望月 鏡翠
2026-05-21 09:52:16
918文字
Public 日課
 

#2090 にやりと相棒17

#毎日最低800文字のSSを書く/@tmysmst


 絵葉書の中にはスターが砂浜に描いたのと同じ、この景色の絵もありました。きっとここに缶を埋めたときには、小屋もここにあったのだと思います。
 中身を全部確かめるように、一枚一枚見せてあげました。
 するとスターはぷるぷると震えだしました。下の雨雲からシトシトと降ってくる雨の勢いが増しました。大事なポストカードが濡れてしまわないように、僕は慎重に見せてげないといけませんでした。
 泣いている見たいです。これが宝物であることは疑いようがありません。
 僕たちは、それを元の通り袋に戻しました。スターに持たせてあげたかったのですが、彼って手がありません。持って帰るには鞄が必要です。
 僕は自分が持っていたポシェットを、持たせてあげることにしました。僕の大切なものはポケットや手に持っていたバケツに入れておけば大丈夫です。せっかく見つけた宝物を落としたら大変ですから。
 アメフラシはヌルヌルしていますが、その背中のなみなみのところに、肩紐をかけてあげました。
「落としたら駄目ですよ」
 彼に言い聞かせると、スターは縦に回転しようとしました。駄目です。それだと落ちてしまいます。何回か持たせてあげた直後に落として、ようやくスターは落ち着きました。
 体を振るった程度では落とさないように、体にぐるぐるに巻きつけることで解決したのです。
「これで大丈夫?」
 スターは空高く飛び上がりました。きっと、ずっとそばにいるべき魂の片割れのところに帰るのだと思います。
「帰り道、迷子にならないようにするんだぜ」
 手を降って見送ります。
 スターが見えなくなるまで見送って、僕と相棒は満足げにお互いの顔を見合わせました。
「いいことをしました」
「ま、僕たちならできちゃうんだよねぇ、人助けも」
 これで、僕たちの冒険はおしまいです。
 そろそろ僕たちも家に帰らないといけません。海に長居しすぎて、お父さんもお母さんも心配しているでしょうから。
 もと来た道を戻ろうとしました。海岸沿いに歩いていけばいいのです。
 ですが、戻ったところで、僕たちは気がつきました。
 道が、ないんです。
 飛んで渡ってきた岩は、どこかに消えていました。