フリンズさんとまだ付き合ってない話

※ファルカさんが居ます

「あれ? 偶然じゃん、こんばんは二人とも」
「おや、こんばんは。奇遇ですね」
「よぉ、一人か?」

 仕事上がりにご飯とお酒を少しずつ――という気分に最適なフラッグシップへ向かうと、見慣れた二人がカウンター席にいた。フリンズとファルカさんだ。約束してないのに知り合いに会えて、ちょっとしたサプライズに楽しい気分になった。
 ファルカさんがグラス片手に私を手招きするので、遠慮なく近寄っていった。すると、自然な動作でフリンズが手を差し伸べてきた。ニコ、と笑うフリンズに目を合わせてから、おや?とは思いつつもそのまま彼の手を取ると、少しだけ強引にフリンズの頭上へと導かれた。……ははぁ、なるほど?

「友達と約束……とかじゃあ無さそうだな?」
「うん、ご飯食べて少しお酒飲もうかなぁって感じで寄り道したところです」
「そうでしたか。でしたらご一緒しませんか?」
……いいの? ファルカさんも良い?」

 フリンズが良くても、ファルカさんにも許可を貰わないとね。実は大事な約束が……とかいう展開も、なくは無いじゃない?
「おう、俺も勿論構わない……んだが」
 そう言ってファルカさんは、少し困った顔をしながら自身の頬をかいた。

……何か困ったことでも、ありました?」
「僕としては、何もないと思いましたが――ファルカさんに何か悩み事が?」
「いや、そうじゃない。そうじゃないんだが……

 何かを言い淀む彼は、なんだか気まずそうにしている。私も含め、この三人はそこそこ仲が良いと思っているのだが。何か言いたいことがあるなら――

「その、な? お前ら、人前でイチャつくのやめて貰えないか」
「えっ?」
……イチャつく、とは?」

 ファルカさんにそう言われて、思わずフリンズと目を合わせる。
 私は、フリンズが頭撫でて欲しそうにしていたから撫でていただけなのだが。そうしているうちに、フリンズはフリンズで、後ろに立っている私の頬に手を伸ばしてきたので大人しく撫でられていただけ。フリンズに撫でられるのは少しくすぐったいけど好きだし……何をそんなに?
 フリンズは首を傾げてるし、私も状況が理解できてなくてキョトンとしてしまった。

……この、無自覚同士がよぉ……

 手にしていたグラスをカウンターにドンっと置いてから、机に突っ伏してしまったファルカさん。その奥では、カウンター内のデミアンさんがうんうん、と頷いていた。

……あれフリンズ、もしかしてヘアオイル変えた? 前よりサラサラな気がする」
「流石ですね、分かりますか? ヴォイニッチ商会に依頼していたフォンテーヌ製の品が届きまして。……もし宜しければ、今度少しお分けしますよ」
「うん、なんか触り心地が前よりも良い気がしたんだ。嬉しい、私も試してみたいかも」

 フリンズのサラサラな蒼髪に指を通しながら、「楽しみだなぁ」と呟くと「では明日にでも」と言うので「分かった。楽しみにしてる」と答える。
「だからよぉ、それなんだよなぁ……
 まだ机に突っ伏したままのファルカさんが、また何か言っているけれど、何だか面白かったのでこれには反応はしないことにした。



『それで、お前らはいつ付き合い始めるんだ?』