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A田
2026-05-30 08:56:13
4166文字
Public
れめしし
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61話前に会ってた👿🦁の話
ゲ…向けのマチアプに登録していたししが、れめと出会って狂わされる話(予定
※ししの家庭環境その他捏造
※におわせ程度に、しし×モブ♂描写あり(あくまでも、れめししです)
※何もかもぬるいですが、ベッドインしてるのでR15
※何でも許せる方向け
「叶黎明だ」
真っ赤な瞳が見下ろしてきた瞬間、もうダメだと悟った。
「ケイ君、だよね?」
スマホから顔を上げずに頷けば、安堵したように息を吐き出すのが聞こえてきた。
「待たせちゃったみたいでごめんね」
「いえ、オレも今来たとこなんで」
ようやく顔を上げ、目の前に立つ男を一瞥した。
前髪を掻き上げ、襟足だけ短く刈り上げた今時の髪型。モカのノーカラージャケットに白いシャツを合わせた装いは清潔感がある。ともすれば馴れ馴れしく思える口調も、穏やかな物腰もあって、嫌な感じはしない。
「今日はよろしくお願いします、タケさん」
名前を呼べば、男は分かりやすく破顔してみせた。うっすら色づいた頬に、今日は最後まで行くだろうなと、どこか他人事のように思いを巡らせた。
「この後どうします? とりあえず飯でもって話でしたけど」
「飯もいいけど、疲れたからゆっくりしたい気分かも」
「じゃあ、そうしましょう。オレ、良い場所知ってるんで」
白々しいやりとりだが、必要な手順だ。
ゲイ専門のマッチングアプリに登録するようになって数か月。初めは独特のルールに困惑することもあったが、慣れてしまえば何のことはない。
先導するようにしてホテル街を進んでいけば、やけに身長差のある二人組が歩いているのが目に留まった。一瞬見てはいけないものを見たような気にさせられたが、何のことはない、男の身長がかなりあるのだ。
――
デケーな。
入口のゲートと同じくらいある。獅子神も身長は高い方だが、あそこまで高いのは中々お目にかかれない。
「
……
っ⁉」
獅子神の視線に気付いたのか、男がこちらを振り返った。
赤い
――
。
男の真っ赤な瞳が獅子神を捉えた瞬間、心の奥底に押し込めてきた獅子神の弱さが暴かれ、男の前に全て晒されるような感覚に襲われた。
「ケイ君?」
声を掛けられてようやく、獅子神は我に返った。
男の姿は既になかったが、今も何かに見られているような感覚は消えなかった。
「どうかした?」
「あー、ちょっと道ド忘れしちゃったみたいで」
ごまかすように笑う獅子神に、男も仕方ないなと笑みを浮かべる。弛緩した空気に調子を取り戻して、先程の感覚は気のせいだと断じることにした。
そもそもホテル街にいる時点で、どれだけお高くとまろうがヤることは同じなわけで、それを物珍しいからとじろじろ見るのは明らかなマナー違反だ。相手が気分を悪くしても仕方ない。
――
悪いことしたな。
心の中で申し訳程度の謝罪をして、その場から逃げるように目的のホテルへ向かった。
獅子神は、ゲイでもなければバイでもない。
根っからのヘテロだと自認しているが、ゲイ向けのマッチングアプリに登録しているし、ヤることもヤッている。
明らかに矛盾しているが、獅子神にも言い分がある。
仕事が軌道に乗り始め、経済誌で新進気鋭の若手投資家として紹介されてから、周囲の獅子神への評価は一変した。
昔は異物として排除してきたくせに、今や、どうにか獅子神の気を引けないか躍起になっている。分かりやすい手の平返しに、もはや呆れを通り越して清々しさを感じる程だった。
連絡の取れなくなっていた母親から連絡があったのもその頃だ。
今まで聞いたことのないような猫撫で声で名前を呼ばれた瞬間、自分の中で何かが壊れるのを感じた。
ありていに言えば、女性相手に勃たなくなってしまった。
甲高い声で捧げられる空っぽな賛辞に、甘ったるい香水の匂い。水仕事なんてしたことがない白魚のような指先に光る、ごてごてしたマニキュアも、何もかもがダメだった。
女性に苦手意識を持とうが、獅子神の評価が一変するわけではない。そう思うのに、ふとした瞬間、汚い部屋でうずくまる幼い自身の姿が過ぎり、獅子神を震え上がらせた。
このままではマズいと試行錯誤した結果、ゲイ専用のマッチングアプリに辿り着いた。
女性がダメなら男性はどうか。
あまりにも飛躍した思考だが、その時の獅子神には死活問題だったのだ。
多様性が謳われる時代になったとはいえ、世間の本質は昔と何も変わっていない。人は己と違うものを嫌がるし、理解できないものを拒絶する。世間が普通でないものにどれだけ厳しいか、獅子神は身を以て知っている。
だからこそ、自分は大丈夫だという証が欲しかった。
これでもダメだったら自分はどうなるのか。
まるで断頭台に立たされたような気分でアプリに登録すれば、獅子神の懸念に反し、筋肉質で男らしい体格をした獅子神は人気があった。
日夜届くメッセージに、自分を肯定されている気がして、気付けばのめりこんでいった。
「ケイ君はタチなんだっけ?」
「あー、まぁ」
男性同士でヤるとなれば、ポジションは切実な問題だ。
ハグやキスだけに留めるカップルもいるらしいが、真剣にパートナーを探している人間こそ体の相性を重視している。
言葉よりもよほど、体の方が雄弁に物語る。
その感覚は、獅子神も何となく理解できた。だからこそ、この手の質問をされる度、獅子神はひどくいたたまれない気持ちにさせられた。
何度かお世話になっているが
――
いや、だからこそ、未だに尻の穴に性器を挿れることに感嘆の念を隠せないでいる。
男性同士に限らず、男女間においてもそちらを使うことがあるのは知識としては知っているが、とてもではないが自分には出来そうにないなと思う。
ネコが出来ないならタチしかないよなぁ程度の
――
正確には他のポジションもあるらしいが、今の所タチで問題ないし、不便も感じていなかったので、これ以上嗜好の理解を深める気はなかった
――
あくまでも消極的な選択だった。
そんなことを馬鹿正直に言ってみようものなら、相手が気分を害するのは分かっているし、さすがの獅子神も弁えている。
こうして嘘で塗り固めた返答をする度、結局自分は、どこにも居場所がない、外れた存在なのだと思い知らされるようだった。
今日も今日とて自身の欠陥から目を逸らすようにして、慎重に作業を進めていく。
献身的ともいえる獅子神の行為は好評で、目の前の男もうっとりとした様子で獅子神を見上げた。
熱を帯びた男の体には女性のような胸の膨らみもないし、付いているものと付いていないものがある。けれど、女性を抱くことと、この行為のどこに違いがあるのか。
――
ダメだ、考えるな。
しかし、一度湧いた疑念は消えることなく、獅子神を蝕んでいった。
喉奥に違和感を覚え、失礼なのは百も承知で、獅子神は逃げるようにしてトイレへ駆け込んだ。吐きこそしなかったが、完全にそういう気分ではなくなってしまった。
どうしたものかと思いながら男の元へ戻ると、獅子神の予想に反して、男は純粋に心配そうな顔をして獅子神を出迎えた。
「ひどい顔色だよ。何か飲む?」
どこまでも大人な対応に、獅子神は胸を抑えて首を振った。
「すみません、オレ
……
」
それらしい言い訳も思いつかず言葉に詰まる獅子神に、男は得心した様子で頷くと、
「そういう時もあるよね。忙しくしてると勃たなくなったりするし」
強がりなのかは分からないが、男は手つかずだったウェルカムドリンクに手をつけた。紳士然としているが、豪快に生ビールを飲む様は頼もしさを感じさせた。
結局、その後は飲み物や食事を頼んで、会話を楽しむことになった。男が気を使って口でしようかと提案してくれたが、獅子神は丁重に断った。
多少の気まずさもアルコールの前に霧散していき、空腹が満たされた頃には二人してベッドに横になった。
あんな失態をしでかしたというのに、後日、男から再び会わないかと連絡をもらった。疲れているようなら食事だけでもいいという申し出に、罪悪感に苛まれるようだった。
「潮時かもな」
元から無理があったのだ。
ノンケにも関わらずゲイコミュニティに混ざろうとするなんて非常識だし、今回は相手に恥までかかせてしまった。
自分が大丈夫だという証明は出来たわけだし、アプリに登録している意味はもうないはずだ。むしろ、本気ではないのに登録し続けている方が不誠実だろう。
早速、退会手続きに進もうとしたところで通知が鳴った。
もはや目を通す必要はないのだが、最後だし、内容くらいは確認しておくかと気が向いてしまった。
「レイメイ、ね。何だ、コイツ
……
」
アイコンは初期設定のもので、名前以外のプロフィールは全て空欄だった。
獅子神が使っているマッチングアプリは、それなりの年会費を払って登録するものだ。無料のものに比べて真剣度が高く、本気でパートナーを見つけたいと思っている人間が多く、必然アイコンやプロフィール欄はここぞとばかりに熱が籠もっている。
なのにこのレイメイとやらは、相手を見つけるつもりがないのか、まるで頓着した様子がない。
『今度会えないか?』
送られてきたメッセージはそれだけだった。
性的嗜好が違うだけで一般的なマッチングアプリ同様、初めは世間話を交えて距離を縮めていき、会う約束を取りつけるのが通例だ。
だがコイツは、そんなものは一切ない。
はじめましてのはの字もないどころか、初対面でタメ口。最低限のマナーすらなっていない。
幸いにも獅子神は遭遇したことはないが、この手のアプリではその日の相手を探すために使う人間もいるらしい。このレイメイとやらもそういうタイプなのかもしれない。
適当に何人かに声を掛けて、バカな奴が引っかかればラッキー、そんな感じなのだろう。
普段なら即座にブロックしているところだが、このプロフ欄とメッセージで釣れると思っている人間の顔が見てみたいと思ってしまった。
――
ヤバそうだったら、逃げればいいしな。
既に解約するつもりだったし、万が一にも暴力沙汰に発展しても、それなりに鍛えているからどうとでも出来る。最後に多少羽目を外したところで罰は当たらないだろう、そんな軽い気持ちだった。
それがまさかあんなことになるとは、あの時の獅子神は思いもしなかった
――
。
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