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mrt
2026-05-24 00:34:31
4937文字
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泡沫夢幻と彗星
ざっくり、夢だけど夢じゃなかったってお話。無駄に長い。
夢だ…悲しい…でも覚めたくない…メソ…なシャアと、まぁ…メソメソするなよ。なアムロ
シャアムはお互い大好きって公式だからね…。
最期だから、きっと素直に好きだと言えたんだと思います。
ネタメモの中で、絵に起こさなさそうな物をちょっと文章っぽく頑張って肉付けしよう!
と無謀なことをしてみました。
こんな感じで絵に起こさないなっていうメモは言語化強化のために文章にして上げていこうかななどと思っています。
お付き合いいただける方がいたら…嬉しいです!!
誤字脱字は許してください。
そのうち支部とかにまとめます。
鼻の奥に香る鉄錆。ずっとだ。もうずっと、そんな場所にいる。
期待をのせた眼差し、導きを望む弱く脆い人々、泥のようにまとわりつく生命に息を切らした。
息苦しかった。
だから、所詮、目覚めれば幻と消えるとわかっていても、美しい彼らがいる泡沫の宇宙を、ただ漂う夢を見ていたかった。
ただ、胸の内に忍ばす望みは、それほどまでに罪なのだろうか。
唾を飲み込もうとすると、砂利で掻き混ぜられるような不快感を覚えた。
どうやら、唾液さえ満足に分泌できないくらいに口の中が乾いているようだ。
「ーっゲホ、ゲホッ」
「水を飲んだほうがいいぞ。」
「
…
!?」
閉じたままだったらしい瞼を上げると、白い視界が輪郭を持ち始める。
「よく眠っていたな。
気分はどうだ?」
「
……
あぁ
…
。」
「はは、間抜けな面。
俺は、今結構いい気分だ。」
こちらを覗き込んでいる夜明けの深い青が、楽しそうに細められていた。
「
…
なぜ。」
癖のある赤毛、優しげに下がったまなじり。
覚えがありすぎるくらい覚えのある姿に、ぼやけていた頭が一気に晴れた。
「アムロ
…
?」
「そうだな。」
「そうだな、とは
…
待て、ここは?なぜアムロ、君が
…
」
「とりあえず、ほら。」
乾き嗄れた声を見かねたか、手渡されたのはボトルの水。
早く飲め、と促されてボトルを煽る。
飲食物に気を遣わないのはいつぶりだろうか、勢いよく、喉を鳴らして飲み込んだ。
「で?シャア。
…
気分は、どう?」
「
……
悪くないな
…
。」
喉を潤すと体が妙にすっきりしている。
そういえば、起き抜けに毛布を蹴り上げ、妹の手を引いて遊びに出掛けた幼い頃を思い出す。
これは、宇宙を泳ぐ夢の続きだろうか、それとも、忘れていた晴れやかな目覚めだろうか。
やはり夢だろうな、と、シャアが思い直したのは現状自身がいる場所が、見知った無駄に広い私室だったからだ。
誂えられた調度品はどれも一級品で、総帥などという人物が住うに相応しいであろう。
つまり、つまらない箱だ。
「さすがはトップの部屋は広いな。」
「
…
そうだな。」
「ひとりで?」
「他に誰かいると?」
「いい人がいただろう、あなた。」
「よかろうがなんだろうが、この部屋には入れない。」
「へぇ
…
寂しいんだ。」
きょと、と目を丸めたあと、アムロがつまらなそうに小さく口を尖らせる。
「
…
婚姻を結んでいないから、入れることができない。
示しがつかない。」
「じゃあ、籍を入れたらよかったじゃないか。」
小首を傾げたアムロから、シャアはすいと目を逸らす。
「
……
。」
「あぁ、うーん、複雑な事情なんだろうな。
けど、彼女は浮かばれないね。」
「君にはわからんさ
…
。」
「
…
?
え、もしかして拗ねてる
…
?」
ふは、と吹き出したアムロは、朗らかな笑い声を上げた。
例えば、ブライトに対するような。
間違ってもシャアに向けられることはないものだ。
「あぁ、やはり
…
ここは夢か
…
。」
「そう思うならそれでいいよ。」
カウチに悠々と腰掛けたアムロが、今度はまるで子ども相手にするような笑みを浮かべた。
「君に、そんな表情を向けられる日はこないだろう。私には。」
「どんな表情だよ。
まぁ、でも今見ているのだから来たんじゃないか。その日。」
「
…
そもそもここに君がいることがおかしい。
私たちは宇宙で、戦っていたはずだ。
だから、夢だ
…
。」
「ふふ
…
そうだな。そうそう。夢だよゆめ。」
目を細める。肩を揺らす。
アムロは、よく笑った。
「
…
ひどいな、あんまりだ。」
「?
あれ、おい、あーあ、なんて顔だよ
…
。」
どうせ夢なら、ただ、彷徨うだけであれたらよかったのに。
ベッドの上で、行儀悪くうずくまる。
「なんて顔ってなんて顔だ?
仕方ないだろう!アムロは、私を殺そうとしていた。私も君を殺そうとしていた。
だから、そんなはずない。アムロが、私に
…
」
「おい!待って待って!
もう
…
なんだかあなたって、だいぶ思考が否定的というか
…
暗いよな。
まぁ、俺も大概だけどさ。」
「
…
。」
宇宙で戦っていたのだ。
ずっと戦っていたはずなのだ。
モビルスーツを手足のように操って、宇宙を駆けていたのだ。
けれど、今は夢の中。
だから、アムロは泡沫に消える。そのくせ、あまりにもはっきりとそこにいる。
「
…
夢ならば宇宙に揺られていたいのだよ、私は。
ひどいな、君は。あんまりだ。あんまりだよ、アムロ。」
「俺に言われてもなぁ。
頑張って覚めてみたらいいんじゃないか?」
「いやだ。」
「わぁ
…
わがままなんだ。」
ごねるシャアに、アムロは分かりやすく眉を困らせた。
アムロには、シャアの駄々の理由はわからないだろう。
拗ねていじけて、別れの微睡とぬるく鉄錆のにおいがする目覚めを知っていてなお、結局進むことを選ぶから。
別れの現が悲しいからと、宇宙を彷徨ったりしないから。
「君が、ずっといじけてくれていたらよかった。」
「えぇ
…
。あんだけ宇宙に来いって言ってたくせに
…
。」
「宇宙にはいろ。」
「
…
もしかして、あなたって俺のこと結構好きなのか?」
「
…
。」
「え。」
睨みつけると、アムロは心底驚いたと言いたげにぽかりと口を開けた。
「ニュータイプが
…
聞いて呆れるな
…
。」
「
…
関係なくないか?」
「ある。」
「
…
あるかぁ。」
眠れば、幻と消える彼らの夢を見た。
決着を切望したくせに、また、こうして朧げな夢を見ている。
どうせ、すぐに目覚めて穏やかな笑みなど忘れてしまうだろう、とうずくまる。
まるで、9つの子どものように臍を曲げていじけてみても、アムロはやっぱり笑っていた。
「
…
地球はどうなったんだ。」
「あれ、臍曲がりは治ったの?」
「答えろ」
「さぁね。」
「
…
気にならないのか。あれだけ、守ろうとしていたのに。
大切じゃないのか。」
「大切だよずっと。」
「
…
本当に知らないのか。」
「どうかな。」
肩を竦めたアムロに、シャアはため息を吐く。感情の起伏で言えば酷く激しくないものの、もっとわかりやすい男だと思っていたのに。
コレが案外、飄々としている。
「
…
いいや、そうだな。
寝ても覚めても、結局君は、私を置いて行くのだから関係ないか
…
。」
「今こうして話してるのに。」
「ここは私の夢だ。」
「俺は幻影と?」
「違うのか。」
「どうかな。」
ニュータイプが聞いて呆れるのはこちらの方か、と何度目かになるため息が漏れた。
何も感じない。
アムロの考えも、感情も、当然、未来の可能性も。
気がついたら用意されていたコーヒーに口をつけて、一瞬の静寂。
「本当に
…
なにも、分からないな。」
「ん?
あぁ、そうかも。」
分かり合えないが通じ合う、いつもそれは一瞬だった。
淀んだ地上の元で、塵が舞う宇宙で、シャアと対峙した唯一。
「君を、誰よりも理解できると思っていた。」
「へぇ。
俺はあなたを一生かけても理解できないだろうと思っていたよ。」
「驕りだよ。」
「だろうね!」
ずっと、その瞳にいたかった。
誰も彼もにもたらされる光を、一身に向けて欲しかった。
それを手にできると信じていたかった。
「
…
私は、君に何になって欲しかったんだろうな。」
「結構色々なものになったと思うけど。」
「
…
好敵手?」
「うん、それは外せないな。
あと、相容れずとも同じパイロットとして戦友だと思っているよ。
同僚になったこともあるよな。
…
それから、あとは、友人。」
指折りに数えるアムロは、目を見開いて固まったシャアに首を傾げた。
「
…
そんなおかしいかな。」
「友人か。」
「微妙なところかと思ったけどね。
いいんじゃないかな。」
穏やかな声は、命のやり取りをした相手に対するものには思えなかった。
白い悪魔でも、それこそ軍人でもなんでもない。
アムロ・レイという、本質的に朗らかな男がいた。
「
…
私は」
「?」
「私は、君に父になって欲しかったのかもしれない
…
。」
「バカな奴だな、あなたって。」
「む、」
冷めたコーヒーを眺めていた視線を、アムロへ向けた。
アムロは、真っ直ぐにこちらを見ていた。
ーいつか、ララァに手を優しく握られ眠りについた夜があった。
その時の顔を、ずっと忘れていない。
だって、同じだった。
優しくて穏やかで柔らかな微笑みが。
「
…
やはり、やはり。
ーこれは夢なんだな。」
「そう思う?」
「君が、この部屋にいるのはおかしい。」
「だろうな。」
アムロは目を伏せる。
成人男性にしてはまろい頬に、まつ毛の影が落ちた。
「どうして、この部屋なんだ。なんでこんな場所なんだ。
よりによって、アムロ、君がいるんだ
…
。」
「あなたの夢なんだろ?」
「
…
そうだ、そうだよ、アムロ。
私は
…
君にそばにいて欲しかった。」
「俺に?」
同志になれ、共にあれ、幾度となく手を伸ばした。
終ぞ、アムロに届くことはなかったが。
「
…
きっと、私は君に
…
…
褒めて欲しかったんだ。」
アムロが、そうか、と呟く。
相変わらず微笑む顔が、愛おしくて、その身に触れたくて、所詮夢であるアムロに手を伸ばす。
「父になって欲しかったんじゃないの?」
「わからない
…
」
「
…
こどもみたいだなぁ
…
。」
「アムロ、私たちがお互いなっていないものがあるよ。」
「んー?きょうだい?」
とぼけたような声だった。
例えば、ブライトに向けるような、ハヤトに向けるような。
少しだけ煙る心を振り払って、絞り出した言葉は、乾いた喉を思い出したように少し掠れていた。
「いいや、君と私がなれるもの。」
穏やかな手つきで、頬を撫でられた。
整えていない髪が、耳に触る。
「
…
なぁに?」
「恋人になりたい」
「うん。」
「君の隣がいい。
君のいちばんになりたい。
君の
…
君が愛する
…
唯一に、」
「ふふ、父じゃダメなんだ。」
ずるずる、とカウチに2人して沈み込む。
男2人を受け止め、少しだけベルベットの絨毯を滑った。
「だめだ。
キスができない」
「父だって、するんじゃない?」
「深いキスがしたい。」
「すけべめ
…
。」
「すけべか?」
「結構ちゃんと男の子だよなぁ。」
「そうだよ。
だから、君のずっとずっと奥に触れたい。
身も心も、全部だ。
私を受け止めて欲しい。はらのなかに、入れて欲しい。」
「ふはっ!!ほら!すけべだ!」
けらけら、と、軽やかな声が部屋に響く。
一度だって、この箱の中で聞いたことがない優しい音だ。
やはり、アムロに触れたかった。
「すきだ、あいしている。きみと、ずっと一緒にいたかったんだ。離れたくなかった。」
「
…
うん。
うん、そうだな。
なれよ、恋人。なったらいい。」
沈み込むままに、抱きしめた。
溶け合うこともわかりあうこともできない、ほんの一瞬の交換。
精神の繋がりとは、体のつながりよりも深く、熱く、そして、恐ろしい。
アムロとララァが至った感応は、どのニュータイプたちよりも高次元にあるものだ。
それこそ、魂を溶かし合うほどの。
シャアでは絶対に至れない。だから余計に恐ろしい。
「ー恐ろしいから、君と恋人になりたい。
私の全部になってほしい。」
「欲張りなんだ。」
「
…
うん。」
こどもみたい。そう言って、また撫でられる感触がした。
「宇宙に揺蕩っていたかった。
目が覚めてしまうと、鼻の奥が鉄錆のニオイに支配されるから。」
「揺蕩って、何かいいことが?」
「君とララァがいてくれる。
幻想でも、夢でも、いてくれるから
…
揺蕩っていたかったんだ
…
。」
うなじを撫でる手が、ふいに止まる。
シャアは、アムロの筋肉で柔い線を描いた胸から、のそりと顔を上げた。
「幻想でもなんでもない。」
「?」
「あなたを愛しているよ。
たぶん、ずっとずっと前からね。」
額が温かくなった。
ハッとして、目を開く。
閉じていた、目を開く。
視界が、白んで輪郭がぼやけた。
ごほり、と一つ咳をした。
「ーアムロ、」
宇宙は、輝いていて美しい。
魂は溶け合わず、わかりあうこともなく、一瞬の交換のまま、二人であるままに。
もう、鉄錆の香りはしなかった。
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