匣舟
2026-05-26 22:32:22
1942文字
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リクエストデー

SSかどうか怪しい同棲&結婚してる金乱♀︎ちゃん
許嫁金乱でもいいなと思いながら書きました。
リクエストありがとうございました🎶

「今日の夜ご飯、なにがいい?」
 会社に出社する前の玄関前でまだ眠たいのか目を擦りながら自分を見つめる蘭の言葉に、ああ、今日はそういえばその日だったな。と金吾は思い出した。
 その日というのは、毎月の真ん中の日を金吾が食べたい料理を蘭が作るというリクエストデーに設定しているからである。リクエストデーじゃない日だって献立について相談されることはあるけれど、リクエストデーは金吾が食べたいものを作ってもらう日なので、その日の仕事は絶対に定時で上がるという目標を金吾は持っている。
うーん、ハンバーグか肉じゃがで迷ってるんだよね。」
全然系統が違うねえ?」
「うんでもどっちも蘭が作るのは美味しいから。」
へへ、ありがと。」
 玄関先でふたり並びながらそんな会話を交わしていると、金吾のネクタイが曲がっているのを発見したので手を伸ばしてそれを直してあげる蘭。そんな蘭を見ながら金吾は彼女の髪についている寝癖を愛おしそうに撫でながら直している。
 結婚してしばらく経つが、新婚当初と変わらない甘々ムードが漂うふたり。そうやっている間に刻々と出社時間が迫ってくるのでそろそろ行かないとまずいのは金吾も蘭も分かっているものの、ついついお互いにくっついてしまって離れられなくなってしまうのだ。
もう行かないとだよね?」
そうだね。あのね、どっちも同じぐらい食べたい気持ちがあるから、最終判断は蘭に任せるよ。決まったらメッセージ欲しいな。」
「うん、分かった。じゃあ、金吾。行ってらっしゃい。」
……行ってきます。」
 そう言いながら、毎朝のルーティンである金吾は蘭の身体をぎゅっと抱きしめてその唇にキスをしてから漸く玄関から外に出て行くのであった。今日は絶対に定時で帰ってやる。と心の中に誓って。
皆本先輩。ちょっといいですか。」
「うん、どうした?」
 定時の一時間ほど前、自分のデスクで今日のタスクをやり終えて明日のタスク準備をしている金吾のもとには、同じ部署の後輩が訪ねてきていた。
 どうやら彼は明日行く案件の最終確認をしたいようだった。いつも明日、彼が行く会社の案件には教育係として金吾も一緒に付き添っていたのだが、そろそろひとり立ちしても大丈夫だろう。ということで明日が初めてひとりで営業に行く予定となっていたのだ。
資料も大丈夫だし、あとはやるだけだね。」
「は、はい。」
「大丈夫?行ける?行けなかったらまた明日言ってね。」
い、いえ、大丈夫です!ここ数ヶ月ずっと皆本先輩と一緒に案件周りさせていただいてましたから!」
……分かった。もし何か困ったら連絡してね。できる限りサポートするから。」
ありがとうございます!」
 その言葉のあと、笑顔を見せた後輩は再度金吾のデスクの上にある書類のあれこれを指差しながら確認を取っている。その様子を見つつ、これなら大丈夫かもな。と思った金吾は心の中でほっと息を吐いた。
 そうして後輩と話をしていると、ポケットに入れているプライベート用のスマホから通知音が鳴った。どうやらメッセージが送られてきたらしい。画面を開いてみるとそこには蘭からのメッセージが入っていて、そこに書かれている内容を見た瞬間、少し笑いそうになってしまった。
 メッセージの内容は、どうやら最終的に迷ったけれど、スーパーに行ったらじゃがいもが安かったから肉じゃがに決めた。とのことだった。いかにも蘭らしい決め方だな。と金吾は思った。
皆本先輩、なんかいいことでもありました?」
……なんで?顔に出てた?」
「ふ、はい。なんか嬉しそうに笑ってましたから。」
 目の前の後輩の指摘でそこで初めて自分の頬が緩んでいたことに気づき、少し顔が赤くなってしまった金吾に、目の前の彼は首をこてんと傾けた。
「あはは、そっかあ。今日は肉じゃがだってメッセージが来てただけだよ。」
「肉じゃが?……もしかして奥さんの手作りとかですか?」
「そうそう。今日は月に一度のリクエストデーだから早く帰りたくて。」
リクエストデーってなんですか?」
「ふふ、秘密。」
 なんだか煮え切らない金吾の返答にえー、なんなんですか、それ。めっちゃ気になるんですけど。とジト目を向けてくる後輩のことを見ながら、明日、きみがちゃあんとひとりで案件を取ってこられたら教えてあげてもいいけど。なんて言葉を添えると彼は一瞬ポカンとした顔になったが、すぐにやる気が満ち溢れた顔になってはい、頑張ります!と言葉を続けた。その後輩のやる気の満ち溢れた姿を見て、これは明日大丈夫だな。と心の中で思いながらき金吾も釣られて笑顔で頷くのであった。