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meru2408
2026-05-18 00:15:36
14155文字
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モンギル
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クラベル(クラウド×ベルナ)
太陽の光は強くて甘すぎる
side:ベルナ
「くっ
……
、」
バシャバシャと水しぶきを飛ばし、帰路につく。まさかこんな土砂降りになるなんて
……
ついてない。
今日は曇天の日だったが時々晴れていたため油断していた。服も靴もびしょびしょに濡れ重たくなり、走っている体も重くなってくる。
予定通り依頼や討伐をこなして、報告に帰る途中だ。今日はクラウドはおらず、単独行動で仕事をしていた。
クラウドも他の用事が出来て、一緒に行けなくなったのだ。
「はぁ
…
はぁ
…
!」
ザバザバと桶の水を思いっきりひっくり返したかのような豪雨に舌打ちをしたのはしょうがないと思う。
出来るだけ木の下や建物の下などを通り、早く着けと思いながら走り続けた。
「ふぅ
……
あーもう
……
疲れた
………
けほっけほっ、」
宿屋の屋根の下に着いたときにはもう息絶え絶えでさらにむせてしまった。濡れた服を所々絞っていく。まだ宿屋の外なので、この状態で入るわけにはいかない。さてどうしたものか。
「あっ
…
」
本降りの雨なので聞き取りづらかったが確かに人の声が聞こえた。
「大丈夫ですか?!今タオルをご用意いたしますね!」
宿屋の従業員が窓から顔を出し、こちらを見、慌ててタオルを準備してくれる。なんて運がいいんだ。
「ありがとうございます。助かりました」
タオルを届けに建物の外まで来てくれた。お、かなり大きいタオル。もしかして服とか濡れた量を予測して持ってきてくれたのかしら
…
?さすが宿屋で働いてるだけあるわね
…
観察眼がすごい。
「いえ、それだけでは差し支えますので、お早めにご入浴なされてはいかがかと思います」
「ええそうすることにします。今日のお風呂はいつ頃から?」
そう話しているうちに徐々に雨が止んできて小雨になった。もう
…
止むなら私が走ってる時にしてよ
…
。
空に文句を言ってもしょうがない。ちょっと話し込んで従業員と別れ、タオルでしっかり水気をとる。
「うぅっ
…
寒くなってきた
…
」
戦闘中も土砂降りの中で動いていたので、体力の消耗が激しすぎた。それに加えて長い間雨に打たれて体が冷えたのか寒気を感じた。
「はぁ
……
この間は暑かったのに
…
急に雨なんか降らないでよ
…
」
一人ごちてからやっと全身拭き終わり、館内に入る。廊下を歩くと数人の通行人がぎょっとした表情で話しかけようとしたが、いかんせん疲れが酷いので会釈するだけして自分の部屋に戻った。
幸いなのかそうでないのか、クラウドはまだ戻ってきていなかった。
そういえばあいつは何の用事をしに行ったんだろうか。
…
いや他人の事情に首を突っ込むべきじゃない。
…
他人じゃないけど。
とりあえずさっさと着替えないと。
「えーと、替えの服は
…
っと」
一通り着替えた後は
…
お風呂までまだ時間があるな。おっと、報告を忘れるところだった。ニシキヘビに行かないと。
「あーもうせっかく着替えたのにまた出ないといけないなんて
…
」
まあでも全身びしょびしょなままニシキヘビに行ってそこでクラウドと鉢合わせたりなんかしたらまた騒ぎ出しかねない。
…
しょうがない、さっさと行くか。
ーーーーーーーー
「けほっ、けほ
…
」
「あれ?ベルナ?帰ってたんだ」
「んん、
…
あらおかえり、遅かったのね」
「聞いてよベルナぁ~
…
。隣のじいさんがさあ
……
うわ冷た!!」
「びっくりしたー
…
。急に叫ばないでくれる?」
ニシキヘビに報告して、宿屋へ戻り、30分くらいしてクラウドも戻ってきた
…
が、私を見るや否や抱きつき、そしてばっと離れ大声を上げた。毎度思うけれど忙しい男である。
「ベルナ、なんか肌冷たくない
……
?なんで
…
?いつも暖かいベルナが
…
」
「なんかこそばゆいからその言い方止めてちょうだい
…
。雨に打たれ続けてたらそりゃ体も冷たくなるわよ」
「え、
…
えぇ?!あの豪雨の中依頼してきたの!??」
「だからうるさいってば。しょうがないじゃない。依頼受けたからにはちゃんと遂行しなきゃ」
「いやだからって
…
そういえば髪も濡れてるな
……
このままだと風邪ひくぞ?」
心配そうに私を見るクラウド。心配性なのは懲りないわね
…
。
「すぐお風呂に入るから大丈夫。だから
……
っけほ、」
軽くむせた。なんかさっきからむせるわね。変な匂いとかが充満してるのかしら。
「
……
風邪じゃないか?」
「そうすぐになるわけないでしょ。むせただけ」
「ふーん
…
?」
訝しそうに見られるが、別に体調は悪くないので無視して手元の手帳を見る。
…
明日も予定がある。雨じゃないといいんだけどな
…
。
それ以降はクラウドも特に何も言わず、お風呂の時間までうろうろとしながら私を観察して時間を潰していた。
……
他にやることないのか。
ーーーーーーーー
翌日。
「ん
……
んぅ
…
、」
頭の鈍痛で目が覚める。特に額のあたり。
……
あとなんだか体がだるい
…
。そしてちょっと気持ち悪い
……
。
それでも起きようとベッドに置いた手に力を入れて上半身を起こす。やけに体が重い。
…
重すぎる。
「う
……
」
ぼすりとまたベッドに埋まってしまう。なんなんだこれは。もしかして本当に風邪を引いたとでもいうのか。
「んんー
…
?何ー
…
?」
隣から眠そうな声がする。伸びてきた手が何かを探すようにぽん、ぽんとベッドを叩く。
「おはよう、く
……
」と言いかけて止める。声が出ない。というかカッスカス。
「んん
…
どこ
……
?いたー
…
おはようベルナ
…………
ん?」
探していた手が私の手に行き当たり、握られる。その直後にばっと起き上がって私を見る。
「え、ベルナ
…
?お前なんか
…
熱くない?っていうかめっちゃ真っ赤!」
騒々しい。騒々しすぎるけど文句も出ないくらい声も出ないしだるいし考えることが出来ない。
「んぅ
……
、」
弱々しい声が自分の口から漏れる。隣の奴はあたふたと元気に何かを探している。
…
今日どっか出かけるんだっけ
……
?
「ベルナ!これ!」
「んぇ
……
?」
これと言われても頭を上げることができない。
…
うぅ、気持ち悪い
…
。
私の表情を見てなのか見た感じを察してなのかクラウドの手が腕に伸びる。
「体温計。動けないようだから俺が測るよ?いいね?」
「んー
…
」
返事すらもろくに出来ない。病気をするってこんなにも何も出来ないことなの
……
?
クラウドの手が私の腕を軽く持ち上げ、首あたりから体温計を脇に差し込まれる。先の金属が冷たくてちょっと唸ってしまった。
1分後。ピピッと音が鳴る。
脇から体温計をそっと外される。
「どれどれ
…………
うわっ
……
、マジでか
……
」
何がどううわ、なのか分からない。どうなってるの。
「
……
ベルナ。お前熱が38.7℃あるぞ。やっぱり言った通りじゃないか。風邪引くって」
「んん
…
さんじゅう
……
?なに
……
?」
隣でやんや言われるが考えることも出来ないし喋ってる内容が頭に入ってこない。
「もー
…
ベルナはまた無茶して
……
」
ごそごそ、とんっ。とすとすとす。
…
ジャ
――
、キュッ。そんな音をさせながらクラウドは何かをしていた。
しばらくして戻ってきたクラウドに体勢を整えられる。ゆっくりとした動きで。
「今日と明日は全部休みにしておくからな?分かったか?」
「うんー
…
」
「よしいい子」
今まで目を閉じていたがうっすら目を開けると、隣で何かしていた。
そういえばこいつはなんか用事があるんじゃなかったかしら
……
。
ぽすっ、と額に冷たいものが充てられる。結構な冷たさに「わ
…
」とかなり弱々しい声が漏れた。
「クラウド
……
あなた今日
……
用事
……
、」
「喋らないの。俺も休む。お前の看病するんだから。
……
あ、解熱剤とかあったかな。無かったらフランシスんとこにすぐ行かなきゃ
…
」
「だめよ
……
ちゃんと
……
」
「だから喋るなって。辛いだろ?ちゃんと別の人に相談するから心配するなって」
「んん
…
」
クラウドに優しく窘められ、大人しく口をつぐむ。また目を閉じる。
「あ、あった良かったぁ
……
。よし、あとは
…
」
ベッドの重みが一人分軽くなる。遠くでまた何かしているらしい。
キッチンあたりの方で何かごそごそする音をぼんやりと聞きながら、緩慢とした動きで額の冷たいものに手を触れてみる。
やっぱりタオルだ。タオルを冷水につけ絞って頭に当ててくれたらしい。
それがちょっと嬉しくて
…
泣きそうだ。なんか最近泣きそうになってくることが多いな。なんでだろう。
また目を開け、体を起こそうと重たい上半身を持ち上げる。クラウドばっかり何かしてもらうわけにはいかない。額のタオルが落ちる。
言うことを聞こうとしない体に鞭をうち、足をベッドの下へと降ろす。ふわんふわんと部屋が回り始めた。
「あっ
…
こらベルナ。動くなってば!」
焦ったような声がするのでその方向に行こうと立とうとするも、大きく部屋が回り始め、床にへたり込んでしまった。
あー
……
完全に風邪を引いたらしい。それも結構重症な。
「もー
…
無理するなよ。はい、ベッドに戻る」
早足で私の側に来てそのまま抱き上げると、ベッドに戻される。またふわりと頭にタオルを置かれる。
「んー
……
私も
…
てつ、
…
んぅ」
手伝う、と言おうとすると喋らせないかのように唇を塞がれた。
そしてすぐ離される。
「
……
ん、ベルナ、後で着替えるよ。汗かいてるだろうし」
「んん
……
分かったわよ
……
」
体も言うこと聞かないし、声も思うように出ないし、考えることも出来ない。
……
ここはちゃんとクラウドの言うことに従うべきかな。
いつのまにかクラウドは小さなお盆を持ってベッドの隣にいた。お盆の上には茶碗とカップとスプーンが置いてある。
そのお盆をサイドチェストに置かれる。
「
…
寝かせた手前だけど、体、起こすぞ」
一旦額のタオルを外し、首の後ろあたりに腕を差し込まれ、上半身を起こされる。軽く目が回ったがさっきほどではなかった。
「別に体起こすくらい平気よ
……
」
…
カスカスな弱々しい声では全然平気そうに見えないだろうけど。
「
…
お粥作ったけど食べられそうか?」
「おかゆ
……
?」
そうか、茶碗に入ってるのはお粥だったのか。ぼーっとした頭で頑張って考える。
「そう、お粥。気持ち悪いとかないか?」
「んん
……
今は大丈夫
…
」
「そうか」
短く返事をしながら茶碗とスプーンを手に取るクラウド。さっきまでは若干の気持ち悪さがあったが、しばらく冷たいタオルをあてがわれたおかげなのか、頭の痛みはちょっと引いて、気持ち悪さも治まっていた。
「
…
はい。熱くないように冷ましておいたけど。食べてみて」
「ん
……
、ぁ、」
目の前にお粥が乗ったスプーンが差し出され、口を開ける。そっと口の中に入れられる。丁度いい温度だった。
かるく咀嚼してゆっくり飲み込むと、次のスプーンが差し出される。
しばらく無言でその状況が続いた。
……
なんだか鳥の雛になった気分ね。
「はい、これで終わり。全部食べ切れたな」
「
…
そのくらい食べれるわよ
……
」
最後の一口を貰い、咀嚼して嚥下する。何かしら食べたのが良かったのか、ちょっと意識がはっきりしてきた。
「ん、解熱剤。自分で飲めるか?」
「子供じゃないんだから
……
」
次に錠剤の入った包み紙とカップを手渡される。カップはちゃんと持てたが、包み紙を布団の上に落としてしまい、錠剤が転がった。
……
二つ入っていたらしい。二つだけで良かった。
「
…
やっぱり無理そうだな」
「
……
」
……
体調悪いと手元も狂うのか。ちょっと悔しい感じがして慌てて錠剤を拾おうとするけど、手もだるいため上手く掴めない。
「もー
…
、ベルナ。俺がやるって」
大きい手がそっと私の手を払い、錠剤を拾う。ついでに手のカップも奪われた。
「んぇ
……
?」
ちょっと驚いてクラウドの方を見やると、なんとその口に錠剤を入れるところだった。その後カップに口をつける。
「はぁ
……
?なにを、
……
んぅっ、」
その奇怪な行動を咎めようと口を開きかけると、そのまま開いた口を塞がれた。
「んっ
………
んぐ
……
」
いつの間にか背中に腕を回され体を固定させらている。口の中に水と錠剤がそっと流し込まれた。
やや顔が上向きになっていたため、否応なくごくりと嚥下してしまう。
「ん、
……
ぷは
……
」
「
……
ちゃんと飲めたか?」
口移しした張本人は心配そうに尋ねてくる。
「
……
飲めた」
ちょっと不貞腐れ気味に答えてしまったのはしょうがないと思う。
「あのさ
……
く、口移しなんか
……
風邪が移るじゃないの
……
」
「元気になったベルナに看病してもらうからいい。お前の風邪を治すことが先決だ」
看病する前提かい。そう口を開きかけたがだるいし、喋るのも億劫なのでやめた。
「じゃあ着替え持ってくるから」
「ん
……
」
一旦ベッドから離れ、私の着替えを準備するクラウド。その様子をぼーっと見ているとふいに話しかけられる。
「とりあえず着替え終わったら寝てなよ?しばらくしたらフランシス呼んでくるから」
そう。そういえばまだ朝早いのである。丁度朝食の時間ではあったがフランシスの診療所が開くのはまだ早い時間だ。
「ん。よし着替えるぞ」
「んん
…
」
言われるがままなされるがまま着替えさせられる。いつのまにかクラウドの片手にあるのは温かく濡らしたタオルだった。
「ほら下着も」
「んぇ
……
?」
上の服をはぎ取られ、下着に手を掛けられそうになったところで慌ててその手をどかす。
「じ
…
ぶんで、やるから、
……
後ろ向いてて
…
」
「ダメ。汗拭かなきゃいけないだろ?」
「うぅ
………
」
今自分はとてつもなく恥ずかしいことをされているんじゃないだろうか。浮ついた頭をフル回転させようと頑張ってみる。
「ほらばんざいして」
子供に着替えさせるかのように上のインナーを脱がされる。すーっと冷たい空気が肌をすべった。
首あたりから順に温かいタオルで優しく拭かれる。その手つきが心地よくて思わず目を閉じてされるがままになる。
「あんたって普通に看病も出来るのね
……
」
頭が回ってない状態なので、なんだか素で失礼なことが口から出たような気がするが、当の本人は気にした様子もなく、
「?出来るよ?」
そう言って肩、背中、胸、お腹周りと拭き続けている。
…
こんな、生まれたてみたいな姿なのに、この前みたいに獰猛な目つきじゃなくて真剣な顔して私の体を観察している。
「ほら下も」
「し、下はいい
……
」
「ダメだってば。ちゃんと拭かないと」
下心がないのはとてもありがたいところだが真剣すぎるきらいもあり、困ってしまう。こっちは羞恥心ちゃんとあるんだからね?
「うぐ
……
」
回らない頭とだるさのある体でなんとか下着をそろそろと脱ぐと、しびれを切らしたのか布の端に指をかけられ一気に下着をずらされる。
「ちょ
……
、」
朝のひんやりとした空気が下半身をすべる。脱がされた衣類はまとめてベッド横の床にぽいと置かれ、ベッドの上には新しい服と下着が置かれている。
クラウドは特に何を言うでもなく、足の甲、ふくらはぎ、ふともも、股下と順に拭いていく。
……
今のこいつに下心が無くて本当に良かった。いや無くて当然である。
「寒くない?」
「
……
大丈夫
……
」
温かいタオルのおかげか寒気はそんなにない。体の清拭が全て終わり、次に服を着させられる。まずは下着から。
「自分でやるってば
…
」
「いいから」
拭かれている間、もうずっと頭の痛さと体のだるさと重さと顔の熱さ+羞恥心でどうにかなりそうだった。
実際どうにかなっているのである。もうこの男に全てを委ねるしかないのか。体も思うように動かないし。
下着を足に通され履かされる。次にインナー、服と順に着させられ、てきぱきと手を動かすそいつにはちょっと感心を覚えた。
いつもはっちゃけているこいつが真剣に人の看病しているなんてなかなか見られないからね。しっかり拝んどこう。
「
…
ん、ありがと」
「いいえ、どういたしまして」
嬉しそうに礼に応えるクラウドにちょっと照れる。いつもこいつに振り回されっぱなしである。
「じゃあちゃんと寝ててね。片付けするから」
「
…
ん」
着替えたためか、またくらくらとしだしたので大人しく布団に潜る。目を閉じると、クラウドが出す音だけが聞こえてくる。
そのまま聞いてると、ふわふわと意識が遠のいていった。
ーーーーーーーー
誰かが喋っている声で目を覚ます。ゆらゆらと意識の狭間で女の声が混じる。
「ん
……
?」
「あらぁ起きたのね?体調はどうかしらぁ?ベルナ?」
「フランシス
……
?」
「そう私よ~。今はまだ昼前ね。寝ていて大丈夫よ。起きないで~」
身を起こそうとするとやんわりと体を押されまた寝転がる。
「ベルナ。無理に起きない」
側にいたクラウドにも窘められちょっとムカついた。
「だいぶ楽になったから大丈夫よ。
……
あー
……
」
体を起こした反動なのか寝ていてもくらくらする。思わず頭に手をやる。
「
…
本当に楽になったのか?嘘つくなよ」
ムスッとした表情をされちょっと戸惑う私。なんか朝からクラウドの珍しい表情ばかり見ている気がする。
「ふふふ♡甲斐甲斐しいわねぇ~。見てて飽きないわぁ」
フランシスに茶化されこっちもムスッとなってしまう。
「簡単に検査をしたけど、やっぱり喉も腫れてるし、熱も結構ある。食欲はある?ベルナ」
「んー
……
まあまああるかな
…
」
「なるほどねぇ~
……
。
……
うんうん、明後日までは安静にってところかしらね~」
「
…
え?!明後日
……
?!」
「もちろんよぉ~。他の人に移すわけにはいかないと思うし、何より症状がかなり重いわ。ただの風邪と侮るなかれ、ね?」
「うぅ
……
体がなまる
……
」
「ふふふ、ベルナはいつも溌溂としているものね~」
「
…
体が楽になったら、そこらへんに出るのもダメ
…
?」
「ダメに決まってるだろ。病気なんだぞ?」
ちょっと語気強めにクラウドに窘められる。うー
…
クラウドのけち。
私の表情を見かねてかフランシスが付け足した。
「そうねぇ
…
明後日になったら宿屋の外まではいいかもしれないわねぇ。もちろん、人混みは避けてね?」
「明後日
……
」
「そう。とにかく早く治すことをおすすめするわぁ。あなたのためにも、クラウドのためにも」
「うぅ
……
分かったわ
……
」
しょうがない。クラウドもフランシスも真面目に言ってるんだし。自分が我儘を言ってどうする。
「いい子ねぇ~。うふふ、とりあえず追加分の処方箋はそこに置いておいたからちゃんと飲むのよ~?ベルナは最近無理をしがちだから、クラウドもちゃんと見ていてあげるのよ?」
「もちろん!ちゃんと看病してる!」
元気に応えるクラウドにいささか面食らう。もしかして明後日まで監視するつもりなの
…
?
「じゃあ一旦帰るわね。何かあったらまた呼んでちょうだいな~」
帰り支度を済ませ、フランシスは帰っていった。
「はぁ
……
明後日までベッドの上なんて
……
」
絶望感が押し寄せる。いや別に絶望感っていうほどでもないけど。これじゃあ武器で素振りすることもしばらく出来なさそうね
…
。
「
…
ベルナ?なんか不穏なこと考えてないか?」
「
…
別に考えてない」
こいつはやっぱり心を読むことが出来るみたいだ。ちょっと怖い。
「はぁ
…
もう
…
」
「あっこら起きるなって」
体をゆっくりと起こす。せめて部屋の中でうろうろはさせてほしい。だけどすぐに寝かせようとさせられる。
「体を起こすくらいさせてよ
…
。ほんとにさっきより楽になったんだから」
「
……
」
私を抱きしめたままじとっとした目で睨まれる。
……
うぅ、何を言われるんだか。
「
…
分かったよ。でもまた悪くなったら強制的に寝かすからな?」
「ん
……
ありがと」
とりあえず許してくれるらしい。良かった。
体を起こしたものの、何をするでもなくうろうろと目を泳がせた。
…
まだ抱きしめられている。
「
……
一旦離してくれる?」
「
……
」
離す気はないらしい。うーん困った
…
。ちょっと歩いてみようと思ったんだけど。
「またなんか悪いこと考えてる。歩こうとしてるわけじゃないよね?」
「うっ
……
」
こいつは魔術師か何かか。いかんせん抱きしめられているからもしかすると体の振動で何するのか分かってしまうのかしら。
いや分かってたまるか。
「やっぱり。体を起こすのはいいけど歩くのはダメ。逃げようとしても無駄だからな」
「わかってるわよ
……
」
さすがに逃げることはしないわよこの体で。何を心配してるんだか。
長い抱擁と沈黙が続いた。
「
……
喉乾いてないか」
沈黙を破ったのはクラウド。そういえばもうすぐ昼前なのよね?
「
…
ちょっとだけ」
「ん
……
じゃあ水持ってくる」
そっと体を離されベッドから離れるクラウド。さっき逃げようとしても無駄とか言ってなかった?
早々に前言撤回をする男をじとっとした目で見る。
カップを用意し、水を注ぐ。それだけのことなのに、私のために何かしてくれていることがちょっと
……
いや、かなり嬉しい。
ベッドの側に戻り腰かけて、カップを手渡される。
……
と思ったのだけど。
「え、ちょっと」
すぐには渡してくれず、じっと水の入ったカップを見続けるクラウド。
…
?何よ、なんかゴミでも入ってたのかしら。
「
…
なに?早くちょうだいってば」
「飲ませてやろうか?」
「は?」
じっとカップを見ていたクラウドがおもむろに口を開いた。
………
なんて?
「だから飲ませてやろうかって」
本当にそう言ったらしい。聞きこぼしじゃなかった。
「いや、いいです、自分で飲めます」
思わず敬語になりながらじわりとそいつから距離を取ろうとする。
「でもまたさっきみたいにこぼしたら大変だろ?水だし。飲ませてやるって」
「いや本当に大丈夫だから
……
あっ、」
がしっと片手で腰を抱き寄せられ、自分の口にカップを運び、
「んむっ、ん
……
、」
口移しで水を飲まされる。あぁぁぁ
………
なんでこうなるのよ!
さっきみたいに水を流し込まれ、嚥下する。
「
…
んぅ、ぷは
………
あっ
…
、」
ひとしずく、口の端から液体が伝う。それをいつのまに持ってきたのかタオルで拭かれる。
「
……
いいって言ってるじゃない。私の言葉が分からないのかしら?」
じとりと目をやり軽くそいつの頬を抓った。
「いいや、お前がいいって言っても俺がやりたい。だってキスしたいもん」
傲慢にも程がある。
「あのね
……
、風邪が移るって言ってるでしょ?
……
治るまでキスは禁止」
「やだ。移ったら看病してって言ってるじゃん。ベルナのけち」
絶えない言葉の応酬に参ってしまう。こいつってこんなに我儘だったかしら
…
?
そんなことを考えてるとまたカップを傾けるのを目にしてしまった。
「だから
……
んぅ!」
また口移しされる。腰に回ったがっしりとした手にしっかりと体を固定されていて身動きが出来ない。
……
もうこれはこれでいいかもしれない。風邪が移ったらその時はその時だ。
「ん
……
、」
観念した私は今度は自分から唇を押し付け、甘いであろう水を飲み干す。抱きしめるそいつは嬉しそうな吐息を漏らし、またカップを傾ける。
そうやってカップの水が無くなるまで口移しは続いた。
ーーーーーーーー
「
………
よし」
その後、クラウドは宿屋の主人に呼び出され、部屋の外へ渋々出ていた。私との時間が減るのがとても嫌なんだろう。
その隙に私は大騒ぎ男が帰ってくるまでの間、そろりそろりとベッドの上から降りる。
時刻は昼過ぎになろうとしていた。私はクラウドから簡単な軽食を貰い、クラウドも食堂には行かず、私と同じようなものを一緒になって食べていた。
……
別に気にしないで食堂で食べればいいのに。そう思ったがクラウドの性格上、というか私への凄まじい執着心のため、そんなことは絶対しないのだろう。
「
……
うぅ
…
」
まだ熱は引いておらず(といってもさっき測ったら37.9℃だった)、体のけだるさもあり、立つのがやっとだった。
やっと喋れるようになったのに
…
まだカスカスだけど。
そろそろと歩いてみる。自分でも思うくらいふらふらとした足取りだった。
ちゃんとフランシスに処方された薬も飲んだし
……
というか強引に飲まされた。口移しである。
あいつなんかちょっと変な感じに目覚めちゃってない
…
?最近スケベ度が上がっている気がする。
「あー
…
まだダメか
…
そりゃそうよね
…
」
ふらふらふらふら。頭の痛さと重みが余計に足にのしかかっている。いくら風邪と言えどたった数時間で良くなるものではない。フランシスも言ってたではないか。風邪と侮るなかれ、と。
でも体を少しでも動かしたい私は、ちょっと回復したら軽く運動しないと気が済まない性格だった。
……
クラウドはいつ帰ってくるんだろう。帰ってくるまでにベッドに戻らないと
…
。
そう思いながらも、せめて部屋の中では歩きたかった。
ふらふら。扉のところまで行ったらさっさとベッドに戻ろう。そう思い、なんとか扉の前まで歩く。
……
だんだんまた体が重くなってきた。二人に無理をするなと釘を刺されているのに早々に約束を破ってしまった。
これじゃあクラウドに何も言えないわね
……
。そう考えていた時。ガチャっと音が聞こえて扉が開いた。
「
………
ぁ、」
「
………
」
二人して無言。その後。
「
………
ベルナー
…
?」
クラウドが絶妙なタイミングで帰ってきてしまった。嗚呼
……
神様
……
。
「ぅ、」
「歩くなって言っただろ?なんでここまで来てるんだ?」
にっこりと笑うクラウド。目が笑ってない。怖い。
「ご、ごめん
……
無意識に
……
」
「
……
ベッド」
「はい
……
」
なすすべもなく抱きかかえられ、ベッドに強制連行される。顔を見るのが怖い。
「ちゃんと寝る!」
「
……
うぅ
…
」
「返事!」
「
……
はい」
まるでお母さんだ。いやお父さんか?これじゃ本当に親鳥である。私が雛。
……
いやアホか。
クラウドは「はぁ
…
」とため息をつき、何かごそごそしている。ため息
…
?え?クラウドがため息をつくのって珍しくない?
……
原因は私か。ちょっと困らせてしまっている。
最近形勢逆転することが多くなってきた。とても不服である。
……
恋人になったのが原因かもしれない。
そう考えると納得がいく。恋人になってからクラウドに怒られる日が多くなった。
…
決して嫌ではない。嫌ではないけど。
「私の方がしっかりしてたのに
……
」
ちょっと悔しい思いがある。なんだかクラウドの方がしっかりしたお兄さんみたいな感じになってきて。しかもそれを余すところなく私に注ぎ込んできて。嬉し恥ずかしいやら劣等感やら変な感情がない交ぜになっている。
……
これも調子が悪いからこんなこと思うんだわ。
「なんか言った?」
「
…
何も言ってない」
ムスッと不貞腐れて返事をしてしまったが特に気にされる様子もなく「ふーん?」と言い、またごそごそする。
「
…
何してるの?」
「え?明後日までの予定を変更してるところ」
「え?」
「え?」
二人して聞き返す。明後日?クラウドが?クラウドの予定を?
「
…
あんたはちゃんと予定立てときなさいよ」
「ベルナ、俺とフランシスが言ったこと忘れてないか?明後日まで安静にしてろって。だから俺は明後日までお前の看病するから、予定は全消し!」
「
………
」
そういえばそう言われていた。でも別に明後日まで看病しなくても。そんな考えが顔に出たのかクラウドに釘を刺される。
「俺は何が何でもお前の側にいるからな?」
「わ、分かったわよ
……
」
「よし」
いやいつも側にいるじゃないの
…
。そんな脳内の突っ込みをよそにまたキッチンに立つクラウド。
……
目が合う。にっこりと笑われる。だからその笑顔が怖いんだってば。
「なんで上半身起こしてるんだ?」
私は渋々頭を枕に戻した。
ーーーーーーーー
ことり、と音がする。目が覚めた私はうろりと目を動かす。どのくらい時間が経っただろうか
…
。
「え?もう起きたのか?」
ベッドの横からクラウドの声がした。見てみるとサイドチェストにカップを置いたところで動きが止まったみたいな恰好でこちらを見ている。
「
…
どのくらい時間が経ったの?」
いつの間にか寝ていたらしい。だいぶ寝たような気がするんだけど
…
。
「まだ30分くらいしか経ってないぞ?」
ベッドの隣に椅子が置いてあり、そこに腰かけるクラウド。手には弓とクリーナー。
「そうなの
…
?」
「うん」
そう言いながら愛用の弓を布で磨き始めるクラウド。
「
………
」
「
………
」
ぼーっとその所作を眺める。時折私の方をちらりと見やるもすぐ弓の手入れに集中する。
その顔がなんだか
…
男らしくて、つい、
「
………
好きだな
…
」
「え、?」
「
…
ぁ、」
しまった。口から出てきた。あーどうしよう。どうすれば。
「
…
なんて?」
幸い聞き取れなかったらしい。良かった。
「いや何でもない」
「何が好きって?」
「
……
」
しっかり聞いてるじゃないの!全然よくない!
「何でもないったら
…
」
「ねえ何が好きなの?ベルナ」
手入れの手を止めだんだん意地悪な顔をしてくるクラウド。くっ
……
この男、侮れない。
恥ずかしいったらありゃしない。
……
でも、まだしゃんと回らない頭ではどう返事をすべきか
…
。
どう
……………
、
「
………
あんたが好きなの。一生懸命な顔見てたら
……
そう思ったの!」
顔から火が出そう。現に炎の能力があるから本当に出しかねない。ボヤじゃ済まない。
「
……
、」
ぽかんとした表情をするクラウド。あれ。固まった。
「
…
ちょっと
…
なんか言いなさいよ」
「いや、その、えっと
……
」
だんだんクラウドの顔も赤くなり、どもり始める。二人して照れながらあたふたと落ち着かない。
「ベルナが
……
俺に、好きって言ってくれた
……
」
情けない顔をしだすクラウド。顔は赤いままだったがとても嬉しそうだ。
…
そんな、たった二文字の言葉で。
「
……
分かり切ったこと言わせるんじゃないわよ
……
」
「でも俺はベルナの口からもっと聞きたい!」
「う
………
、」
純粋な目でキラキラとせがむ大の男はまるで大きな子供だ。そんな、目で、見つめられても
…
。
余計に熱が上がりそうで思わずサイドチェストに置かれたカップを手に取り、水を飲んだ。
「あ、」
「んく
………
ぷは、」
一気に飲み干したせいか若干くらくらする。カップを元の場所に置いた直後、
「
…
それ、俺のだけど
…
」
「
………
え」
しまった。また失敗した。なんでこれが自分のだと思ったんだろう。
「あー
…
ごめん、間違えた
…
」
「いや、いいよ。喉乾いてたんだな」
「
……
熱が上がりそうだったのよ」
「えっまた熱上がった?!」
「そう思っただけよ!あんたのせいで!」
カスカスの声で大声を出したからか、喉が痛くなってきた。あーもう
…
疲れた。
「
…
本当に?大丈夫なのか?」
「こうやってちゃんと話せてるのが証拠でしょ?心配しすぎよ
…
全く」
「心配するに越したことはないと思うけど?」
言うようになったわね
……
クラウドのくせに。こいつはそう言いながらまた弓の手入れを再開する。
「ふぅ
………
」
まだ頭の痛みとだるさは抜けていない。熱もまだあるだろう。
……
でも今度は暑い。
布団をはぎ取り、クラウドと反対側のベッド下に足を下ろす。
「今度は何をしようとしてるんだ?」
起き上がることは咎められなかったが、クラウドの方を見るとやっぱりじとりとした目でこちらを見ている。
「暑いの。布団じゃなくてブランケットがいい」
「分かった、俺が取りに行くからベルナは寝てて」
「別に物を取りに行くくらいさせ
……
んんっ?!」
腕を掴まれ、弓を床に置いたクラウドがベッドの上に身を乗り出し強引にキスをしてくる。
「
……
ん、はい。おやすみ」
「
…
うぐぅ
……
」
強制的にまた横にさせられる。
……
こんなのが明後日まで続くのか
……
。
クラウドが私の私物置き場からブランケットを取り出す。この前クラウドから貰った贈り物だ。今はもうお気に入りのものである。
「ん、はい。掛けるよ」
「
……
ありがと」
優しくブランケットを掛けられ、ふわりとした肌触りに思わず頬が緩む。あー
…
やっぱりいいなこのふわふわ。やみつき。
しばらくブランケットのふわふわを楽しんでいると、不意にクラウドと目が合った。
じーーーっと見つめられる。真顔で。
……
怒ったときの笑顔も怖いけど、この真顔もこれはこれで怖い。
「な、なによ
…
」
「いや
……
」
じっと見てくる。じっと。たまらず私はそっぽを向いてしまった。
「気にせずに続けていいよ?」
いや気になるわ!そんな真顔で人を射抜くような視線で見られたら何も出来んわ!
「
…
なんで見てくるのよ。武器の手入れでもしてなさいよ」
「もう終わった」
「
…
あ、そう
…
」
いつの間にか武器はまた部屋の隅に置かれていて、クリーナーも近くに置かれていた。
またベッド側の椅子に座り、なんともなしに見つめてくる。
…
居心地が悪すぎて吐きそう。ここで吐いたらどうしてくれるのよ。
「あ、」
「え
…
何」
唐突に言葉を発したクラウドに反射的に体をびくっとさせてしまった。最近のクラウドは何をするか分かったもんじゃないから体が勝手に防御反応を示す。
「体温測らないと」
「
……
さっき測ったわ」
なんだそのことか、ちょっと一安心。
……
決してなんか期待してるとかじゃないんだからね?
「何℃だった?」
「37.9℃」
「まだ高いな
……
お前よくそんなんで喋れるな?」
「私は人より体の造りが違うのよ。明日になれば完全に下がってるはずだわ」
「いやどうだろ
…………
ん?ベルナ、明日から動こうと思ってないよね?」
「え、
…
いや、別に
……
そんなこと思ってるわけないでしょ」
なんか今日のクラウドは本当に怖い。人の考えを読むし、目が笑ってない笑顔で話すし
…
。
ちらりとその表情を見やると案の定というかなんというかムスッとした顔で見つめられている。
「動こうと思ってたんだな?俺には分かるぞ。
……
明後日からだもんな
……
な?」
「
……
ハイ
…
」
目が笑っていない笑顔でにこりと言われ、私は撃沈した。
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