていこうという訳だ。

 中はそれなりに暗いだろうし、アトラクションとしての性質上他の客とはち合わせになる可能性も少ない。もし急に恥ずかしくなって叫び出しても、怖がる客の一人として目立ちにくい。

 我ながら良い作戦を思いついたものだ——そう思っていたのも束の間、まさかの事態が発生した。
  
「わああああッ!?」
「ああああああッ!?」
「ぎゃーーーーッ!?」
 
 想像の五倍、いや十倍は理解のリアクションがデカい。

 そしてリアクションのデカさに伴って、隣に並ぶ俺の鼓膜がヤバい。その内破けるかもしれない。

 そのくせしっかり俺の手を握っている。

 そう、理解が、俺の手を、握っているのだ。

 恋人というより理解お兄さんモードに入ってるようで、自分がふみやさんを守らなきゃ、と躍起になっている。

 全然想像と違うのに、結構前から耳もキンキンしてるのに、暗闇の中でも目立つ白い手から伝わる体温に妙にドキドキしてしまう。

 ふと湧いた欲に任せてそろりと指を絡めれば、いとも簡単に恋人繋ぎが完成した。

 このままここから出たら、理解はどんな顔をするだろうか。

「ほぁーーーーッ!?」
「それどういう気持ちの叫び声なの」

 ……とりあえずは出口を目指して、改めて歩みを進めよう。結果はそこで、すぐに分かるはずだから。