三毛田
2026-05-23 22:31:34
1080文字
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66 【66/忘れたくはないんだ】

66日目
君との絆、愛。口づけした日々

 例えば、もしもの話。
 昔のことを思い出す時が来たとして。
 それのせいで、今の全てを忘れてしまうのならば。
「忘れたくないなぁ」
 この楽しいひと時を、無償の愛を貰った日々を、人を好きになり、恋をして、愛することを知ったことを。
 大切な思い出だから。その一言では済まないことを、知ってしまったから。
「丹恒。キスして」
「お前はまた唐突だな」
 呆れながらも、丹恒はキスをしてくれる。
 少しひんやりとした唇は、考えすぎて噛んでしまった俺の唇をそっと冷やしてくれて。
「お前……
「あ。バレた」
 傷ついていることがバレてしまった。
 冷汗が流れる中、丹恒はジトッとした目でこちらを見た後救急箱を持ってきて。俺の傷ついた唇へ薬を塗る。
「薬が乾くまで、飲食は禁止だ」
「はぁい」
 ここで大人しく言うことを聞かないと、一日中禁止されてしまう。
 キスだってできないのは、死活問題だ。
 寝転がって、大人しくスマホでゲーム。
 しばらくしたら、丹恒が膝枕してくれたので薬のことなど忘れてしまう。
「そろそろいいな」
 優しく唇に触れ、確認して。許可が出たので、水分補給。
「丹恒、優しい」
「嫌なら、もっと雑に扱うが」
「いいえ。今のままでお願いします」
 と告げると、何とも言えない表情。
 それをまた太腿に頭を戻して下から眺める。うん。最高です。
「じゃあ、キスしていい?」
「ああ」
 首に腕を回して上半身を起こし、キス。
 舌をねじ込もうとしたら、結構勢い良く頭を叩かれ。
「痛い」
「舌はやめろ。俺が噛んだらどうする」
「丹恒はそんなことしないだろ?」
「どうだろうな」
 なんて言うけれど、俺に甘くて優しい彼がそんなことをしないことは知っている。
 けど、あまりやりすぎるとのちのち大変なことになるから、軽くキスをするにとどめ。
「次のキスでやめるから、いい?」
 おねだりすれば、頷いて。なので、触れるだけのキス。
 丹恒から欲しがってくれないかな? って思っていたけれど、今日は欲しがってくれないようだ。残念。
「ただ、食事は絡みや酸味が強いものは控えるように、特に飲み物は気をつけろ」
「はーい。ぐえっ」
 急に立ち上がり、俺をソファーに落とす。せめて何か言ってくれ~。
「パムに伝えに行ってくる」
「はーい」
 片手を挙げ、彼を見送る。
 甘やかされているなぁ。うん。幸せ。
 だから、今この時間を、忘れたくない。奪われたくない。
「愛してるよ、丹恒」
 これを愛とは言わない人もいるはず。でも、俺にとってこれは彼への愛なのだ。