ポほ
2026-05-21 00:18:46
1100文字
Public オトメビギナー
 

長生きなの?

第5.1話

 神社からの帰り道。
 辺りはすっかり暗くなっていた。街灯の白い光が、住宅街の道をぼんやり照らしている。
「よかった……帰ってきて」
 樹がぽつりと呟くと、隣をふわふわ漂っていたコン太郎がにやりと笑った。
「なんだ、結局ボクのこと心配してくれるなんて、やっぱ樹っていい子ちゃん♪」
「だから『ちゃん』は余計……
 むっとしながら返す。
(心配してるっていうか、帰ってこないと封印もできないし。って、どのみちお札が折れてるからダメだけど……
 そんなことを考えていると、コン太郎がふいに首を傾げた。
「さっきのお姉さんと何話してたの?」
「お姉さん……? お婆さんじゃないの?」
 するとコン太郎は、心底呆れたような顔をした。
「うわー。樹ってやっぱり男の子なんだね。デリカシーなさすぎ〜。女の子にそういうこと言うの失礼だって分からない?」
「え?」
 思わず間の抜けた声が出る。
(そういえばこの前、宗真のお母さんのことも妙に気に入ってたよな……。確かに綺麗な人だったけど)
 コン太郎は小さく頬を膨らませた。
「ニンゲンってさー、若いうちに死んじゃうの勿体なくない? もっと長生きしたらいいのにねー。そのせいでボク、ロリコンって言われんだよねー、神仲間から」
(神仲間って……嘘くさ。ていうかそんなのがいたとして、どんな会話してんだよ)
……
 樹はじっとコン太郎を見る。
「もしかして、コン太郎って……すごく長生きなの?」
「んー?」
「だから、コン太郎にとっては、さっきのお婆さんも宗真のお母さんも、“年頃の女の子”に見えてる……とか?」
「んー、まあ、そうかな?」
 あっさり肯定された。
「じゃあ、私とか宗真って、コン太郎から見たらどのぐらいなの……?」
「うーん……赤ちゃん?」
「え」
「ていうか、お猿さんとかかな?」
(に、人間ですら……!?)
 樹が衝撃を受けていると、コン太郎はけろっとした顔で続けた。
「さすがに若すぎてなんとも思わないかなー。この前樹の裸見たけどさ、キミらにとっての赤ちゃんのオムツ替えするぐらいの感覚に近いのかな。あ、ボクは人間の赤ちゃん育てたことはないけどね?」
「え……
 樹の足が止まる。
「着替えるとこ、見てたの?」
……
 コン太郎がすっと目を逸らした。
「見てたんだ」
「いや、一回だけだって!」
 その瞬間、樹は鞄から食塩ケースを取り出した。
「待って待って待って!?」
「この変態狐っ!!」
 容赦なく塩を撒き散らす。
「や、やめてよーっ!! しょっぱい! 痛い! 浄化されるー!!」
 夜道に、情けない悲鳴が響き渡った。