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帰港、くちづけ、また明日
岸から少し離れた場所に停泊する自身の船を見上げた。タラップはとうに仕舞われており、警戒する視線に、「よっ」と、手を振った。壁を一蹴り、二蹴り、すぐに目的の手すりへ手を掛けた。足音を殺して進む深夜の船内、向かう先は決まっている。ざわざわと未だに興奮冷めやらない熱を冷ます場所。心地の良い安らげる部屋へ。辿り着いた先で、音もなくドアを開けた。
寄港中だというのに、不用心に鍵はかかっていなかった。
二段ベッドの下の部分。ぐるっと囲んだカーテンは不審者を妨害するには無意味だ。もしも別の誰かが侵入したら、こいつはどうするのだろう。
「不用心だな」
「
…………ン、おか、えり。ペンギン」
「シャチ、ただいま」
当たり前のように広げられた腕。シャチが毛布を少しだけまくってペンギンを招いた。その身体へ覆い被さる。薄く開いた誘うような唇に口付けて、何度も吸い付く。呼吸を奪うようにしっとりと合わせた。
「おれ以外が侵入したら、どうするつもりだ?」
「
……ペンギン、
……以外、だったら?」
「そうだ。
……………………ッ、!?」
ぼんやりとした焦点が結ばれて細められた瞬間、見下ろしていた視界がぐるりと反転して、気付いたら鋭く光を宿した瞳に見下ろされていた。首へ当てられた腕にぐぐっと体重が乗せられて、挑発的に口の端が上がった。ニタリ、と愉しそうに歯を見せる。
「おれが、誰に、なんだって
……?」
「
……シャチは心配の一つもさせてくれねーなァ。ははっ、頼もしい限りだ」
「毎度毎度、寝込みを襲ってくる男に言われてもな?」
下腹部に跨がるシャチの腰を下心混じりに撫でると、明日はおまえと違って早番だから駄目だと叩き落とされる。触るだけでも良いだろうと食い下がるけれど、それだけでは済まないだろうと一蹴された。それはそうだが。
「それなら、キスだけで我慢するか。二日ぶりのシャチを」
「
……キス、だけな」
しなだれ掛かってくるシャチの身体を抱き止めて、唇をちろりと舐める。シャチの舌が遠慮がちに伸ばされて、戯れるように舌先を合わせた。ゆっくり舌を絡めて、熱を溶かしながら分かち合う。
勝手に漏れてしまうのか、小さく喘ぐような呼吸が腰に響くけれど、移った熱が心地良すぎて瞼が重くなっていく。単独で船を離れていた疲労も相まって、眠気が訪れるのは早かった。まだ触れていたいとシャチの汗ばんだ首筋に吸い付くけれど、優しく頭を撫でられて気が抜ける。
「おつかれ、ペンギン」
「
……もう、すこし」
「ふふっ、めずらしーな。駄々を捏ねるなんて」
おやすみ。おかえり。おつかれさま。
こめかみから額へ、ちゅっちゅっと小さなリップ音が移っていく。くすくすと軽やかに笑うシャチの声が心地良くて、ゆったりと身を委ねながら船を漕ぐ。
きっと、ずっと起きて待っていた。待っていたんだろう。そう、労うつもりが。キスひとつであっという間に溶かされた。
シャチの腕に包まれて、ポカポカした熱に身体を委ねる。
おやすみ。ただいま。会いたかった。
互いにその熱を分け合えば、それ以上言葉はいらなかった。指を絡めて眠りに落ちた。
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