望月 鏡翠
2026-05-29 13:26:32
952文字
Public 日課
 

#2100 萬木4

#毎日最低800文字のSSを書く/とわの道行ついの国まで


 萬木が取り出した荷物は細長く、水が入らないように厳重に油紙と帆布に包まれていた。取り出したのは黒光する金属の筒だ。
 それは武器である。鉄砲、あるいは長銃と呼ばれている物だ。
 火薬で金属の弾を打ち出す兵器だ。ある旅先で手に入れて以来、弓矢と併用して愛用している。弓矢は、道具さえあれば萬木にも作ることができる。矢も狩の獲物から、矢を増やすこともできる。だが、鉄砲に用いる矢――弾というらしいが――は自分では作れないのだ。
 理屈はわかっている。矢と同じだ。勢いをつけて、金属を飛ばす。勢いをつける方法と真っ直ぐ飛ばす方法が異なっているだけだ。
 ただその金属を削る方法と、火薬の造作が萬木の技術で難しい。旅暮らしの中では加工の道具が手に入らないのだ。そのため、灯の酒場に来て金属の加工の手段を持った連中と出会ったときしか補充できない。
 非常に強力だが、使い所が限られている武器だ。
 とある世界で発見し、他の世界でも見かけたことがあったから、人間のてにする武器の中でメジャーな物ではあるのだろう。
 萬木の前に座った旅人も、えらく古いなと首を傾げたが、確認していいかと手を伸ばした。古いというのも悪いことではない。作りが単純で、修理が楽だ。
 今まで旅の中で、鉄砲も新しいものも見た。実際に手に取って扱った。しかし、ある程度単純な形のものでないと、途中で壊れてしまうのだ。
 事情を説明すると、旅人は納得したように頷いた。
「弾は持っていない。ただこいつが長持ちするようにしてやることはできる。俺は少しだけ、呪いが使えるから水避けにな。この道具は水が苦手だろう」
 確かにそうだ。金属だから油などを用いて、錆から庇ってやらないといけない。
 呪いの効果が本当であれ嘘であれ、頼んでみる価値はある。
 手持ちの弾と銃に、水避けを施してもらった。
 銃を知っているということは、同じくらいの知識と文明レベルを持っているということだ。今まで渡った世界で注意すべき場所の情報を交換する。
 彼は、旅人になって日が浅いらしい。元の世界に戻るには、どうしたらいいかと聞かれた。
 萬木はそれを成し遂げたやつはみたことがないと答えた。それ以外の答えを返してわざわざ絶望させることもないだろうと思ったのだ。