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みずあめ
2026-05-26 22:31:20
3211文字
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brmy
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ゆづあい
逢さんの家で二人で遊んでるゆづあい。ヘッズアップポーカーは雰囲気で書いてます(むずかしい)
「クイーンのワンペア」
「ツーペア。また俺の勝ちだな」
「ですね。なかなか勝てないなぁ」
「
……
勝つ気はあるんだな」
「えっ? それはもちろん。
……
もしかして俺、何か初歩的なミスでもしてましたか?」
「いいや、そんなことはないが
……
勝ちにいこうというやる気を感じない。ゲーム自体をやりたいと言い出したのはお前だしやりたくないわけではないんだろうが」
テーブルの上に広がったカードを集め直して、逢さんは慣れた仕草でそれを切った。俺は逢さんの言葉への返答を考えながら、もう中身が少なくなったグラスに口をつける。氷が溶けて薄まった焼酎の味を追うように唇を舐めた。
「たしかに、あんまり勝とうとは思ってなかったかもしれません」
配られた手札はこれまでと同様、そこまで強いカードではない。視線を上げると逢さんが言葉の続きを促すように俺のことを見つめていた。
ふ、と息をこぼし、俺は逢さんを見つめ返して「コール」と伝えた。逢さんは自分の手元に一瞬目を落として、小さく「チェック」と呟く。三枚のカードが場に並び、俺はうーんと少し悩んで見せた後、笑みを作った。
「レイズで」
「
……
勝とうと思ってなかったんじゃないのか」
「はい。俺はただ逢さんと一緒に遊びたかっただけだったので、勝ち負けは本当に、どっちでも良くて。でも多少張り合いがないと逢さんが退屈ですよね。自分のことばっかりで気がつかなくてすみません」
「
……
、そういうことなら、俺も同じだ」
「同じ?」
「コール。次は? どうする?」
にやりと口角を上げる逢さんに心臓が跳ねる。俺の前で見せるリラックスした表情はもちろん好きだけど、逢さんのこういう強気で負けず嫌いなところだって、大好きだ。
「レイズ」
自然と浮かんだ笑みのままそう言うと、逢さんははっと息を吐き、持っていたカードを伏せて「フォールド」と言った。
「いいんですか?」
「勝てる手じゃない。お前の勝ちだ」
「ふふ。それじゃあ次のゲームですね」
「やる気が出てきたか?」
「せっかく逢さんと二人で遊べる時間なので、本気で楽しんでみようかなと思いまして」
「いい心がけだ。どうせなら何か賭けるか?」
「何かって?」
「金以外ならなんでもいい。なにか欲しいものは? 食べたいものでも」
夕食を終えたばかりでも、そう言われると何か甘いものとか食べたいかもと思い浮かぶ。逢さんはそんな俺を見てふっと笑い「今日はデザートがなかったな」と言った。
「
……
じゃあ、デザートがいいな」
「買った方の奢りで?」
「それもいいですけど、せっかくなら賭けの対象に相応しいものにしませんか?」
「?」
「俺が買ったら逢さんからのキスが欲しいです」
「
……
、それなら、俺が勝ったらお前から?」
「もちろん」
「乗った」
楽しそうに笑う逢さんに俺も笑みを返し、シャッフルしたカードを配り直す。最初のチップを置くと、逢さんが少し間を置いて「コール」と言った。
「チェックで。三枚引きますね。チェック」
「チェック」
「ああ、じゃあレイズで」
「
……
コール」
吊り上げたチップがテーブルの上で山になる。場のカードと俺の手札で出来ている役は弱いワンペアだった。逢さんのことをじっと見つめ、最後の一枚を場に出す。逢さんがピクッと眉を震わせた。
「オールイン」
「は?」
「逢さんは?」
「
……
コール」
キッと睨まれて溢れた笑みを手で隠し、そのままカードをオープンする。俺はスリーカード、逢さんはツーペアだ。
「あ、勝った」
「
……
勝てない可能性もあると思いながら、オールインを?」
「そういうゲームでしょう? でも勝ちました」
「もう一回だ」
「ええ、まだ夜は長いですから」
俺がチップを手元に集めているうちに逢さんがカードをシャッフルする。すっかり空になっているお互いのグラスに気がつき、俺は次の一杯を入れるために立ち上がった。
「まだ飲みますよね? 何にしますか?」
「由鶴の飲みたいものでいい」
「ワインは?」
「赤だな。好きなのを選べ」
「そんなこと言うと高いやつ開けちゃいますよ」
「お好きに」
笑いながらそう言って、逢さんもキッチンへやってきた。冷蔵庫を開けてチーズを取り出し、棚からナッツも出す。
「やった、そのチーズ好きです」
「知ってる」
ワインセラーから適当に一本選んで出すと、ラベルを見た逢さんが満足げに目を細めた。そもそも逢さんの好きなものしか入っていないはずだからどれを選んでも間違いはないんだろうけれど、それでも俺が選んだものを認めてもらえたようで嬉しくなる。俺と逢さんは味の好みがわりと違うけれど、お互いがどんなものを好きかはよく知っているから、いつもテーブルの上には好きなものばかりが並ぶ。
「酔って訳が分からなくなる前にやめないとな」
「ゲームとお酒、どちらを?」
「両方だ」
ふっと笑んだ唇に視線が釘付けになっていると、逢さんが楽しそうに首を傾げた。慌てて目を逸らし、ワインをグラスに注ぐ。おつまみを盛ったお皿とワイングラスを一つ持って逢さんが先に戻り、俺もすぐにその後を追った。
テーブルに向かい合わせに座ってから、あっ、と気がつき立ち上がる。逢さんの視線が俺を追って上を向いた。
「忘れてた」
「?」
「さっきのゲーム、俺の勝ち、ですよね?」
「ああ。
……
あ」
「賭けのご褒美をもらわないと」
逢さんの前で床に膝をつき、椅子に座る逢さんの太ももに手を置いた。じっと見上げた逢さんの顔にじわりと照れが滲む。キスなんてもう数え切れないほどしているのに、まだこんな顔をしてくれる恋人が可愛くて堪らない。「逢さん」とわざと甘えた声で名前を呼べば、逢さんは目元を赤く染めた。
「目を瞑れ」
「ふふ、はい」
ぱちっと素直に瞼を閉じ、逢さんを見上げたままキスを待つ。気配が近付いてきてふにっと重なった唇はほんの一瞬で離れていってしまった。すぐに目を開け、逢さんと視線をぶつける。
「これだけ?」
「
……
どんなキスかは決まっていなかったと思うが」
「それじゃあ次の勝負はもっとちゃんと」
「俺が勝つ」
「俺が勝ちますよ」
今回はたまたまカードの引きが良かっただけだ。今までのゲームでは俺が負け続けている。でも、勝たないと。こんなキスじゃ足りない。
気合いを入れ直すように立ち上がり自分の席に戻ろうとした俺の服を、逢さんがぎゅっと掴んだ。振り向いて、目を合わせる。
「逢さん?」
「
……
提案がある」
「はい?」
「賭けの対象を変えないか」
「え?」
今決めたばかりなのに? 逢さんはきょとんとする俺を見上げて手を伸ばし、指の腹で唇を優しく撫でた。
「勝ち負け関係なく、キスしたい」
「
……
それは、同感です」
背中を丸めてキスをするとすぐに舌が唇を割り開いてくる。すでに何杯か飲んでいるから逢さんの体温はいつもより高く、触れたところから溶けていきそうなほど気持ち良かった。賭けのご褒美よりも熱いキスにあっという間に息が上がる。
名残惜しさを感じながら唇を離し、呼吸を整えた。逢さんは俺の首に回した手を離さず、とろけた瞳で俺を見つめたままだった。
「
……
逢さんの欲しいものは?」
「ん
……
?」
「次、ゲームに勝ったら、何が欲しいですか?」
教えて、と囁き、ちゅっとキスを落とす。俺の質問の意図を理解したのか、ぴくっと腕が震え、逢さんは視線を逸らした。口角が上がるのを抑えられない。
「うん?」
「
……
ゆづる、が、ほしい」
「ふふ。わかりました、じゃあ、俺が勝ったら逢さんをもらえる?」
「
……
勝っても負けても同じことだろ」
「気分が違いますよ、たぶん?」
笑いながらもう一度キスをして、逢さんの腕をそっと解いた。ワイングラスの中身はまだ少しも減っていない。たった一ゲームじゃ飲み切ることはできないだろう。それでも、きっと俺たちは。
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