ぐるさん
2026-05-22 23:39:25
1210文字
Public
 

5.16 ふみりかワンドロ【先生】

ふみりかワンドロライ(@ fmrk_1draw)さんの2026.5.16 お題をお借りしました

 窓から穏やかに伸びる陽光、すっかり座り慣れてしまった黒いソファ。

 恋人同士になる前からの習慣である本の貸し借りの最中、おもむろにふみやさんが口を開いた。

「理解にとって、先生ってどういう意味?」
「急に何ですか?」
「理解は、時々天彦の事を先生って呼ぶよな?」
「えぇ、まぁ」
「あれ、何か良いなぁって」
……は?」

 相変わらずの考えが読み取りづらい微笑みで、ふみやさんが私にずいっと詰め寄る。

「折角だし、俺の事ふみや先生って呼んでみてよ」
「折角って何が!?」
「まぁまぁまぁ。いいからいいから」
「良くない!」

 私をソファの反対側へと追い詰める胴体をぐいぐいと押しのけ抵抗すると、強引に押し切るのは諦めたのか少しだけ身体が離れていく。

「じゃあどうしたら理解は俺の事、先生って呼んでくれる?理解にとって先生って何?」
「堂々巡りじゃないですか……

 ふみやさんは拗ねたような表情で私をジッと見つめている。

 これはもう、ただの雑談等では無く、理由が分からないなりにきちんと向き合って話をしないと、ふみやさんは引き下がらないだろう。

……私にとって先生とは、自らの専門知識や技能を、他者に教える事が出来る人の事です」
「うん」
「ですから、もしふみやさんが私に先生と呼んで欲しいのであれば、ふみやさんが私に何を教える事が出来るのか説明して下さい」

 ふみやさんと向き合いキッパリと伝えると、彼は手を顎に当てうーんと唸りながら考え始める。

 ふみやさんは私に何を教えてくれるのだろう。やはり、大好きな甘いの物の事だろうか。

 ……そもそも、私に何故先生と呼ばれたいのか、その理由は未だ不明な事が気がかりだが、考えた所で——

「うわっ!?」

 頭の中を駆け巡っていた思考を断ち切る、腰の辺りをを撫でられる感触。

 視線を向ければ、当然そこにはふみやさんの手があった。

「えっ、な、何」

 困惑する私を他所に、厚みのある手のひらがするすると身体を撫でていく。

 腰、胸元、頬——身体の表面に触れているだけと言うにはやけに熱がこもった手つきに、思わず心臓がドクンと跳ねる。

「ふ、ふみや、さん……

 顔を通り過ぎた手が、私の髪をさらりと撫でて、軽く耳にかける。

「こういう事、とか?」
……へ?」
「俺が理解に、教えられる事」

 一瞬、ふみやさんが何を言っているのか分からなかった。

 しかし、何故か私に先生と呼ばれたいふみやさん、それに対してじゃあ何を教えられるのかと尋ねた私、そして先程の熱を孕んだ振る舞い——バラバラだった点と点が繋がった。

 PPPPPPPPP!

「ふみやさんの馬鹿ーーッ!!」

 一連の行為で私が何を想像したか、と言うかさせられたか。

 それは絶対ふみやさんに言わないと密かに決意を固め、改めて笛を握り直した。