望月 鏡翠
2026-05-18 00:39:03
1034文字
Public 日課
 

#2083 にやりと相棒10

#毎日最低800文字のSSを書く/@tmysmst


  僕はそこで出会った誰かの相棒のことが気になって、もう少しだけお話ししてみることにしたんです。でも僕の相棒にも名前がないから、紛らわしいです。だからその子を、心の中でアメフラシくんと呼ぶことにしました。
 アメフラシくんは一人で海にいます。だから僕はまず一番の心配事を聞きました。
「もしかして、君の相棒は海に落っこちたり波に流されたりしちゃったんですか?」
 アメフラシくんは横に揺れました。くるくると。
「違うみたいだよ」
 相棒が彼の言葉を、わかりやすく説明してくれました。
「じゃあ一人でここにきたの」
 今度は上下に揺れました。ふわふわと。
「そうみたいだよ」
 相棒が教えてくれます。
 誰も危ない目に遭っていないなら、一安心です。ではこの相棒は僕と同じように海が珍しくて少し海の様子を見に来たのでしょうか。それにしては何かを楽しんでいるという風もありません。
「もしかして、相棒と逸れちゃったんでしょうか。迷子の相棒という可能性はありませんか」
「そうかもねぇ。でも僕たちって相棒のいる場所は、いつだってはっきりわかるもんなんだよね」
 僕たちは離れたことがないので、わかりません。でも相棒がいうなら、きっとそうなのでしょう。
「わからない子もいるのかもしれません」
「でもあいつは一人でここに来たって聞かれて頷いたんだよぉ。自分の意思でここに来たんだよ」
「なら、なんであんなところでウロウロしているんでしょう。聞いてくれますか?」
 相棒はアメフラシくんのところに飛んで行きました。そして、二人でくるくるしたり、上下に揺れたりして何かを話し込んだあと、ふよふよと戻ってきました。
「駄目だった」
「駄目だった?」
「とっても無口で僕じゃわからない」
 どうやら相棒にだけわかる言葉があるわけではないようなのです。僕の相棒もアメフラシくんのことはあんまりわかっていないみたいでした。こういうときは交番に行くといいのです。
 お巡りさんに任せたら、きっち彼のお家も見つかります。
「大人たちのところに行きますか?」
 僕がそう問いかけると、横にくるくると揺れました。嫌だの意思表示です。どうしてそんなにここに残りたいのでしょう。
「もしかして、君は何が探している?」
 上下にふわふわ揺れました。
「それが見つかるまで帰らないつもりなんですね」
 またふわふわと揺れました。
 僕は相棒と目を見合わせました。それってとっても大変なことです!