めい@moca_ba
2026-05-17 17:58:46
3641文字
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俺のモンなんだから勝手に触らせんなよ

髭バソ
うかつぽんこつバソのはなし
※細かいことは気にせずなにも考えずに読んでください!※

 岸壁に船をつけて数時間。もうすぐ日付が変わろうという時間にも関わらず、黒髭の船の同乗者は不在のままだ。
 停泊している港の岸壁は等間隔に街頭が立っているが、光の当たらない場所はすっかり夜の闇に飲まれている。ライダークラスが苦手とする死霊が湧いてくる時間帯だ。
 同乗者であるバーソロミューも遭遇してしまえばひとたまりもないだろう。別に心配をしているわけではないのだが、戻ると言っていた時間を過ぎても一向に姿が見えないのは気にはなる。
 ――調査の最中になにかあったかぁ?
 そろそろ船を降りて探しに行くべきかと考え始めた頃、ふいに船に打ち付ける波の音に紛れてギリッと軋む音が聞こえた。舷側に垂らしていたラダーが揺れて船縁を擦った音だ。
 ぎしっぎしっと縄が軋む音がせり上がってくる。迷いのない一定のリズムのそれから、ラダーを登り慣れている人物だとすぐにわかった。
 そちらのほうに視線をやれば、トン、と軽やかな足音とともにバーソロミューがひらりと甲板に降り立った。
「ただいま」
「おけーり。遅かったじゃん。なんかあやしいのでも見っけた?」
 そう声をかけるが、バーソロミューはちょっと待てとでも言うように手を上げて黒髭を制すと、甲板から身を乗り出して陸に向けて手を振った。
 自分との会話よりも優先したものが気になって背後から覗き込むと、岸壁に呆然と立ち尽くして船を見上げている男を見つけた。一緒にいた相手が突然船に乗り込んだらそうなりもする。
 大方この色男と一発ヤれるとでも思ってほいほいとこんなところまでやってきたのだろう。この港まで続くバイパス道路沿いには、田舎の風景には不釣り合いな中世の城のような建造物や下品なネオンで光る建物がぽつりぽつりと建っていた。
「なによ、遅ぇと思ったら男引っ掛けてたん? 拙者浮気は許さない主義ですが」
「ふふ、嫉妬とはかわいいじゃないか。心配せずとも彼はただのタクシー運転手だよ」
「ホントにぃ? 黒髭様のこと待たせといてモブ優先したじゃん」
「それはすまなかったね。待たせたお詫びに紅茶でも入れてやろう」
 バーソロミューはすでに男のことなどどうでもよくなっているようで、あっさりと甲板から身を引くと船内へと向かって行った。
「あーあ、こんなとこで置き去りとかカワイソ〜」
「この私とドライブデートができたんだ。十分すぎるくらいのご褒美だろう」
 そのセリフに呆れるが、自分の美貌に自信がありすぎるこの男は心からそう思っているのだ。その証拠にもうすでに終わったこととして、ここまで連れてきた男にはすっかり興味をなくしている。
「あんまナメてっとそのうち痛い目にあうんでねーの。モブおじさんは最強って言いますし」
 霊基としては確かに強くはないが、それが対人間となれば別だ。腕っ節にも多少自信が自信あるせいでそのへんの男をひっかけて特異点内を移動するための足代わりにしている。
 特異点の人間たちはこの先関わりのなくなる相手ではあるけれど、都合よく利用しているうちに足元をすくわれるのがオチだ。
「まさか。彼らが私のような高嶺の花に手を出せるわけがないさ」 
「おぬし船長じゃなくて一級フラグ建築士なの?」
「フラグなど立つわけないだろう。本当のことだからね」
 それがフラグだって言ってんの。と言いたいが、機嫌よく紅茶の準備を始めたバーソロミューには言うだけ無駄だ。
「なぁ、それよりも拠点変えないか? 内陸の方にあやしい施設を見つけたんだ。ここからだとさすがに遠すぎる」
「んじゃ朝になったらさっそく行きまつか」
 その前に一発、と目の前の尻に手をかけて揉みしだく。
 拒絶がないのを返事と受け取って、髪に口づけを落としながら肌に指を滑らせた。
 
 中心街にほど近い住宅街に拠点を構えて数日。
 ガレージ付きの一軒家はテレビも見れるしネット環境も整っている。移動手段に車も一台手に入れ、どこにでもすぐに行けるようになった。マスターと合流するまでの仮初の拠点のつもりだったが、思いのほか居心地がいい。
 未だに掴みきれない黒幕の目的と正体を探りながら、黒髭とバーソロミューはそれぞれこの特異点を満喫していた。 
 そんな折、バーソロミューから『迎えに来てくれ』とメッセージが来たのは、もう少しで日付も変わる時間帯だった。 
『今からアニメリアタイするんでむり〜』『てかまだ終電あるっしょ』と連続で送れば、少しの間が空いたあと、位置情報とともに『親切な人に車で駅まで送ってもらっていたはずんだが、明らかに違う方向に向かっていてね。今は知らない場所にいる』と返ってきた。
 ――えぇぇ。いやマジなにやってんのコイツ。
 居場所を示す点は現在地から少し離れた場所で点滅している。地図を拡大しても緑の土地が広がるばかりで建物も少ない。ここから車で一時間弱のところらしいが、どう見ても人気ひとけのない場所だ。
『みうごきできないんだ』
 そのメッセージに無意識にピリついてしまうのを抑える。サーヴァントが人間相手に負けるとは思えないが、モブおじさんは最強なのはこの世の理なのだ。万が一のことはあり得る。
「はぁ〜、特異点の原因と全然関係ないとこで問題起こすのホントやめて〜?」
 自分のものが許可なく汚されでもしたらと思うと腹立たしい。ため息をついて鍵と財布を引っ掴むと、マスターには絶対に言えない手段で手に入れた車を走らせた。
 
 目的の場所は街灯もまばらにしかない田舎道だった。
 その道路脇に不自然に傾いた車が一台ポツンと佇んでいる。逆走状態で運転席側が完全に側溝に落ちており、確かにこれでは「身動き」できない。
 少し離れた場所に車を停め歩いて近づいていくと、車に寄りかかってスマホをいじっていたバーソロミューがぱっと顔を上げた。
「黒髭!」
 安心したような表情と嬉しそうにはずむ声に思わず絆されそうになる。だが、こいつは自業自得すぎる原因でトラブった挙句に呼び付けたのだ。
「んもぉ〜だから言ったじゃん! モブおじは最強なの!」
「まさか私に手を出そうとするなんて思わないだろう……
 油断するなと叱れば、バーソロミューが困ったように眉尻を下げた。自分の容姿の良さを自覚していて自信があるうえ武器にさえしているというのに、変なところで迂闊すぎる。愛想よくされて勘違いする男はゴマンといる。
 それがわかっているだろうに、愛想を振りまくだけ振りまいて、油断するのだから危なっかしい。
 そういう抜けているところも人を惹き付けている理由だろうが、巻き込まれる黒髭にとっては厄介でしかない。
 まぁ多少可愛げがあると思うところもあるにはあるのだが。
「気ィつけなさいよ? 世の中には悪い男もいるんだからね」
「ふふ、大悪党のおまえが言うとおかしいな」
 反省など求めるつもりはないが、自分のポンコツさを棚に上げて無防備に笑うバーソロミューに呆れて、髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜるように乱暴に撫でてやった。
「んで? お迎えきたはいいけどこいつどうすんの?」
 車の運転席ですっかりのびている男を指す。こめかみあたりの青あざはバーソロミューに無遠慮に触れるでもして殴られたのだろう。しばらく目覚めそうにもない。
「あぁ。迷惑料で色々もらったからもう用はないよ」
 ほら、とバーソロミューが握った拳を突き出してきた。促されるまま手のひらを出すと、そこに指輪がいくつか乗せられた。男から拝借したのだろう。こういうさすが海賊と思わせる行動と自然とやっているところは感心するし、黒髭としても気に入っているところのうちのひとつだ。
 暗くてよく見えないが、指輪に埋め込まれている石は周囲のわずかな光を吸い込んでキラキラと輝いている。それなりの価値はありそうだ。
「さ、帰ろう」
 さっさと黒髭の乗ってきた車の助手席に乗り込むバーソロミューに続く。
「ついでだしお清めセックスしちゃう?」
 エンジンをかけながら少し先に見える下品なネオンで光るホテルを指差すと、あからさまに顔をしかめた。
「こんなところでおまえとするほうが穢されるような気もするが」
「ヒドっ」
特異点ここではもうしない。そろそろマスターと合流できるとカルデアから連絡が来たところだからね」
 バーソロミューはため息をついて、シートに身体を預けた。
 カルデアと通信が繋がったということはマスター達がようやくレイシフトしてきたのだろう。下手すれば行為中に通信が来る可能性もあるし、最悪マスターと鉢合わせてしまう。
 仕方なく諦めるが、それはそれとして気に食わないことはある。
「あーそうそう。ポンコツなバーソロにいっこだけ言っとくわ」
「ん? なんだ?」
 手元のスマホに気を取られすっかり気を抜いているバーソロミューの肩を引き寄せ、近づいた耳元に囁いた。
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