ortensia
2026-05-26 02:25:49
1536文字
Public 傭リ
 

ファンタジー傭リ+納

エルデンリング。傭は鷹(の遺灰なので喋らない)。火葬、霊、輪廻転生。エルデンリングの世界の現代では黒炎と火葬は古い葬儀で禁忌のようなもの、本当は還樹(御神木みたいなものの苗床になる)という形が理想。

傭←嵐鷹の古王(の遺灰)
リ←ネフェリ・ルー
納←主人公

 戦争の跡地、寧ろ未だ戦い続ける者達の亡骸を、せっせと納棺する旅。棺桶は必ず黒炎で燃やす。それが古い葬儀の習わしだ。
 しかし、僕がその地に訪れる前に、既に誰かがそれを終えた後の場合もある。亡骸の代わりに、そこには灰が遺っている。
 まだ生まれ変わっていない霊ならば、喚び鈴で霊体を現してくれることがある。僕は社交恐怖症だが、物言わぬ骸や霊ならば、心穏やかに接することができる。旅を助けてくれる馬だって、霊体の霊馬だ。
 生きている人は苦手だが、人以外の骸を葬ることもある。ここは鷹の古城。今はその翼と共に崩れて久しい。
 そしてその時拾った遺灰は、とある古王のもののようだった。未だ霊魂を宿している。
……あれ。」
 りぃんと死者の世界までも届きそうな澄んだ音が、その時も確かに響いた。それだけは普段となんら変わらなかったのに、霊を喚ぶことはできなかった。
 鷹達の王として君臨した一羽の誇りは、召喚には応じないのかもしれない。
 喚んでも現れてくれないものは仕方がない。僕は遺灰も鈴も荷物に片付けて、その場を後にした。
 ここにはかつて、本当の嵐が在ったと言う。
 しかし今は、さらさらとただ穏やかに風がよぎるだけだ。
 風に倣うようにして少し進むと、絵を描く一人の芸術家の男がいた。僕は社交恐怖症なので、生きている彼には近寄らないし興味もない。なのに彼は絵から顔を上げ、声を掛けて来た。
「そこの旅人さん。」
 生憎ここには僕と彼しかいない。
……な、なにか?」
 無視したかったが、そうして争いの種を蒔いていては、自分が亡骸になりかねない。そうなったら僕を納棺してくれる人は現れるのだろうか。僕も遺灰になるのだろうか。
 芸術家はわざわざ絵を回ってこちらに近付き、何やら感慨深そうに言った。
「古い、嵐の匂いがします。」
「え……?」
 芸術家は自分の絵を振り返って言った。
「鷹を描いていたのです。」
 ここには争って荒廃した城しかない。しかしかつて、古王は確かにここにいたのだ。
 僕は思い出して、幾つもの遺灰の中から、古王のものを取り出した。
 芸術家はそれを見て、色めき立った。
「良い香りです。」
「そ、そう……。なら、君に渡すよ。」
「おや、よろしいので?ありがとうございます。」
 そっと受け取った芸術家は、眼差しで遺灰を撫でるように眺めた。
……最初の鷹を思い出します。」
「え……まさか、この城の、嵐の古王を知っているの?」
「そんなわけないでしょう?わたしが初めてここを訪れた時、とっくにこの城は落ちていたのですから。」
 何が可笑しいのか芸術家は笑って言った。よく分からない。これだから社交はご免だ。
 そっと溜め息をつく。
……霊喚びの鈴は持ってる?……まあ、どうやら応えてくる気は無いみたいだけれど……。」
「鈴はありますが、構いませんよ。」
「え……?」
 芸術家は言いながら、また絵の前に戻って行く。なんとなく後を追い掛ける。
 絵には竜と見まごう荘厳な鷹が描かれていた。
 嵐だ、この鷹は嵐だ。嵐鷹の古王。
「遺灰にも霊体にも、そもそも興味はありませんが……役に立たないのなら、絵の具にして別の方法で役立ってもらえば良いのです。」
「ええっ……。」
 遺灰を取り返した方が良いのかと思った。やっぱり生きている人は分からない。いや、この場合は芸術家だからだろうか、彼だからだろうか。それすらも分からない。死んでいればそんなことも関係ないから、やっぱり僕は屍を相手にする方が良い。
 けれど、嵐の遺灰はいずれあの芸術家に応えるのかもしれないと、なんとなく思った。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。