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みずあめ
2026-05-27 19:16:16
2251文字
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brmy
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明揺
棚に飾られた数種類の猫のクッション。それを真剣な眼差しで見比べるゆらの横顔を見て、俺は頬を緩めた。
恋くんの誕生日プレゼント選び、という建前で誘ったお買い物デートは、ゆらの足の向くままあちこちのお店を覗いてあっという間に時間が過ぎていた。いつもなら「疲れた」「おやつにしよ」と言ってすぐに休みたがるゆらが、納得いくまでひたすらにプレゼントを探し続けていて、ほんのちょっとのヤキモチとそれ以上の愛しさを感じながら俺はゆらの隣を歩き続ける。
「ねえ、明星、これは?」
「ん? お、かわええやん」
「うん。でも、恋には可愛いすぎるかも
……
」
「恋くんも大概可愛い人やと思うけど」
「
……
そうかも。じゃあこれも候補ね」
「はいはい。候補、増えてきたなあ」
「明星が何見せてもいいねって言うから」
「ゆらが選ぶの上手やからやない?」
「
……
このままじゃ決まらないかも」
「大丈夫大丈夫。こんだけ候補あるんやから、一旦休憩して、気分変えてからもう一回候補にしたやつの中から選抜してみよ」
「
……
ん、そうする。甘いの食べたい」
「ほないっこ下の階にカフェあったからそこ行く? なんやパフェみたいなんあるっぽかったで」
俺の言葉にゆらの目がきらきらと輝いた。決まりやね、と言ってエスカレーターの方向へ歩き出すと、すぐにゆらが隣に並ぶ。俺は少し下にあるゆらの頭をこっそり見下ろし、心の中で自分を笑った。
俺を甘やかしたがるお姉さんや、わがままを言う可愛い子、いろんな女の子とデートをしてそのどれも本当に楽しんでいたつもりだったけれど、ゆらだけ、誰とも違ってる。
ショーウィンドウに反射して映る二人並んだ姿をつい目で追ってしまって、ただ隣を歩くだけで心臓が早くなる。目が合ったら嬉しくて、笑ってくれたらもっと嬉しい。初めての恋みたいに、些細なことにいちいち浮かれていた。
「いちご
……
、あ、期間限定のチョコのもおいしそう
……
どうしよう」
「半分こする? 俺もちょっとだけ甘いの食べたい」
「半分こする」
「ふふ、ええよ」
「
……
明星、楽しい?」
「えっ? 楽しいよ。なんで?」
「楽しいならいいけど」
「
……
楽しくなさそうに見えた?」
「ううん。楽しそう。朝からずっとご機嫌って感じ」
「あは、バレとる。でも、じゃあなんで?」
カフェに入って席につき、メニューを決めたゆらが顔を上げる。店員さんを呼び止めて注文を済ませてから、俺はとんとんと机をノックしてゆらの視線を呼んだ。
「本当に楽しいよ。朝からずーっと、ゆらと一緒におるから」
「
……
明星のやりたいことは?」
「うん?」
「今日、ずっと俺の用事に付き合ってもらってるから」
「恋くんのプレゼント選びに来たんやから、それで良くない?」
「
……
今日、デートじゃないの?」
「え。
……
で、でーと、です」
「うん。だから、俺だけじゃなくて明星のやりたいこともやりたい。って思った。俺がプレゼント決めるの遅いから悪いんだけど」
「
……
悪くないよ、全然、これっぽっちも」
なんだ、今日、ちゃんとデートだって思って良かったんだ。じわりと胸に広がる温かさが次第に頬まで熱くして、俺は慌てて水を飲んで体温を下げた。
ゆらはあまり分かりやすく表情が変わるタイプじゃないけれど慣れれば何を思っているかは雰囲気で案外簡単にわかって、今も、いつもよりうんと機嫌がいいってわかる。それって、俺とのデートだから? からかいたくなる気持ちをグッと堪え、俺はゆらに優しい笑みを向けた。
「俺のやりたいこと、もうできてるんよ」
「? なんかしたっけ?」
「ゆらと一緒にいたい」
「
……
、それだけ?」
「そう、俺が一番やりたいこと。だから今日はもう最初っから俺のやりたいこと叶ってるよ」
「
……
」
「あ、甘いの食べて幸せ〜って顔してるゆら見るのも追加で。パフェ来たで」
パフェを二つ持って近付いてくる店員さんに気がつきそう言うと、ゆらはパッと顔を上げ、提供されたパフェを目の前にして目を見開いた。俺はその顔に声を溢さないように笑ったけれど、正面に座っていて気が付かないはずもなく、ゆらはムッとして俺を睨んだ。文句を言われる前にパフェに視線を向けて意識を逸らす。
「先どっち食べたい?」
「
……
いちご」
「ほな俺はチョコ先にもらうな」
「
……
こっち見ないで」
「ええ? 向かい合わせで座ってるんやから仕方なくない?」
「じゃあにやにやしないで」
「パフェが美味しくてつい」
「うそつき」
「ふふ、うそやないって。これおいしいよ。あーんってする?」
「しない」
「俺のやりたいこと付き合ってくれるんやなかった?」
「俺といたらいいんでしょ」
「ふふ、うん、ええよ」
「
……
」
「うん? やっぱりチョコ食べたい?」
にやける顔を誤魔化しもせずそう言えば、ゆらはわざとらしくはあっとため息を吐いて見せた。それから俺の質問は無視して、いちごのパフェを食べ始める。一口、食べた瞬間に表情がパッと明るくなって、俺はくすくすと笑い声を溢した。ゆらは俺のことを睨んで、でもパフェを食べるとすぐに表情が緩む。
好きな子が、好きなものを食べて幸せそうにしている。それをすぐそばで見ていられる幸せに笑わずにいられるわけがなかった。
「
……
明星、目瞑って食べて」
「ふ。無理やって」
言われた通りに目を瞑ってあげたっていい。見なくたってゆらは可愛いし、俺は楽しい。だけどせっかくのデートだから、今のゆらを俺に独り占めさせて。
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