燈 ともしび
2026-05-30 21:02:44
1592文字
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ぎゆさね【熱】

キ学軸の二人です。
暑いとね、美味しくなりますよね。

 頭が茹だるような、そんな暑い日。

 今日は帰ったらビールだな。冷凍の枝豆と豆腐はある。あとは味付けして冷凍しておいた鶏肉でも焼けば丁度良いか。
 まずはビールだ。ビール。
 この前、安売りの日に箱で大量買いしておいたのを朝のうちに冷蔵庫に入れておいたのだ。どうせ冨岡も飲むだろうと多めに入れておいたけれど、この暑さなら途中で足りなくなりそうだから帰宅後に追加で冷やしても良いかもしれない。
 平日は飲まないか、もしくは一缶程度で抑えるようにしているが、冨岡も俺も明日が休みなら気にせずガンガン飲むタイプだ。今夜は多分ガッツリ飲むことになるだろう。

「ただいまァ」
 誰もいない部屋に挨拶をする。これはもう習慣だから。気にしない。
 冨岡は帰り際に悲鳴嶼さんに呼び止められていたから俺の方が先に帰れたのだ。
 カバンを置いたらまずは冷凍しておいた鶏肉を出しておく。そして空いたスペースに追加ビールを突っ込む。グラスも一緒に。
 クーラーを入れて部屋を冷やし、そこまでやったらもう我慢出来なくて風呂場に直行した。流石に汗だくだった。

 ギリギリ水ではない程度のシャワーを頭から被る。こんな時、髪が短くて良かったとしみじみ思う。ワシャワシャ洗えるのはとても気持ちが良い。
 冨岡は髪の毛が長いから洗うのも面倒そうだし乾かすのも面倒そうなんだよなァ。夏場は特に。
 一度、切らねェの? って聞いたことがあるが、
「不死川がいつも掴むから伸ばしてる」
 と返されて頭を叩いた。そんな意識が飛びかけている時のことまで責任をとれるかってんだ。
……まァ、思い出したら掴んでいたけど。俺は悪くない。シャワー中に変なこと思い出させやがって。

 メンソールの入ったシャンプーとボディーソープは、いつもなら梅雨明けから使っているが今年はあまりにも暑過ぎて解禁を早めた。サッパリするので俺は好きなのだが、冨岡は嫌がる。
「不死川の匂いが薄まるから」
 とかのたまっていたが本当にアイツは俺のことを好き過ぎると思う。時に変態じみているから恋人でなかったら逮捕案件だ。

 暑いせいか碌でもないことしか思いつかない。一人で考えることではない。
 もう上がろう。
 そう思っていたら、背後から手に持っていたシャワーを取り上げられ、フックにかけられてしまった。
 驚いたが一瞬だけだ。
 こんなことを出来るのは一人しかいないのだから。

「おかえりィ」
「ただいま」
 冨岡が背後からピッタリとくっ付き、俺のうなじに顔を伏せてくるから逆手で頭を撫でる。
 疲れてんなァ。俺もだけど。週末は嬉しいが疲れを実感もしやすい。

「もう俺は上がるからゆっくりシャワー浴びてこい」
 その間につまみの用意をしておいてやるか。そんな優しさから思っていたのに、背後から回された腕は解かれない。
「オイ」
「嫌だ」
「ア?」
「悲鳴嶼さんに腹が空いたからと断って走って帰ってきたんだ。俺は腹が空いているんだ」
……
 だからすぐに飲み食い出来るようにしてやろうとだなァ。
 そう説教しようとした。

「不死川」
「んだよ」
「先に不死川を抱きたい」
「嫌だ」
 反論したのに冨岡は腕を変わらず緩めてくれない。それどころかあらぬところを触れ出したのでぴくりと身体を跳ねさせて反応してしまった。
「は、なれろっての」
「嫌だ」
 コイツ! と思って強引に抜け出そうとした。力なら負けないから。

「不死川は、力は強いが快感には弱いから」
「ア?」
「認めろよ。俺の手で気持ち良くなるのが好きだって」
 その言葉通り、誰よりも俺の身体に触れてきた男は楽しそうに笑い、一番弱いところに触れてくる。

「不死川」
「ンッ、な、んだよ」
「気持ち良いな」
 ふ、と耳元近くでわざと言って。
 悪い男は本格的に俺を食べ始めた。