望月 鏡翠
2026-05-25 01:20:50
893文字
Public 日課
 

#2094 にやりと相棒21

#毎日最低800文字のSSを書く/@tmysmst


 どのくらい時間が経ったのでしょう。僕にはわかりません。ともかくもう周りは真っ暗で、海と森の境目も、砂浜との境目もわからなくなっていました。
 もしかしたらこうしている間に、海が上がってきて、すぐそこまできていて、少し眠って目が覚めたら、溺れてしまっているんじゃないでしょうか。
 怖い想像で、頭がいっぱいになります。
 僕はひとりぼっちです。相棒にひどいことをして、追い払ってしまったから。自業自得なんです。
 膝を抱えて震えていると、どこかで声が聞こえました。怖いものかと思って、僕は身構えました。
 でもそれは僕を呼んでいます。
 とろ、とろって、僕の名前を呼んでいました。
 お父さんとお母さんです。
 森の奥の方から聞こえました。
 遠くに光が見えました。
 そして、それが真っ直ぐに僕のところまできて、胸に飛び込んできました。
「とろ、大丈夫かとろ!」
 相棒です。ひんやりとして、冷たくて、そして涙でびしょびしょに濡れていました。
「相棒、どうして」
 僕にぶたれて、ひどいことを言われて遠くにいってしまったはずです。
「だって相棒、このままだと死んじゃうよ。だから、森を越えて、見つけてきたよ。相棒が怖くっても、僕がいくよ」
 相棒の後から、お父さんとお母さんと他の大人たちもみんなやってきました。僕のことを探し回っていたようなんです。それを見つけて相棒が、連れてきてくれました。
 大人たちに連れられて、僕は森を出て、家に帰りました。
 僕は抱きしめられて、たくさん心配されて、そしてそれ以上にものすごくたくさん怒られました。海は潮というのがあって、満ちたり引いたりすること、そのせいで道がなくなってしまったことを、教えてもらいました。
 僕はあんなに遠くに行ってはいけなかったんです。すぐに大人を呼びにいくべきだったんです。相棒が森を越えてくれなかったら、僕はきっと大人が島中を探し回って見つけてくれるまで、あそこに一人でいたんです。
 ものすごく怒られて、凄く泣いて、そしてお風呂で温まって、お布団に潜り込んだあと、僕は相棒をしっかりと抱きしめました。