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Public まほやく
 

《ワンライ》2026レノBDのカインボイスから(オーカイ)

オエってそういうときの相手の匂いはむしろ好きそうじゃない?という小話。

 赤い髪が束を作って、その先からきらめく滴が落ちる。もうすぐ夏がくるんだなと思った。

「めずらしいな、こんな朝早くにおまえに会うなんて」

 カインの声はほがらかだった。もう少し嫌そうにしてくれたほうが気がまぎれる。こちらは眠れず苛立ったミスラに殺されたあと、ようやく生き返ったところなので。

「最悪だよね」
「ちょうどよかった。おまえに渡したいものがあって」

 声が被さって、オーエンは眉をひそめる。カインはまったく意に介さず、小脇に抱えていた紙袋を示した。

「レノックスから土産を分けてもらったんだ。ほら、あのココナッツのかかっためちゃくちゃ甘い石鹸みたいな菓子」
「コカーダね」

 まるでグロテスク成分を抜いた自分みたいな言い回しをされると、こちらは真面目に答えるしかなくなってしまう。「それそれ」と笑ったカインは、しかし、「あ」と声をあげると差し出した手を引っ込めた。

「なんだよ。渡せよ」
……悪い。適当に持ってきたら、袋が濡れちまった」

 「はあ?」と声をあげる。普段よりも大きな声が出た。カインは「悪かったって!」と、少し気まずそうに頬を……染めている。

「もしかしたら、中まで染みてるかも。ほら、鍛錬終わりにそのままレノックスの部屋に寄って受け取ったから、汗まみれでさ! おまえ、こういうの気にす――
「気にするに決まってるだろ」

 被せ気味に言うと、カインは「だよな」と苦笑した。

「ねえ。前々から思ってたけど、魔法で汗を抑えればいいんじゃないの? おまえって本当に雑」
「汗をかいたあとに水を浴びてすっきりするところまでが鍛錬だろ」

 だろ、じゃない。同意を求められても、まったくわからない。「コカーダのおまえの汗に触れた部分は削ってよこせ」と言ったら、カインが心底めんどうくさそうな声をあげた。



 こっちから、おまえの部屋に行こうと思っていたんだが。
 伝えようとした言葉ごと吸い取られるみたいに、唇を重ねられた。オーエンとはいろんな夜を過ごしたけれど、たまにこういう夜もある。たぶん、すごくいいことがあったか、すごく嫌なことがあったかのどちらかだ。そういう夜には、言葉は必要なくなるので。
 ちゅ、ちゅ、と繰り返し唇を落とされて、ああ、でも、言わないとなぁと思う。オーエンはそういうことを気にするタイプだ。現に、ちょっと前にそれで怒られた。

「あの……っん……まだ、風呂、入ってない……

 口づけの狭間に伝える。妙に恥ずかしくて、頬が熱くなる。別に誰かと抱き合うのは初めてじゃないのに。オーエンとだって、初めてじゃない。

……だから?」

 オーエンは、めんどうくさそうな声を出した。だから? 至近距離すぎて、彼の表情はよくわからない。

……汗臭いかもしれない」

 オーエンはなにも言わずに口づけを再開した。耳裏に鼻先を寄せられて、ますます頬が熱くなる。というか、耳たぶまで熱くなってきた。
 絶対に意地悪でやっている。そうに決まっている。どんなからかいの言葉を囁かれるかと思ったけれど、想像していた愉快そうな声音ではなくて、ぽつん、とした呟きが耳に届いた。

……そんなの、別に気にしない」

 ええ……? 困惑していても、頬に、顎に、唇が落ちてくる。オーエンの基準がよくわからない。よくわからないけれど、なんだか胸の奥がむずむずして落ち着かない気分だ。その気分のまま、つつつ、と首筋を這いだした舌先に、甘く震えている。