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燈 ともしび
2026-05-22 21:59:32
3432文字
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リクエスト⑩:ぎゆさね【繋げて眠る】
リクエストありがとうございました。
現役軸の二人のお話です。
リクエスト内容は一番最後に☺️
一匹ずつは対したことがないのに、群れをなすと途端に面倒なことになる。
「こんのォ、クソッタレがァア!」
それを俺は身を持って体験していた。
『実弥が一番適任だと思ってるんだ。頼むね』
敬愛するお館様にそうまで言われたら何としてでも行かなければ。そんな気持ちで任務を受け、急いで現場に向かえば先に入っていた隊士達に泣きつかれてしまった。
はっきり言って俺は隊士達から恐れられている。まあ、自覚もある。だから普段は用が無い限り向こうから近付いてもこない。
それなのに俺が現着した途端に隊士達のほうから
「風柱様!」
と泣きながら近寄ってきたのだ。
珍しい状況になんだなんだと思いつつ話を聞けば、奴らはもう一週間もこの山にいるのだと言う。
は? 何やってんだ。こいつら無能ばっかりかよ。そんな気持ちを抑えつつ山を登った。そしてすぐに隊士達に謝りたくなった。
野鼠の鬼だなんて聞いてねェぞ、クソッタレが!
一匹ずつは対したことがないのに、群れをなすと途端に面倒なことになる。
なんせ数が多過ぎる。斬っても斬っても次々と湧いて出てくる。これではキリが無い。とにかく隊士達に片っ端から斬らせながら俺は本体を探すことにしたのだが、なんせこいつがまたすばしっこい。
ただでさえ山の中は木が多くて動きが制限されるのに、足元もふかふかな腐葉土だ。力が入りにくくて仕方がない。しかも夜。こちらが圧倒的に不利でしかない。
でも、お館様がこの任務は俺が向いているとおっしゃっていた訳が分かってきた気がする。
元々野良時代、ずっと山に篭っていたから地形に慣れていること。それと数がものを言うような鬼に対しては、物理的に削ぎ落とせる風の呼吸は最適だということだ。それでも奴らの繁殖能力が異様に高いせいで本体を斬るまでに三日もかかってしまったのだが、隊士達に珍しく感謝されたのでまあいい。たまにはこんなのがあっても良い。
隠達に後を任せて山を降りる。すっかり日が昇っていて目に眩しい。
山からすぐのところに藤の花の家があるのだが、負傷している隊士が何人かいるとのことだったのでそちらに譲ることにした。確かもう少し先にもあったと思うのでそのまま歩くことにする。が、流石に三日寝ていないので足が重い。情け無いと思いつつもやはり山道などの不安定な場所での戦いはいつもよりも体力を奪っていく。
次の藤の花の家には必ず寄ろう。そう決めていたのだが、辿り着いた家の主人は俺を見るなり
「あの、実はこちらには既に柱の方がお一人いらっしゃいまして」
なんて困った顔をする。
何故か最近、上位の隊士同士を一緒にしない方が良いと思っている主人が多いのだ。誰が言っているのか。多分不要な騒動を避けるためだと思っているが、今の柱の奴らなら別に誰が居ようと構わないのだが。
「別にいい。どうせ向こうも忙しいだろうしなァ」
俺は今すぐ寝たかった。だから本当にどうでも良かったのだ。
そう言われて安心した主人はやっと俺を部屋へと案内してくれた。
「久しぶりだ」
「テメエかよ」
湯に行く時にすれ違ったのは見慣れた黒髪の男。俺は思わず顔を顰めてしまったが冨岡は嬉しそうにしている。
俺の顔を見た主人は
「あの、お部屋はそれぞれ別で離れておりますので」
なんて慌てて言っていたが
「気遣いをありがとう。でも部屋は同じにしてくれないだろうか。久しぶりに会ったので積もる話がたくさんある」
と、冨岡が言い出したので今度はぽかんとしている。
それはそうだろう。俺の顔はどう見ても再会を歓迎している表情ではなかったから。
大きめのため息を吐き出す。
「あの、そ、え
……
」
困惑。その二文字を顔に大きく貼り付けた主人に俺が折れることにした。
「すまねェなァ、そうしてくれると助かる」
「え、は、はい!」
「ありがとう
……
不死川、また後で」
「ん」
冨岡は湯上がりだったようで軽く手を上げて部屋の方へと歩いて行く。俺はそれに返事のような返事ではないような音を発して湯に向かう。
「あー
……
仲は悪くねェから大丈夫」
一応、主人にもう一度伝えておく。この人の良さそうな主人をあまり困らせるのは、と思って。
「分かりました。お食事もご一緒になさいますか?」
「
……
頼むわ」
そのせいで余計な気まで回されてしまったが。
「呼ばれるまではわたくし共はこちらには立ち寄りませんので、どうぞゆっくりお寛ぎください」
「ありがとう」
湯をもらってさっぱりしたら少しだけ眠気が遠のいたようで腹が鳴る。冨岡が先に入っていた部屋には布団二組と軽めの食事が用意されていた。
「飲むか?」
「
……
貰う」
もう日が昇っているのに呑気に湯に入り酒をいただく。
普通の生活をしていたならずいぶんと爛れた行動だと思う。まァ鬼殺隊ならこれが普通なのだけれど。
冨岡が差し出したのはよく冷えた日本酒だった。三徹した身体にはキツイかとも思ったが、少しくらいなら良いかと手を差し出す。
「わっ!」
差し出した手をそのまま引かれたので、勢いよく冨岡の胸に飛び込む羽目になった。
「テメエなァ」
鍛えられた胸元に鼻から突っ込んだので少し痛い。寝不足で油断し過ぎていた。
けれど文句を言うために開けた唇は冨岡の唇で塞がれてしまう。
注がれたのは、とろりと甘い酒。
「実弥
……
会いたかった」
あと、甘くとろけそうな声。
「うん
……
」
だから、良いかと思ってそのまま力を抜いて冨岡の胸に体重を預けた。
ぎゅっと抱きしめられて頭をぽんぽんと撫でられる。冨岡の長い指で撫でられると気持ち良い。気持ち良過ぎて眠くなる。なんせこちとら三日寝ていない。
「眠そうだ」
耳元でくすくすと笑われる。その声すらも眠気を誘うんだよなァなんて。
「冨岡ァ」
「うん」
「俺は三日寝てねェんだ」
「奇遇だな。俺もだ」
「
……
まじかァ」
なんだよ。せっかく会えたのにお互いボロボロじゃねェかよ。ふふ、と吐息だけで笑う。
冨岡の着ている浴衣の胸元は、さっきから俺が顔や頭を押し付けているから乱れ始めてしまった。
だからか、すごく冨岡の匂いがする。嗅ぎ慣れた、落ち着く匂い。
甘えたくなって頬をぺったり付ける。心臓の音が聞こえる。
生きてる。お互いに。
今日、また生きて会えた。それがとても嬉しい。
「冨岡ァ」
「うん」
「もっと」
「
……
分かった」
もっと、が酒なのか冨岡なのか、本人はちゃんと分かっているらしい。
頬を両手で包まれてからそっと上向きにされる。
「実弥、好きだ」
「うん」
正解。よく出来ました。
そんな気持ちで冨岡の背中に両腕を回してぎゅっと抱きつく。ぴったりと隙間無く。
きっと他の誰かでは駄目で、この安心感と多幸感は冨岡とじゃないと駄目なんだ。
何度も重なる唇が気持ち良い。もっとしたい。うっとりする。
それなのに不埒な手が俺の尻の辺りを揉み始めたからはたき落とした。
「藤の花の家じゃこれ以上しねェってのォ」
「厳しいな」
「当たり前だろ」
視線が合う。冨岡は笑ってるから俺もつられて笑う。なんだか、こそばゆい。
「ならば、これなら良いか?」
冨岡の手が俺の手と繋がる。
「久しぶりなんだ。実弥に触れていたい」
ばーか。ぎゅっと握り返す。
片手が繋がってると飯を食うのが大変だろうがよ。そう思ってもお互い離す気がないのだ。
そのまま用意してもらった食事を終えると冨岡は手を繋いだまま立ち上がった。俺は寝不足だからそのまま大人しく着いていく。
「おいで。一緒に少し寝よう」
「うん」
布団の上で抱きしめられて、転がって。
また、冨岡の腕の中。
普段なら恥ずかしいからこんなことさせない。
でも今日は良いかと思う。
だってお互い寝不足だし、冨岡は甘々で俺は蕩けてる。たまにはこんなのも良いんじゃねェの? 多分。
「起きて元気になったら甘味処でも行くか」
「はーか。気が早いっての」
額を合わせて、くすくす笑い合って。
でもすぐに無言になる。
ああ、でも待って。
眠りに落ちる前に、もう一度。
お互いどちらからとも無く、もう一度、唇を合わせて目を閉じた。
リクエスト: 三徹した任務帰りに偶然(?)藤の花の家で会った二人
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