meru2408
2026-05-20 00:46:55
10651文字
Public モンギル
 

クラベル(クラウド×ベルナ)

きみとの穏やかな一日





ーーー至福のひと時ーーー:朝
side:ベルナ


「ベルナ
、んー……
「起きてベルナ、朝だよ」
……んん?」

体を揺り動かされ、うっすらと目を覚ます。カーテンからこぼれる朝日が眩しい。

「ん………今何時……?」
「六時半」
「ろくじ……はん……?」

もったりと頭を軽く持ち上げる。体を抱きしめている腕が背中を撫でてくる。

「おはようベルナ。今日はお寝坊さんだな」
……おはよ」

寝坊と聞いてちょっとずつ頭が覚醒する。自分を抱きしめている男と目が合う。ふっと笑われる。

……なによ
「んーん、何でも」

なんだか無性に腹立たしくなり、その間抜けな顔に近づく。

「どうし、……ん、」

その唇に突進すると、ちゅ、と音を立てながらキスをする。

「ん………っ、んぅうっ、」

後頭部に手を回されがっちりホールドされ、挙句の果てには舌を入れられた。

「ん、は……んんっ」

べろりと唇を舐められ、離される。

「ん、ベルナからおはようのキスしてくれたね。嬉しいなぁ

本当に嬉しそうに頬ずりをするクラウド。私ははぁはぁと息を整えてから文句を言う。

……あんたはねちっこい。もうちょっとこう、なんか、優しくできないの?」
「んえぇー?」

嫌そうな声を出すも髪の毛をさらさらと撫でてくれる。

「でもベルナの口の中堪能したいし

変態の極みかこいつは。

「ベルナもベルナでキス受け入れてくれるじゃん。嬉しくてついたくさんやっちゃう」
「ぅ、」

堂々と恥ずかしいことをのたまうクラウド。そりゃだって……それは……あんたが好きで……やってるんだから……
でも絶対にそんなことは言わない。言ったら調子に乗ってまたキスなり触るなりなんなりしてくる。絶対。

……早く着替えるわよ。今日は午後に予定があるんだから」
「えーー?午前は?ベルナも無いよね?」
「無いけど……

今日は午前中は二人とも何もなく、午後は私だけ出かけることになっている。

「じゃあ午前はのんびりしよ。このままで」
「あのねえ、朝ごはん食べなきゃいけないでしょ?着替えもして、掃除もする!」
「じゃあそれが終わったらイチャイチャしよ」
………はぁ

こいつは遊ぶことしか考えないのか。イチャイチャが遊ぶ部類に入っているかどうかは甚だ疑問だけど。

いいけど掃除はちゃんとしてよね!」
「よっっっっっしゃ!!!」
「だからうるさい!」

耳元でデカい声で発狂されるとたまったもんじゃない。思わず耳を塞ぐ。

「あ、」
「何よ」
……ご飯まで、これ、する?」
「は?なにを……ふぁっ、」

何をするのかと聞こうとした時、するりと服の中に手が滑りこんできた。そのまま背中をつーー、と指で撫でられる。
股の間にひざを入れ込まれた。

「んぅ、んっ」
「かわいい。もっとしよっか」
……~~~っ、しない!!」
「あでっ」

調子に乗ったクラウドの背中をバンと叩きその行為を止めさせる。

「またしたくなったんだよなぁ……これ。分かるでしょ?」

私から軽く離れたクラウドは目の前に手を持っていき、あのハンドサインをする。そういうことである。

「バッッッッカ!!!」

その両手をぺいっとベッドに叩きつけた。

「えーーしたい」
「しない!!!」

二人して横になって押し問答している。はたから見たらラブラブなカップルに見えるんだろうか。
というか一昨日それを致したばかりである。そんな短スパンで致していたら体力が持たない。精神も持たない。
この絶倫が。

そんな頻繁にやるもんじゃないでしょうが。あんたは発情期の猿か」
………その言葉なんかいいな」

べちっと頬を叩いてやる。抱きしめかけている腕をぐいと外し、上体を起こす。

「じゃあ今日から猿って呼んであげるわ」
「いや、やっぱいいです、すみませんでした」

慌てるそいつを一瞥してから周りを見渡す。昨日とは違い、まあまあ片付いている。一昨日の夜、致した後の翌日、つまり昨日の朝は目も当てられないくらいの惨状だった。今はもうベッドのシーツもふかふかだし、掛布団はまぁそんなによじれていない。装具が捨て置いてあった床の汚れも綺麗になっていた。宿屋の従業員がしっかり掃除とベッドメイキングをしてくれたのである。
昨日従業員に話すとき本当に、本っ当にどう話せばいいのか分からなかった。
「すみません……ちょっと部屋が汚れてしまってあのいろいろ、………散らかってるんですけど……
……?大丈夫ですよ?しっかり掃除し…………あっ、はい!隅々まで見ておきますね!」
………すみません」
という感じだった。従業員と話している間、私の後ろにいる男は終始バツが悪そうにしていた。
それを見て従業員は察したらしい。しっかりと返事をしてくれた。

「何ぼーっとしてんの?」
………何も。昨日のこと考えてただけ」
「昨日?」

のんきに聞き返す男にかまわずベッドから降り、着替えの準備をする。結局首筋の噛みつき痕はガーゼじゃなく、包帯で対処することにした。包帯もフランシスから多めに貰っておいて良かった。本当に良かった。
でも他の人から見れば何事かと疑われるのは変わらない。
寝間着を脱ぎ、綺麗に畳んで私物の側に置いておく。

「ベルナ
「何よ」
「抱っこしていい?」
「あんたも早く着替えなさい」
「抱っこ」
………着替え終わったらね」

また何をのたまうかと思ったら。全然懲りない男である。というか更に独占欲丸出しになっている。
新しい服に袖を通そうとすると、とん、と音がした。そのまま近づいてくる気配がする。見なくても分かる。
こいつ………

「ちょ、っと」

下着姿のまま後ろから抱きしめられる。こいつには待てがきかないのか。全然犬じゃない。……いやまぁ人間だけど。

「んーいい匂いするなぁ」

すんすんと匂いを嗅がれちょっとくすぐったい。それでも抵抗しないのは……身も心も許しているからである。

「着替えなさいってば」
「もうちょっとだけ……

あまりにしつこいクラウドの腕を掴み、それを口に持っていく。思い切り噛む。

「いだっ!!」
「早く着替えないと別れるわよ」
「えっやだ!!!!!!!します!!!着替えます!!!」

私の冗談も真に受けて慌てて離れ、いそいそと着替えだす。全くもう。
まあ別に怒ってもいないけどね。むしろ……なんだか今の時間は……至福のひと時かもしれない。
朝っぱらからこいつと触れ合えるなんてね。触れ合い過ぎな感じもするけど。





ーーー砂糖過剰摂取警報ーーー:午前
side:ベルナ


「んー」
……
「ベルナぁ
……
「ん、だいすき」
……ぅ」

後ろから抱き込まれ、さっきから耳元で話しかけられている。だから耳は弱いんだってば。普通に話せ。

……なに」
「だいすきー」
……っ、耳元で喋るのやめて」
「やめないー」
「く……、」

こいつは。朝にイチャイチャしようと言われ渋々了承したはいいものの、甘すぎる触れ合いに脳が溶けそうだ。
すんすんと首の後ろを嗅がれる。あのさ、そんなに人の匂い嗅がないでくれるかしら。

……んん、」

太ももを撫でられる。今絶賛床の上で後ろから甘やかされている最中である。

「撫でられるの、好き?」
「ぅく……

囁くように言われ、ぴくりと体が反応する。羽交い絞めにされていて逃げることは許されていない。

「ねえ、好き?」
……ぐ、好きだってば」
「そっかぁ」

甘い甘い声に蕩けそうだ。このままこいつの腕の中で溶けてもいいんじゃないかって思えてくる。
クラウドは私からの言葉を捻りだそうといろいろな方法で探ってくる。今回は甘い声で囁いてくる。
太ももをなぞる大きい手が足の付け根にすべってきた。

「ん……………しないわよ」
「分かってるって。撫でるだけ」

本当に分かってるのかこいつは。付け根まですべった手が今度は下腹部をさすり始める。

……、」
「んー」

私の肩に顔を乗せながら唸る。………ほんとに調子いいこと。

「触るだけ触ってもいい?」
は?どこ………、おいこら」

どこにって言おうとする前に下腹部からもう胸まで手が上がっていた。すりすりと撫でられる。

「やっぱりふわんふわんしてるー。触り心地いいね」
「ん、いいねじゃないわよ」

そう言いながらも相手の好きなようにさせる。こいつの自制心とやらが働くところを見てみようじゃないの。
……あんまり働いてないようだけど。
そう思いつつクラウドの方を見やる。ぱち、と目が合う。優しい瞳で顔を覗かれる。

「どうしたの?ベルナ」
………

私は何も言わず、クラウドの方に体を向けようとする……がいかんせん腕の力が強すぎてなかなか向けられない。というかまた定位置に戻される。

「どこに行こうとしてるの?」

独占欲の強い言葉に呆れながらも返事をする。

「どこにも行こうとしてないわよ。あんたの方を向こうとしてるだけ」
「ふーん?ほんとに?」

私の言葉を信用していないようである。……ちょっと心外。

「ほんとに。だから……そっちを向かせてよ」

そう言うと、間が空きながらもちゃんと振り向かせてくれた。……うーん、でもこの体勢きついわね。

「もぞもぞするなよ。くすぐったいって」

おかしそうにくっくと笑うクラウド。いつも優しくて、心配性で、懲りなくて、……ちょっと意地悪なところがあるけれど。

足。そっち向けてもいい?」
「いいよ」

そういうところが………好きなのよね

真正面に向けていた足を、クラウドの膝に投げ出す。横に。クラウドの手が体全体の向きを変えるのを手助けしてくれる。
……いわゆるお姫様抱っこみたいな感じ。っていうかそれ。

「これなら顔が見えるね。いいじゃん。ベルナもたまには良いことするね」
「たまにはって何よたまにはって」

思わずその頬を抓ってやろうかと思い、手をそこに伸ばしたがやめた。……こんな風に触れ合ってる時に水を差すもんじゃない。

……ん?どうしたの?抓らないの?」

笑いながら伸ばした手に触れられる。さすがにやろうとしてたことが分かったか。

……やめた」
「ふーん?」

クラウドの頬を撫でてみる。そっと手が重なる。それがちょっとこそばゆくて目を逸らしてしまう。

「こっち見てよベルナ」
………ん」
「じゃないとキスするよ?」

私にデメリットをつける言い方をする。でもそれは全然デメリットなんかじゃなくて。

別にすればいいじゃない」

私の可愛くない発言にまた含み笑いをする恋人。頬から手を離すと、触れていた手も離され今度はその手が私の頬に触れる。

「じゃあ自由にさせてもらおっかな」

自由にとまでは言ってない。けれどそうしてもいい気分だったから。
顔を近づけられる。私は相変わらず目を逸らしていたが、そっと目を閉じる。

………ん、」

唇をふに、と押し付けられる。そのままついばむようなキスを何度かされる。

「んぅ、ん……

徐々に口づけられる時間が長くなり、強く唇をかすってはそれに塞がれる。
ぎゅう、と両腕で抱きしめられた。それを合図にかすかに口を開ける。すかさず舌を捻じ込まれた。

「んっ……ふぅ、」

ぬるぬると舌を舐め擦られ、体がぶるりと震える。手をクラウドの背中に回すと嬉しそうに抱きしめる力を強くしてきた。

「んく、んん、」

そうやって深い触れ合いをしばらくして、

「ん………ぷは、はぁ……はぁ……

唇を離され、息を整える。……なんだか最近こいつが優勢になってるみたいでちょっとムカつく。

「ん。美味しかったよ」
「何がよ……
「ベルナの口」
……変態」

相も変わらず恥ずかしいことを言う。じろりと睨むと、心底嬉しそうな顔をする。マゾかあんたは。

「んー」
……、」

再びぎゅっと抱きつかれ、私も背に回す腕に力を込めた。
そうやって甘い甘い触れ合いをして午前中は終わった。




ーーー避暑地をご所望ですか?ーーー:夕方
side:クラウド


「んー

テーブル横の椅子に座り、今後の予定を考えていると、

「はぁーーーー!!あっつーーー!!」
「わ、おかえりベルナ。どうだった?」
「暑かった!!」
「だろうね……

バンッと扉が開かれ、ベルナがカップを片手に帰ってくる。前にベルナから「扉は静かに開けて」と言われていたが、ベルナも人のこと言えてない。

「はぁー……

カップをテーブルに置くなり武器を放り出して床に突っ伏すベルナ。相当疲れたようだ。

「もぉー……なんでこんな暑いのよ……まだ夏じゃないのよ?」
「いや初夏ではあるけど。というかベルナ、寝るならベッドに行けって」
「いいじゃない少しくらい。はぁー床冷たくて気持ちいい
「汚いって。起きて」
「もうさっきは床に座り込んでたじゃない」

ぶすっとした表情で起き上がるベルナ。そんな顔も可愛い。じゃなくて。

「座るだけなのとほっぺを床につけるのとは違うだろ。というかこれコーヒーか?」

テーブルを覗き込みカップの中身を見る。真っ黒な液体がほかほかを湯気を出しながら揺らめいている。ちらりとベルナの方を見ると、汗かいているようでぱたぱたと手で煽っていた。

「そうよ?見れば分かるでしょ」
「あのな

心底不思議そうに返事をされても。しかもこれ温かいやつだし。

「汗かいてると水分が無くなるから水を飲めって言われてるじゃないか。フランシスに」
「別に一杯くらいいいじゃないの」
「ダメ。替えてきて」
「いやよ、飲みたいの。……ってちょっと!」

我儘を言うベルナの制止も聞かずにコーヒーを手に取る。

「これは俺が飲む。ベルナはあれ飲んでて」

サイドチェストに置いてある水を指さし、カップを傾け一口飲む。うん、苦。相変わらずブラックが好きなんだな。

「私の取らないでよ!もう!」

すっくと立ち上がり俺の手からコーヒーを奪い返そうとするベルナ。そんなに我儘言うならまた抱き潰してやろうか。

「ベルナ俺の言うこと聞いて。前に風邪引いたこと忘れたか?」
「うぅー
「そんな顔してもダメ。これは没収。はい水」

再び水の方を指さすと渋々サイドチェストの方へ行く。良かった。これで炎天下で倒れられたら本当に困る。
夏場はもっと暑いんだから。

………ん、飲んだわよ」

俺のところに戻って、ずいっとカップを差し出す。透明なカップには半分まだ残っていた。さっきまでは一杯分あったはずだ。

……全部飲んで」
「コーヒーも飲みたいの!はい交換して!」

ちなみに俺が奪……没収したコーヒーも半分残っている。とても苦いけど心を鬼にする。ベルナのためだ。

「しない。飲まないとまた強引に飲ませるぞ?」

うぐっ、と息を詰まらせるベルナ。お願いだから言うことを聞いてくれ。

………分かったわよ。クラウドのけち」
「けちで結構です」

分かってくれたようだ。再び渋々と水を飲むベルナ。お互い無言。

「ふぅ……

飲み終わったカップをテーブルに置こうとしたベルナの体がーーーぐらついた。

「ぁれ、」

とっさにコーヒーを置き、椅子から立ち上がりベルナの体を支える。

「あ、ありがと……
「ん。……もしかして暑さにやられた?」
「別にただの眩暈よ」

そう言うベルナはそんなに体調が悪い様子ではなかった。が、ベルナの手からカップを取り、念のためベッドに連れて行く。

「大丈夫ったら!」
「はいはい寝ましょうねー」
「もう!」

ぐいぐいと俺を引きはがすベルナ。力はちゃんとあるな。

「ただの眩暈なのにふらふらするんだな?ベルナは」
……ふらふらはするでしょ」
「はい連行ー」
「もう大丈夫だってば!ほら!」

強引に俺の腕をはがし、仁王立ちするその姿勢は威勢のいいベルナらしい。うーん……

……またなんか企んでるんじゃないでしょうね」
「そうだなぁ
「いやよ」
「まだ何も言ってないって」

ベルナの体調が心配だ。この間からベルナに心配しすぎ!とよく怒られているが……そんなに心配性かな、俺。

「こっち来て」
「だから嫌だってば」
……悪い子にはお仕置き、」
「わーかった!分かったわよもぉお!」

半ばヤケクソになって俺についてくる。恋人になってからちょっと優越感がすごい。ベルナが俺の言うことを聞いてくれるようになってきたから。

「ん。座って?」
……何を企んでるのよ」
「座れば分かるよ」

窓の近くまで行き、そこにベルナを座らせ、俺も一緒になって座る。手から冷気を出し、ベルナの方へ向ける。

……あ、そういうこと?」
「そういうこと。これなら別にいいだろ?」
……ん」

大人しく涼んでくれた。外に長時間出ていたのが原因なのか、さっきから大声で言葉の応酬をしていたからなのか、ベルナの顔は赤い。汗もかいている。雰囲気的に熱はなさそうだけど。

んー涼し

目を閉じて気持ちよさそうにしている。さっき暴れなきゃまだ涼しかっただろうに。
しばらく涼ませていると、ふいにベルナが呟いた。

……手だけなの」
「え?」
「手だけなのかって聞いてるの」
……どういうこと?」

ふむ。時々ベルナは主語が抜けた会話をする。ちょっとよく分からないので聞き返してみる。

……

怒られるかと思ったけど何も言われない。ちょっとムスッとした顔でなにか考えている。しばらく待っていると、

「え、ちょ、ベルナ?」

慌てて手の冷気を止める。ベルナが俺にくっついてきた。めちゃくちゃ嬉しい。いやだけど意図が読めない。

「止めないで。っていうかもっと冷気出して」
「えぇ?」

素で抱き返す俺。ベルナの体がちょっと熱い。

……体全体使って涼ませてって言ってるの」
ああ、なるほど」

ようやっと合点が言った。さっきの「手だけ」って言ってたのは、このことだったのか。

「分かった。じゃあもっかい出すね?」
「ん」

体全体からすーっと冷気を出していく。腕の中の恋人はまた気持ちよさそうな顔をしていた。

ベルナ。夏場はちょっと出かけるの、止めない?」
「何言ってるのよ。お金が足りなくなるでしょうが」
「うーんでも
「でもじゃないの。動かないと体がなまるわよ」

ベルナを説得するのは難しい。昔からそうだった。率先して前を歩くのはいつもベルナだった。
……でも今は違う。

……じゃあ、無理だけはするなよ?」
「するわけないでしょ、何言ってるのよ」
「何回も倒れかけたお前が言っても説得力ないからな?」
………

またムスッとした顔をされた。そんな顔をされても可愛いだけだ。そっと前髪をかきわけ、額にキスをする。
特に何も言われず。そのまま額から頬に唇を移動させる。

……ん」

ベルナが目を閉じる。……ああ、この恋人は本当にもう……。頬から口に移動する。

「んぅ、」

そのままぎゅーっと抱きしめ、冷たくて甘いキスを続けていく。なんだかアイスになった気分だ。

「んぁ……

唇を離すと、うっとりとした目のベルナが吐息を漏らす。

「ベルナ、だいぶ涼しくなってきた?」
……うん」

なんかやけに素直だ。それが可愛くて可愛くて頭を撫でてやった。そっと冷気を止める。
目が合う。また仏頂面になるかと思いきや、

……ふふっ」

今日一番の可愛い笑顔が見れた。



まだ半分残ったままのコーヒーは夕食前まで飲まなかった。





ーーー今日はそういう日。ーーー:夜
side:ベルナ


夕食後。11時頃。

「ひーふーみー、」
………

テーブルの上でお金を数える。うーん……もうちょっと食費抑えた方がいいかしら。でもなぁ。

……あー、疲れた」
………

私はペンをテーブルに置き、伸びをする。ちらりと床に座っているそいつに目をやる。真剣に何かを読んでいる。
……本を読んでるなんて珍しいな。

……何か食べたい」

そう呟いて椅子から立ち上がり、自分の私物の方へ向かう。……怖いくらい静かだ。
「えーと……あ、これこれふふ」

手に取ったのはお気に入りのお菓子。やっぱりこの時間ってお腹が空くのよねー。るんるん気分で椅子に戻り、お菓子の包みを開ける。

ぽりぽり。固めのお菓子を食みながらまたテーブルに向かう。数字とまたにらめっこする。

「んー3000と、500ゴールド……、」

しばらく自分の独り言が続く。パタン、と音がした。

「っうーん……

本を読み終わったらしい。伸びをして唸っている。ぽりぽり。

「ベルナ?またなんか食べてる?」
「んー」
「何食べてるの?」
「んー」
……それまだ終わらない?」
「んー」

何か呼び声が聞こえるがいかんせん集中しているので返事がおざなりになる。

「2300ゴールドも使ったの?うーん

ぽりぽり。お菓子を食べながら独り言を言う。

「ベルナ?」
「うんー」
……おいこら」
「あっ、ちょ………ん、っ」

いつの間にか側に来ていたクラウドに紙とペンを取られ、文句を言おうと振り向いた直後に口を塞がれる。

……ん、過集中しない」
「んぁ、っあんたもでしょうが!」

唐突に触れてくるのだからいつもびっくりする。つい声を荒らげてしまった。

「俺はもう終わったからいいの。ベルナは?まだ終わらないの?それ」
……んー、もうすぐ終わるから」
……ベルナー?」
はいはい分かりました!終わります!終わるから手!離して!」

じとーっとした目でぐっと手首を掴んでくるクラウド。うっこのバカ力が。
手を振り払い、奪われた紙とペンをひったくり、いそいそとテーブルの上のカバンにしまう。

ぽりぽり。なんか食べる音がする。クラウドの方を向くと私のお菓子を無断でつまんでいた。

「何食べてんのよ。それ私のなんだけど」
「ひってる」

口に物を入れたまま喋る。行儀が悪い。

さっき何読んでたの?」
「んー、内緒」

ごくりと嚥下した後そう抜かすクラウド。

また言わないつもりなのね?」

じっと睨みつけると、う、とバツが悪そうにしどろもどろになる。さっきの偉そうな態度はどこいったのよ。

……なんていうか……勉強っていうか……、」
「へー、勉強ねえ……?なんの?」
「ぐ、ぅ

今度は目を逸らされる。形勢逆転した。……いつも思うけど、あんた結構お喋りだからね?ちゃんと言いなさいよ。

「その、………これの、勉強だって」

両手を前に持ってきてハンドサインをされる。輪っかを作り人差し指を差し入れる、そういうやつ。
………なんっでこいつはこういう時には恥ずかしがるのよ!!

「あんた……
……ニシキヘビにあったから、借りた」

モンスターの本じゃなかった。てっきりそれの本かと思ってたのに。あのモンスター好きなこいつが。

……一昨日したじゃない。なんで今頃借りるわけ?」
「だって……もっと気持ちよくなってほしいから

目を逸らし続けるクラウド。いったいこの男はどんだけやるつもりなのか。ちょっと顔が青ざめてるかもしれない。それはもうしょうがない。

……あと、」
……あと、何よ」
…………ちょっとしたくなってきた……

どすっ。そいつの腹に軽く拳をついた。

「うっ」
……そんな本読んでるからでしょうが!」
「だってぇ……
「だっても何もない!」

~~~もーーーこいつは!!!恋人になってから振り回されてばっかりである。とんでもないほど不服である。

「うぅ……ベルナぁ……

情けない顔をしながら抱きつく恋人。あんた今したくなってきたって言ったわよね?

……離して。近づかないで」
……だめ?」
……う、く……ダメ!」

耳元で話しかけられ、危うく了承するところだった。やばい。

んんー
離してって言ってるでしょ」

抗議の声を上げられる。……私だってしたくないわけじゃない。
ぎゅうぎゅうと正面から抱きしめられる。……無理に何かをしようとする気配はなかった。

……キスだけならいいわよ」
えっ!?」
「キスだけ!」
「マジで!?」

がばりと上半身を離し、嬉しそうに顔を輝かせるクラウド。ちゃんと私の話聞いてたわよね?

……今日キスばっかりしてない?」
確かに」

唐突に真面目な顔をされて思わず吹きだしてしまった。

……ふっ
なんだよ」
いや、ふふっ、その顔が面白くてっ、」

くふくふ笑い転げてしまう。当の本人は微妙そうな顔をしている。

「えぇ……

一通り笑った後、クラウドの方に向き直る。

「ん、」

唇を突き出すと、ぱっと嬉しそうな顔になり、すぐさま食らいついてきた。

「んぅ……ぅ、ん」

ぬるぬると舐められ、吐息が漏れる。舌を捻じ込まれるのはもう日常茶飯事だ。腰に手が回る。すりすりと撫でられる。

「ふぅ、んっ、……んぁ、っふぁ、」

ゆっくりと唇を離され、ふっと口の中に息がかかる。
じっと睨むと、おかしそうに笑われる。

「こういうのも、好きだろ?」
……好きだけど」

元から好きというより、クラウドがしてくれるから、すき。そんな風に言ったら、多分、また明日動けなくなるんだろうな。

……そろそろ寝る?」
ねる」
「ちゃんと歯磨きしような」
「子供じゃないですから」
「いででで」

完全に子ども扱いするそいつの頬を思い切り抓ってやった。



……残ったお菓子は明日に取っといておこう。