にとうさいき
2026-05-20 12:21:34
Public gnsn
 

断片とは別の本体がある妄想

LunaVI時点での妄想。
このあとパンドトにするかピエドトにするか迷ったのでいったん供養。
LunaVIIやって根底が覆ってもこれはこれとして書くという覚悟。

 視点の消失――そして、暗転。
 それが何を意味するのかは、考えるまでもなかった。
――失敗か)
 閉ざしていた目を開けて、彼は小さく息を吐いた。口の端からこぼれた気泡が、ボコボコと音を立てて昇っていく。ひらけた視界はうす明るい緑色に染まり、ガラス越しに見える床はコードと書類にまみれていた。目を凝らさずともわかるほどに、それらは埃を被っている。
 全身のあちこちから繋がったケーブルが四肢の動きを制限し、満たされた溶液により声を発することもできない。ここに置かれた肉体はまさしくザンディクの身体ではあるが、機能しているのは脳と、それと繋がった視神経くらいなものだ。この肉体は、断片ドットーレたちの行動や思考を記録する、情報の集積装置のような役割を持っている。彼がこの場で目を覚ましたのは、久方ぶり――ではなく、初めてのことだった。
 眼球の可動域には限界があったが、可能な限り周囲を見回す。あらゆる設備の稼働状況が、この場から一望できるようになっていた。近くの壁には地域や規模、人員の数に被験体の種類等。実験内容そのものの記載はないものの、どこで何を行なっているのかが一目でわかるように張り出されていた。その一覧の下部に設えられた、各施設の稼働状況を示すランプはそのほとんどが赤く明滅している。おそらくは、スネージナヤパレス内にある『博士』の研究施設の大半が稼働を停止させられたのだろう。ナド・クライでの大規模実験は、ずいぶんと大きな損失を生んでしまったようだ。
 今いるこの設備は研究施設とは切り離されている上に、存在を知っている者も数えるほどしかいない。しかし、この規模で止められているのであれば、他の施設と同じ末路を辿るであろうことは想像に難くない。
(接続可能な……
 草神との取引で中身を失った断片がいくつかあったはずだと、彼は再び目を閉じて、記録を遡る。断片の多くは停止した設備の奥底に眠っているが、一つだけ、確実に手元を離れているものがあった。
 相手がそれを、廃棄していなければの話だが。