クドリャフカ
2026-05-26 22:29:10
7983文字
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寺川がトガシくんのマネージャーになる話②


 さて、今シーズンへの復帰はもちろんのこと、9月にある世界陸上は当然ながら欠場した。出場権はあった。先の大会で9秒台を叩き出したトガシは国際大会への参加条件を満たしている。なのに出られないというのは、どうにもやるせない話である。とはいえ、療養中の身である以上、こればかりはもう仕方のないことだった。とにかく今は治療とリハビリがなにより最優先である。

……だというのに、
なぜか寺川は世界陸上絡みの仕事を次から次へと取ってきた。大会PRイベントに始まり、関連番組や特番へのコメント出演、都の広報誌の表紙、挙げ句の果てには国民的アニメのゲスト声優に至るまで。今年は34年ぶりの東京開催ということもあってか、行政やメディアの盛り上がりも相当なものらしい。自分が出場しない大会にここまで関わるのもなんだか不思議な気分だったが、直前に日本記録を更新してしまった以上、トガシも無関係ではいられないのだろう。

「まぁこれも陸上界への恩返しだよねェ〜」

などと寺川に上手いこと丸め込まれ、リハビリと並行しつつ与えられる仕事を漫然とこなす日々である。

なお、これまで絶対王者として君臨し続けていた財津は、メディア露出をほとんどしない選手だったという。その点、トガシはわりと何でも引き受け(寺川のせいである)、しかも愛想があって見目も良く器用にそつなくこなすタイプであったため、業界人からの受けがすこぶる良かったというのは、ここだけの話だ。

「──で? 次は何を勝手に決めてきたんですか、寺川さん」
「勝手にってのは心外だなー。どれもこれもトガシくんのためなんだからさー」
「なんかすげー不安になる言い方、やめてください」
「バラエティ特番のゲスト出演決まったよ。アンケートもこっちで適当に書いといたからよろしく」
「聞いてないんですが」
「今言ったからね」
「断ります」
「もう受けました」
「断ります」
「告知も出てるよ」
「断りづらい……
「ハハハッ」

寺川はソファにふんぞり返り、勝ち誇ったようにタブレットをひらひらと振ってみせた。一方のトガシは露骨に嫌な顔を浮かべつつ、広々としたフローリングにヨガマットを敷いてストレッチをしていた。

 ちなみに、ここは寺川の自宅タワマンの一室である。高層階の窓からは、東京の夜景がキラキラ輝いて見える。いかにも成功してますと言わんばかりの最悪の趣で、とても寺川らしい部屋である。そんな立派なおうちで、現在トガシは寺川と一緒に暮らしていた。とどのつまり、居候である。

“子ども部屋おじさん”などという不名誉な称号を回避するため、半ば強引に転がり込んだのだ。“日本最速”の称号を手に入れたとはいえ、現在のトガシが実質無職であることに変わりはない。賃貸の審査に通るかどうかも怪しく、そもそも新しい物件を探すにしても、引っ越しをするにしても、今の脚ではどうにも億劫だったのだ。

 ──そこで、寺川である。

トガシは、本人の了承もろくに取らないまま、キャリーケースひとつで寺川の部屋に転がり込んだのだ。ガンギマリのトガシは、だいたいロクでもない決断をするのである。


 〜回想〜

「──君って、ほんっとうにどうしようもないクソバカだよねトガシくん」
「人のこと“子ども部屋おじさん”って呼んだの寺川さんじゃないですか」
「は? ダル。シャレじゃん普通に。わかれよそれくらい」
「笑えないんですよ」
「てか、住むんなら別にウチじゃなくてもよくない? トガシくん、仲良い先輩いるでしょ?」
……仁神さんのことですか?」
「そうそう、その仁神サン」
「ダメに決まってるだろ。仁神さんに迷惑が掛かるし」
「あーね」

つまり寺川なら迷惑掛けても問題ないということである。

このクソガキ……と、寺川は内心で思った。バチギレだった。今更ではあるが、寺川もトガシのことが普通に嫌いなのである。とはいえ、このままクソバカのトガシを手元に置いていた方が、寺川にとっても何かと都合が良いのも確かである。しかも不幸なことに、以前の同居人が使っていた部屋がひとつ、ちょうど空いているわけで……

「ん〜〜……、まぁ別にいいけどね〜」
「よかった。じゃ、今日の夕方ベッドが届く予定なんで、組み立てお願いしますね」
…………マジで図々しいね、君」
「あと、室内は全面禁煙でお願いします」
「はぁ!? それは違くない!?」
「なにがです?」
「ここ俺んちなのに、全面禁煙はどう考えてもおかしいでしょ」
「何もおかしくないですよ。じゃ、決定で」
「いやいやいや、そういうのはまず話し合いからでしょ?」
「? 今してますよ?」
「してないよ?」

──というやりとりの末、二人の共同生活が始まったわけである。

 〜回想終わり〜


 とはいえ、高校時代は互いの青春を遠慮なく踏み荒らし散々邪魔し合った仲である。自分のとんでもない厚かましさは棚に上げ、寺川との共同生活なんてきっと地獄だろうなぁとトガシはそれなりに覚悟していた。

ところが、どっこい。意外や意外。寺川との暮らしは、これまた拍子抜けするほど快適だったのである。病院への送迎もリハビリも当たり前のように付き合ってくれるし、マネージャー業は言わずもがな有能。今さら取り繕う必要もないので、一緒に居ても妙な気疲れがない。というか、もともと仲が悪いので、これ以上は不和になりようもなかったのだった。

そしてなにより、さすがタワマンというだけあって部屋が無駄に広い。無駄に、というのは少々トガシのやっかみである。なんせ以前のクサシノの寮では、ストレッチスペースの確保の為ろくに家具も置けず、実に慎ましく暮らしていたのだ。あの頃を思えば、どこでストレッチをしても場所に余裕があるというのはちょっとした感動ものである。さらに、ストレッチどころか、タワマン内には24時間使えるジムまである。住人向けの簡単な設備かと思いきや、これが意外と侮れない。最新のフリーウエイトも揃っており、床も本格的なラバー仕様。今や家主である寺川よりも、トガシの方がよほどジムを使い倒している始末なのであった。

ついでに、寺川の部屋はキッチンもやたらと充実していた。調理器具一式に加え、最新のフードプロセッサーや低温調理器まで揃っている。もっとも、寺川は料理を全くしない男だ。となると、おそらくこれは以前同棲していたという元カノの置き土産では? と、トガシは勝手に邪推する。寺川は『元カノじゃなくてただの同居人だよ〜』と言い張るので、その真相の程は不明であるが。きっと手酷く振られたんだな。だって寺川だし……と、トガシは一人勝手に納得していた。いずれにせよその低温調理器は、現在トガシ専用のサラダチキン製造機として第二の人生を歩んでいる。お料理上手な元カノ(仮)も、これにはきっと喜んでいるに違いないとトガシはちょっぴり誇らしげに思いながら日々せっせと鶏胸肉を仕込むのだった。

閑話休題──。



「──大丈夫だよ。バラエティって言っても生放送じゃないし、ゆる〜い感じのやつだから」
……

トガシは返事の代わりに、ヨガマットの上で黙々と太腿を伸ばした。うっかり返事をするとろくなことにならないのである。

「あ! それよりさ〜」

寺川は身を乗り出し、わざとらしく声を潜めた。

「リハビリ終了の経過報告も兼ねて、そろそろYouTube配信やんない? 怪我からの再起宣言的なやつ」
「嫌ですよ。人の怪我をエンタメにしないでください」
「でもさー、きっと泣けると思わない?」
「思いませんし、誰も泣きませんよ」
「トガシくんのファンは泣くよ。たぶん泣きながら赤スパ投げてくれるね」
「クソ野郎」
「アハハッ、シンプルに悪口じゃん」
「褒め言葉ですよ」
「可愛くねぇーなァ。でもトガシくんさ、そんな俺のこと、結構嫌いじゃないでしょ?」
「は? 嫌いですけど?」

トガシがそう言うと、寺川は声を上げてご機嫌に笑った。この男の笑いのツボを、トガシはイマイチ理解出来ない。

…………はぁ。特番の方、台本送ってください。放送事故になるよりはマシなんで」
「おっいいねいいね! その調子で、そのうちCMとかもやりたいよねー!」
…………
「安心しなよ、トガシくんのことは潰さないからさ」
……その言い方がもう既に安心できないんですが」
「本心だよ。トガシくんが金になるうちは、ね」
「理由がクソなんだよ」
「でも、嘘はついてないよ?」
……そこだけは、まぁ……一応信用してますけど………




 12月。長かったリハビリもようやく終了し、トガシは来年の競技復帰に向けた本格的な調整に入っていた。久しぶりの練習場。踏みしめるタータントラックの感触に、否が応でも心が浮き足立つ。

「──トガシくん」

呼ばれて振り返ると、小宮が立っていた。

「やあ小宮くん、また久しぶり……いや、今回はそんな久しぶりでもない、かな……?」
「どうだろう……とりあえず久しぶり、トガシくん」
「うん。久しぶり、小宮くん」

互いに少し照れたような、なんだか間抜けな挨拶を交わす。小宮とは、あの決勝以来だった。
あの試合のこと。あの10秒の世界で見えた景色のこと。彼とは話したいことがたくさんあったはずだと思うのに、いざ対峙すると何を話せばいいのか途端にわからなくなる。

……脚、大丈夫なの?」

ふいに小宮が尋ねた。
声は低く、なんだか少し強張ってるみたいだった。

「大丈夫だよ。治療も終わって、来年のシーズンから復帰して問題ないって」
「そう。良かった……

小宮は心底ほっとしたように頷いて、それから言葉を探すようにきょろきょろ視線を落とした。

……ごめん、トガシくん」
「ん?」
「僕、トガシくんの怪我のことなにも知らなくて……ほ、本当は、お見舞いにも行きたかったんだけど………

そう申し訳なさそうに、しょぼしょぼ項垂れながら小宮が言う。

「そんな、気にしないでいいよ」
……でも、僕はトガシくんにずっと会いたかったんだ」
「俺に……?」
「うん。あの決勝で、トガシくんと走れて楽しかったこと、ちゃんと伝えたくて……けど、連絡先……わからなかったから……だから今日、ここの練習場に君が来るって噂で聞いて、それで……っ」

たどたどしく言葉を紡ぐ姿に、トガシは小学生の頃を思い出して小さく笑った。なんだか昔に戻ったみたいだった。

「ありがとう、小宮くん」
「うん」
……あの100メートルさ、楽しかっただろ?」
「楽しかった」
「俺もだよ。だから、また君と、一緒に走れるようになるまで頑張るよ」
「うん。頑張ってよ……僕も、トガシくんと、まだたくさん走りたいから」

そう言って、二人は静かに笑い合ったのだった。


 ──そんな彼らの素敵な友情の一幕を、やや胡乱な目つきで眺めている男がいた。

寺川である。

露骨な視線を隠そうともせずに、トガシの後方に立ち、小宮のことをじっと見つめる。いかんせん好意的とは言い難い表情。そもそも寺川は、小宮のことが気に食わなかった。もちろん二人に面識はない。それでも小宮のことを嫌う理由は、寺川のなかでははっきりしている。高校時代、トガシの無敗記録に土をつけたのが、この小宮とかいう男だったからである。

 その事実を思い出す度、寺川の頭の中ではいつも決まって同じ記憶が繰り返される。


 ──夏休み明けの始業式。

 蒸し暑い体育館。
 耳障りなマイクの反響音。
 壇上に立たされた陸上部。
 インターハイ準優勝の報告。

 『なんだ、一位じゃないんだ』

 誰かから漏れたそんな声。
 それに続く、ひそひそと広がるざわめき。
 理由のない失望。
 無責任な嘲笑。
 好奇の視線。

 あの夏、全国大会までいったのは陸上部だけだったというのに。それでも一年のトガシに向けられたのは、称賛よりも落胆の方が多かったように思う。勝手に期待して、勝手に値踏みして、軽々しく踏みにじる有象無象ども。

それでも、トガシは平然と笑ってみせた。
それはとてもよくできた笑顔だった。軸どころか、中身はとうに抜け落ちて、もう何も入っていないのがよくわかる。ぐにゃぐにゃで、空っぽの作り笑い。それが寺川にはどうにも腹立たしかったのだ。まるで、お気に入りの玩具を勝手に傷つけられたみたいな、幼稚で理不尽な怒り。理屈じゃない。そんな得体の知れない感情を腹の底に抱え込んだまま、寺川は今でもあの夏を忘れられずにいた……


 とはいえ、寺川は感情で動くタイプではない。少なくとも、そう振る舞うことにはひどく長けた男であった。

「──ふぅん。こちらが、あの“小宮選手”ね」

唐突に口を開いたかと思えば、寺川は実に自然な所作でトガシと小宮の間へするりと割って入っていた。トガシが一瞬ギョッとなり、小宮も反射的に肩を強張らせる。

「はじめまして、小宮選手。トガシのマネージャーをしております、寺川と申します」
……え、あ……トガシくんの、マネージャー、さん?」
「はい!よろしければ、SNS用にウチのトガシと写真撮って頂いてもいいですか?」

寺川の言葉遣いは明るく丁寧で、いかにも人当たりの良さそうな笑顔だった。外面だけはすこぶる良いのだ。トガシは内心うわっと思った。小宮の方はというと、どう返せばいいのかわからずに視線を泳がせていた。野生の勘とでもいうべきか、なんというか……この男はなんだかヤバいと直感で思ったのだ。敵意と呼ぶほど露骨ではないけれど、笑顔の裏側にある僅かなざらつき。冷たい何か。普段の小宮であれば、一向に気にしないし構わない。そういうのには、ずっと晒されて生きてきたから。慣れっこだ。けれども、それがトガシの身近な相手というのだから、どう対応していいのか途端にわからなくなる。

「えと……

困った小宮が、思わずトガシを見やる。
するとトガシは、いつも通りの調子で小宮へ向けて笑いかけた。

「小宮くんがよければさ、せっかくだし一緒に撮ろうよ」
「う、うん」

なんとも気さくで、いかにも爽やかな笑顔だった。そんなトガシに、寺川が内心うわっと舌を出したのは言うまでもない。

 他でもないトガシに誘われてしまえば小宮も断る理由はなくて、結局二人で写真を撮ることになった。もとより、トガシとのツーショットは小宮にとってもちょっぴり嬉しかったのである。そうして寺川が投稿した彼らの写真は、あの日陸以来の組み合わせということもあって、ものの数秒でタイムラインを駆け抜けていった。

《トガシと小宮並んでるの激アツ!!!!》
《はわコミトガがコミトガしてる!!》
《トガピマネいつも神写真ありがとう ; ; 》
《日陸の因縁ライバルじゃん》
《いや普通に仲良さそうなんだが???何この距離感》
《幼馴染ってマジなん?》
《小宮選手ちょっと照れてるの可愛い》
《これどこ?競技場?トガシ復帰?》
《相変わらずトガピの顔がいい》
《待ってコミィが他選手のSNSに登場するのレアじゃない???トガシ選手ありがとうございます!!!!! 小宮界隈限界オタクより》

などとコメントは秒単位で増えていき、瞬く間にバズっていたのだった。


「──ねぇ、トガシくん」
「なに? 小宮くん」

走る直前のストレッチの最中。アップを終えた選手たちがそれぞれのルーティンをこなしているなかで、小宮だけがどこか落ち着かない様子でトガシを見ていた。

「あのマネージャーの人……、ほんとうに信用出来るの……?」

そう恐る恐る尋ねる。
トガシは屈伸をしつつ、ちょっと考えるそぶりをしながらのんびり答えた。

「うーん。俺も別に、信用はしてないかな」
「えっ?! そ、そうなの……?」
「うん。まぁでも一応信頼はしてるかな……あの人は“使える”からね」

そう言って、トガシは嫋やかに笑った。
この瞬間、小宮は心底ゾッとした。そして理解する。本当にヤバいのは、寺川ではない。トガシの方だ。100メートルを走ることにすべてを懸け、何もかもふっきれた今の彼に敵はない。文字通り、無敵だったのである。

 そしてそんなトガシの無敵っぷりは、走りにも如実に表れていた。現在の日本記録保持者とはいえ、ハムストリング断裂と半年に及ぶ療養期間を経ている以上、パフォーマンスの低下は避けられないだろうと関係者の誰もがその前提でトガシの復帰を見守っていた。しかし、トガシが実際にトラックで見せた走りは、その常識すら覆すものであった。むしろ、以前よりも洗練されているとすら思えるほどに。長いスランプと深刻なイップスを脱した足取りは、どこまでも軽く、迷いがない。

──そしてなにより、速かった。


 次の日本選手権、さらにその先の世界陸上やオリンピックを期待する声が増えるのは、もはや必然で。やがて噂を聞きつけたクサシノをはじめ、複数の大手企業から契約の打診が舞い込んでいた。現日本記録保持者を引き入れたいという思惑はどこも同じなのだ。競技生活の全面支援に、引退後を見据えた指導者契約。これ以上ないくらいに安心できる未来が、トガシの目の前にいくつも提示されていた。

けれども。
今のトガシが、そんな“安心”を選び取ることは、ついぞなかったのである。




「25日の夜、仕事入れないでください」
「ふーん。デート?」

 ──12月某日、夜。町中華にて。
 なんとなく中華が食いたいという意見が一致して、トガシと寺川は場末の中華料理屋に赴いていた。トガシは一応アスリートとしての矜持を保つため、野菜多めの中華丼。寺川は炒飯とラーメンのセットに、餃子、さらにはビールまで注文していた。そのあまりの無遠慮っぷりに腹が立ち、トガシは寺川の皿から餃子を一個横取りした。そして美味かったので結局一皿丸ごと強奪した。人間とは等しく愚かなのである。

さて、そんな食事の最中でのこと。
トガシが来週の予定を何気なく告げると、寺川はテーブルの隅にあった灰皿を手繰り寄せて煙草に火をつけた。細い煙が、二人の間を揺らめいて溶ける。それを見て、トガシは思わず目を瞬かせた。この男は確かにヤニカスのクソ喫煙者であるが、食事中に、それも自分の目の前で煙草を喫むのは初めてのことだったからである。アスリートへの配慮という倫理観がこの男にも備わっているのだとばかり思っていたが、どうやらそれは気のせいらしかった。

「トガシくんも案外やることやってんだねェ」

そう言って寺川がヘラヘラと無味乾燥気味に笑う。トガシは餃子を食べる手を止め、「違います」と即座に返した。

「ただの食事ですよ」
「へぇ……小宮選手と?」
「は? 違いますよ。陸上部の集まりで」
「あ、なーんだ。ソッチか」

灰がぽろっと落ちる。それと同時に、寺川は吸い始めたばかりの煙草をあっさり灰皿へ押し潰していた。

「いーよいーよ。もともと24も25も予定空けてあったし。クリスマスに仕事とかダルいからね」
「ありがとうございます」
「いーえ……て、あれ? え、待って。じゃあトガシくん、イブの日は暇なんじゃん?」
「そうなりますね」
「え〜〜そうなんだ〜〜!!じゃあ俺と2人でパーティでもする?」
「しませんよ」


──した。

寺川がSwitch2を買ってきたため、桃鉄で遊び倒した。チキンもケーキもしっかり食べた。楽しかった。