meru2408
2026-05-24 16:41:22
3692文字
Public モンギル
 

クラベル(クラウド×ベルナ)

きみの好きなもの



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side:クラウド


「はぁ……ただいまー!」
「おかえりー」

用事を終えたベルナが部屋に入ってくる。今日も暑かったようで胸元を手で仰ぎながらカップを口元に傾けている。
行儀が悪い。

「ベルナ、歩きながら飲むとむせるぞ」
「んく………ぷはぁ!あーおいし!」
「人の話を聞け」

俺の注意もきかずにどさりと床に腰を降ろすベルナ。

「何飲んでるんだ?」
……コーヒー」

ベルナの持っているそのカップがやけに気になり、側に行きカップの中身を覗いた。

「また?!」
「いいじゃない別に!ちゃんと水も飲んできたんだから!」
「だからって……暑い季節なんだぞ」

懲りないベルナは俺に向かって文句を言う。

「もう!最近は心配性が度を越してるわよ!こんなことでいちいち突っかからないでくれる?」
「いや突っかかってはないけど

ぷりぷりしながらコーヒーを飲み続けるベルナ。汗もかいている。

……毎日飲んでるんだから大丈夫でしょうが……

小さい声で呟いたその口からとんでもない言葉が聞こえてきた。え?今なんて?………毎日???

なんだって?毎日飲んでるのか?」
……はっ……

しまった、という顔をするがもう遅い。ベルナの前にしゃがみ込み、顔を覗き込む。……バツが悪そうな顔をしている。

「ベルナさーん?毎日とはどういうことですかー?」

にっこりと問いかける。案の定ベルナは顔を真っ青にしながらあたふたしている。

……ち、ちが、水……そう、水!水を毎日飲んでるのよ!」
「へぇー?」
「ぐぅ……

俺の返事で信じていないということが分かったのか、顔を下に向ける。

……もしかして一日に何杯も飲んでるとかじゃないよな?」
「う………
「そうなのか?」

俺の質問攻めに唇を固く結んでいたベルナが渋々口を開いた。

……毎日……二杯は………飲んでます……
…………

まさか俺が見てないところでコーヒーをがぶ飲みしているとは思わなかった。コーヒーは普通に飲めば体にいいと言われているが、飲みすぎたり、飲む時間帯を間違えると逆に悪化してしまうらしい。フランシスから聞いた。

「これ、没収な?」
「うぅ……

またにっこりと笑いかけ、飲みかけのコーヒーをその手から奪い取る。

「別に一日に四杯飲んでるわけじゃないからいいじゃない……
「四杯?!?」

弱々しく話すベルナの言葉に驚いてしまった。四杯て。四杯とはコーヒーを一日飲む量の制限数である。それ以上を飲み続けると中毒になったり、しまいには倒れることもあるという。これもフランシスから聞いた。

……ベルナお前……
うぅ、返してよぉ……

ベルナの力であれば俺からコーヒーを取り返すことなんて簡単だろうに。それをしないのは……俺に身も心も任せてくれているほかない。

四杯飲んだことあるのか?」
「返してぇ!」
「ベルナ」
……うぅ……三杯なら……
…………はぁ」

手をぐっと伸ばしコーヒーを取り返そうとするが、俺が思い切り遠ざけているため全然届いていない。
……というかここまでコーヒーが飲みたいってなるのはもう軽く中毒になってるんじゃないか?

「じゃあこれは俺が飲むな」
「うぅー……クラウドのけち!」
「けちじゃありません。飲みすぎなんだって」

こないだからけちとか言われてるけどしょうがないじゃないか。今回はベルナに原因がある。

………じゃあ、」
「ん?」
……一緒に飲んで」

ぶすっとした顔のままそう呟くベルナ。……一緒に飲むとは。

「コーヒー!一緒に飲むの!それならいいでしょ!」

どういいのか分からない。飲みすぎ防止のために没収したコーヒーを一緒に飲むって。なんかずれてないか?

ベルナ」
「お願い!そしたら半分ずつになるでしょ!飲む量も減るじゃない!」

ああそういうことか。やっと合点がいった。

………あーもう分かったよ。俺の負けだ」
……いいの……?」
「いいよ。許してあげる。でも今後一日二杯だけは絶対に守ること」
「やった!!」
……ちゃんと約束守れよ?」

どうせベルナに何を言っても結局変わらないのだ。しかも毎日飲んでいるっていうことはもうルーティーンになっているということ。まあ今のベルナは体調悪いとか、何か様子がおかしいとかは無いみたいだし。……コーヒーの執着は凄まじいけど。

「んふふ。じゃあ……、」
「ん、じゃああっち向いて」
「あっち?」
……一緒に飲むんだろ。後ろから抱えるから」

ご機嫌になったベルナにそう伝えると、ちょっと恥ずかしそうにもじもじしながら後ろを向いた。……結構触れ合ってきたのに、未だ恥ずかしがるベルナは見ていてとてもかわいい。

「ん……、」

座り直し、足を開きベルナを包み込むと、嬉しそうな吐息が聞こえてきた。



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side:ベルナ



後ろから抱きかかえられ、一緒にコーヒーを飲む。すぐ後ろからすする音がし、ごくりと音がする。

「ん」
……自分で飲めるわよ」

カップを手渡しじゃなく、手に持ったまま口の方に寄せられるので思わずその手を掴んでしまった。

「ベルナのけちー」
「ふふ、けちじゃない」

さっきとは真逆のことが起こっていて思わず吹き出してしまう。またデジャヴ。
その手からカップを離し自分で持つ。半分残っているコーヒー。……すすったであろうその飲み口。

「飲まないのか?」
……飲むわよ」

後ろから楽しそうな笑い声が聞こえる。こいつ絶対よからぬことを考えてる。
その飲み口に口をつけ、すする。……ん、美味しい。

「はぁぁ……幸せ……

コーヒーが飲めているからなのか、はたまた後ろから抱きしめられているからなのか、結構多幸感が湧き出ていて思わず頬が緩む。

………間接キスしたもんな?」
……っ、」

思わず反対の手で伸ばしているそいつの足をばしっと叩いてしまった。

「いたぁ……間接キスなんて何回もしてるじゃないか
「そうやって耳元でそんなこと言われたらたまったもんじゃないわよ!」

ほらやっぱり変なこと考えてた。こいつだんだん意地悪くなってきてるわね……
コーヒーを飲みながらじとりとお腹に回しているクラウドの手を見る。男らしい骨ばった手。その手が大切なものを撫でるかのように………すりすりと動いた。

「んっ……こら」
「んー」
「んーじゃない。その手をやめなさい」

そう注意するけど、こんな言葉では絶対に止めてくれない男、クラウド。

……なに、したいの?」
……ベルナもしたいの?……あでっ」
「私がしたいのかって聞いてるのよ」

そんなお調子者の手をぱしりと叩く。

「んー……したい、かなぁ……?」
「なんで疑問形なの」
「なんていうか……イチャイチャもしたいけど……このままでもいいっていうか………
………

コーヒーを飲み終わり、クラウドの手にカップをこつこつと当てる。

「ん、終わったわよ、テーブルに置いといて」
「んー」

クラウドの手がカップを掴み、近くに置いてあったテーブルに置かれる。こいつの方が背が高いからこういう時便利よね。
またお腹に手を回され、ぎゅうっと抱きしめられる。

……今日は甘えたなわけ?」
「いつも甘えてるのはベルナの方じゃん」
「私がいつ甘えたっていうのよ」
「さっき」
………

そういえばコーヒー飲みたさに思い切り我儘言ってしまったな。ちょっと変なところ見せてしまった気がする。

ああいうのも甘えってこと?」
……うーん甘えというか……

後ろから頬ずりをされる。

……かわいいところ?」
答えになってない」

ダメだ。私の体を堪能するのに夢中で真っ当な会話が出来ていない。さっきのしっかりしたあんたはどこへ行ったのよ。

……あんたもかっこいいところ、あるわよね」
「え?!かっこいい!?」

がばりと大きく顔を上げ目をキラキラさせている。

「う、」
「どこ?!どこがかっこいいの?!」
「どこって………

更に抱きしめられる手に力を入れられ、ちょっと苦しい。

………全部」
「えぇーーー?具体的に言ってよ」
「全部!かっこいいの!はい終わり!」

後ろから「ちぇっ」と声がする。余計なことを言うと絶対こいつは更に調子に乗ってなんかしてくるので強制終了した。

……じとりとした顔も、心配してくれるのも、その体で私を抱きかかえてくれるのも、ちょっと怒っているのも………優しい顔で愛情を伝えてくれるのも。
全部全部かっこよくて、だいすき。なんてそんなことを言ってしまったら。
こいつはどうなっちゃうんだろう。


絶対言わない。お腹に回されている手を撫でながら、そう固く決意して。

その決意が瞬く間に崩れる時が来ることを、私はまだ知らないままでいた。