かずき
2026-05-21 05:19:40
2251文字
Public
 

反転ドラロナの恋が始まる一歩手前の話

不器用な反ドに恋心を打ち明けられた反ロがもしかしてこういうのが恋なのかな?と考える話


お互いの呼び方に解釈違いが起こるかも
ド→ロナルド君呼び、ロ→ドラルクさん呼び

月が綺麗だから、中庭でお茶しようか。そんな提案を受けてロナルドはドラルクとのささやかなお茶会を楽しんでいた。
「ドラルクさんの目、月に照らされると紅く輝いていてとても綺麗吸い込まれてしまいそうですわ」
「こんな小さな瞳では君のその恵体は収まりきらないだろうね」
その言葉を聞いてロナルドは態とらしく頬を膨らませた。
「まぁ!わたくしの身体ががふっくらしてきたのはドラルクさんの所為ですのに!」
「そういう意味ではないのだけれど、私の所為?」
間近で見つめ合う機会でもなければ、この片目は紅い色彩を放っているのが見えにくい程小さいことを自虐しての言葉だったのに、と困惑しつつ尋ねる。
「ええ、ドラルクさんとのお茶会が楽しくて、ついお菓子を食べすぎてしまって
「それは光栄、私も君に楽しんでほしくて用意しているからね」
「ドラルクさんったら、わたくしを肥えさせてどうなさるおつもり?まるでお菓子の家に棲む魔女のようでしてよ?」
そうして本人曰くいくらか肉付きの良くなった腹部をつまみながら言うがドラルクは一切そんな風には思っていない。むしろ増えるならいくらでも増えるがいいとすら考えて言葉を発する。
「私としては愛せる体積が増えるのでとても嬉しいけれど」
「あ?」
ロナルドは一度自分の耳に入った言葉に驚いて聞き返した。すると、目の前に居るその言葉を発した吸血鬼は微笑みを浮かべながらロナルドをじっと見つめた。
「急にどうなさったの?わたくしをその愛だなんて
「そんなに驚くかい?すまないね、私はあまり感情を表に出すのが得意ではないから。これでも近頃は露骨にアピールしていたつもりだったんだがね」
気づいてはもらえなかったということは脈なしかな、とドラルクは笑う。
考えてみれば心当たりがないわけではない。ロナルドは今日までの彼の様子を思い返した。
最初こそ、こちらの訪問に戸惑っていたように見えたがここ最近は自ら退治に同行したいと申し出ては共に過ごす時間を増やしていたが、それは単に外の世界への好奇心からのことだと思っていた。いつの日だったか退治の最中、背後から敵性吸血鬼に襲い掛かられそうだったのをドラルクが身を挺して庇ってくれたこともあった。しかしそれは自分の鈍臭さを見かねてのことだとネガティブに捉えていた。
「わたくしってばそんなっ、どうしましょう!ドラルクさんのお気持ちに何も気づかなかったなんて
「気にしないでくれ、私は好意的に思っているってだけの話だからね」
元より、気持ちを打ち明けたところで恋人として愛し合う仲になれるなんて考えてはいないドラルクは、何もなかったかのように「冷えてきたね、屋内に戻ろうか」などと訊ねてくるので、ロナルドは気持ちが置き去りにされた気分になってしまう。
「ロナルド君は先に戻っていてくれるかい?すぐに片付けてしまうから」
「わ、わたくしもお手伝いいたします!」
ロナルドが慌ててカップを手に取ると、それは指先から滑り落ち、鋭く耳に刺さるような音を立てて地面に散らばった。
「ロナルド君!怪我はないかい?」
「ああぁ……!なんてことを!ごめんなさい、本当にごめんなさい!」
指を切るといけないからそのままでいい、とのドラルクの言葉がロナルドの耳には届かない。ついさっきまでティーカップだった陶器の破片を拾い始めるとちくりと指先に痛みがはしった。
「あ……
破片に皮膚を貫かれていた。切れた指先から溢れ滴り落ちる赤に目が釘付けになる。
「切れてしまってるじゃないか、すぐに手当をしなくては」
ロナルドはその場で蹲ったまま動かなかった。
ロナルド君?」
「ねぇ、ドラルクさん、わたくしの血を召し上がっていただけませんか?」
突然の言葉にドラルクは困惑し、どう返したものかと思考を巡らせた。
「急にどうしたんだい?退治人である君が自ら血を差し出そうなんて」
「ドラルクさんに愛をお伝えいただいて考えたのですが、わたくしにはまだ恋心が如何なるものかよく分かりません。でも、わたくしも貴方に少なからず好意があることは自覚していて、それはドラルクさんがわたくしに抱く気持ちとは形が違うものかもしれないのですがその
うん、うん、とロナルドの言葉を聞きながらドラルクは先の問いかけの意図を読み取ろうと努める。
「ちょっと照れくさいのですけれどわたくしの血を飲んでいただけたらその血がドラルクさんの一部になれると思い立ってそれはなんだかとても素敵なことのように思えてしまって
思いもよらぬ言葉を耳にしてドラルクは咄嗟に口元を手で覆った。
「とても魅力的な言葉だけれど、君の血を吸ってしまったらもう抑えが効かなくなりそうだ」
「そうですか、そうですよね、まだきちんとお返事もできていない立場で踏み込んだことを言ってしまってあ、この傷は気にしないでくださいませ!幸い出血は治りましたし、職業柄怪我には慣れておりますので!」
「わかった、片付けは私がやるから先に屋敷へ戻っていてくれるかい?」
「えぇ、ではお言葉に甘えて」
失態に続く失態にはしたなく叫び出してしまいたい衝動が駆け巡る中ゆっくりと立ち上がり、一礼をして歩き出した。
その道すがら自分はどうしてあんなことを?自分はどうなりたいの?と思考しながら頬が熱くなるのを感じていた。
そんな背中を見つめながら、私としたことが柄にもなくとドラルクは独り言を漏らした。