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2026-05-28 12:27:03
2709文字
Public 高諸
 

2)可愛い末っ子にはお兄ちゃんがたくさんいる

# いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く

傷心の尊ちゃんを匿う兄さん方と、ヤキモキしてる高を書きたかった

「高坂さんの事を、お慕いしています」

いつもの休日。
特に予定がなかった私は、昼を食べたら山に篭って一日鍛錬でもしようかと思っていた。それがどういうわけか同じく非番だった尊奈門に「休日って休み日ですよ」と言われ、鍛錬は却下された挙句、山を越えた先にある団子屋まで連れて行かされた。

団子屋までの道のりは運動ではないのかと文句を垂れれば、情緒がないと窘められた。
そうこう言ってる間に着いた目当ての店で、団子を食べて、気に入ったものをいくつか土産用で包んでもらった帰り道のことだった。

沈む陽の光で空が赤くなり、綺麗で静かな夕暮れ時。
耳を掠めたのは、普段ではありえないくらい静かな尊奈門の声。聞きなれた声の、聞きなれない話し方。驚いた私は足を止めて慌てて声のした方を振り返った。

後ろを付いて歩いていたはずの尊奈門も、いつの間にか足を止めていた。手を伸ばしても届かない距離。包んでもらった団子を両手で抱えたあいつは、夕日に染まった空と同じか、それ以上に真っ赤に染まった顔で私を見つめていた。

普段うるさく騒いでいる口はきゅっと閉じていて、私の返事を待っているかのようにそれ以上の言葉を紡ぐ気配はない。あいつが緊張しているふうに私を見つめるから、何だか私も変に緊張してしまって手に汗が滲んできた。

尊奈門は私を慕っていると言った。あいつの表情、雰囲気でそれが親愛でなく色事の慕うであることは明白である。それを理解した瞬間、頭の中で警鐘が鳴った。
私はあいつの兄貴分として、先輩として正しく導いてやると心に決めていた。それがあいつのためであって、雑渡様の看病を全うしたあいつへの恩返しになると信じていたから。
それなのに、私の存在があいつの心を惑わすなんてあってはならない。

「私は、お前をそういう目では見られない。考えたこともない」

緊張で乾いた喉を震わせながら、はっきりと言い放った。
これでいい。希望も何も持たせなければ、あいつはきちんとその思いを捨てられるはずだ。

「そうですよね!ありがとうございます」

沈黙が痛いと感じるより先に、尊奈門は口を開いた。
いつもの口調、いつもの同じ笑顔に戻った尊奈門は、そういうと離れた距離を一気に詰めてきた。

「おい!お前、何を」
「お団子は組頭と山本小頭の分なのでしっかり持ってください。走ったらぐちゃぐちゃになるかもしれないから、ゆっくり歩いて持ってきてくださいね」
「あぁ……っておい!尊奈門!!!」

私の手に荷物を押し付けると、あいつはさっさと走って行ってしまった。名前を呼んでも振り向きやしない。小さくなっていく背中を今すぐ追いかけたいが、走って見栄えが悪くなった団子を上司たちに渡すわけにもいかない。
帰ったら絶対尊奈門を絞める。そう、私は心に決めて、できる限り早歩きで忍軍長屋を目指した。

「ったく、あいつどこにいるんだ」

帰宅して上司たちに団子を渡すと、すでに帰ってきているはずの尊奈門を探して長屋中を歩き回った。組頭と山本小頭は、元気なただいまが聞こえたといった。押都小頭は、食堂で元気にご飯を食べるあいつを見かけたと言っていた。狼隊の同僚はあいつはもう風呂に入ったと言っていた。

いわれた先々に足を運ぶものの、尊奈門の姿を一向に見つけることはできない。
先に走って帰ったことを怒られると思って逃げ回っているようだ。
だがしょせん、あいつは同室。消灯時間になったらこの部屋に帰ってくるしかないのだから、私は全ての用事を済ませてどっしりと待ち構えることにした。

「お邪魔しまーす!」
「帰れ」

勢いよく部屋に入り込んだ人物が尊奈門だと思った私は、見当違いだった声の主に思いっきり枕を投げつけた。
ひょいっと交わした五条は、そのまま部屋に入って戸を閉める。せめて枕は拾ってくれ。

「こんな時間になんのようだ」
「ん~。今日は尊奈門と部屋を交換する約束をしたんだ」

は?
意味の分からないことを言いながら、五条はそのまま押入れを開け滅多に出さない、もう一組の布団を出して壁際に敷き始めた。

「どういうことだ。尊奈門はどこにいる」
「そのままの意味だよ。あいつは今、俺たちの部屋にいる」

ずっと見当たらなかった尊奈門は黒鷲の同期の部屋に匿われている。それだけ分かればこいつには用はない。尊奈門を連れ戻しに行くために腰を上げた私の腕を掴み、五条が私を引き留めた。

「行ってどうするの」
「あいつは私と同室だ。連れ戻す」
「部屋を交換する許可は押都小頭にも山本小頭にも取ってるから、お前がどうこう言う権利はないよ」

つらつらと連れ戻す理由を塞ぐように重なる言葉に、胃がズンと重くなる。尊奈門が徹底して私を避けている。その事実を実感すると、全身から血の気が引く気がして思わずその場に座り込んでしまっていた。

「なんであいつが私を避ける」
「お前、まじでそれ言ってる?」

思った以上に情けない声を出した私に、五条が呆れたといった顔でこちらを見た。わざとらしく息を吐く五条が纏う空気はぴりりと痛いものだった。これは彼が何かを腹に据えかねている証拠。

「普通ね、振られた相手と同室で寝るなんて耐えられないわけ。お前、ただでさえ尊奈門に対して距離感おかしいのに」
……
「時間をあげなよ、尊奈門に。すぐに気持ちを切り替えられるほど、大人じゃないんだあいつも」

納得はできないものの、言っていることは十二分に理解できた。それから、昼間の尊奈門の言葉が、どれだけ真剣だったのかも。あいつの緊張した顔を思い出すと、今日に関しては引く以外に選択肢は無いようだ。

五条がやたらと尊奈門の気持ちを理解しているのに、何とも言えない苛立ちを覚えるも、今の私ではそれを指摘する気力もわかない。ガックリ全身の力を抜いてと息を吐きながら、分かったと五条に返事をすれば、ようやく刺々しかった空気が和らいだ。。
こういう時、こいつは大人だと思う。ここに来たのが椎良や反屋だったなら、今頃私は尊奈門を連れ戻しにこいつらの部屋にいただろうから。

「それと、俺たちから一言いい?」
「まだ何かあるのか?」

項垂れながら視線だけ五条の方に向ける。
あいつは先ほどまでの苦笑いを切り替え、腹の底が読めない作り笑いを浮かべていた。嫌な予感しかしない。

「ちゃんと尊奈門の気持ちに向き合わなかったこと、後悔させるから」


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次の日は反屋くん、更にその次の日は椎良君が尊ちゃんと部屋を交換して高さんの部屋に寝に来ます。