kgsg_hirg
2026-05-16 15:42:40
1214文字
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蛙(なんで?・天井)

ワンドロワンライ5/2分

見慣れない天井が起きて早々目に入る一瞬の焦りを感じてバッと身を起こすとどこからかふふ、と笑う吐息が聞こえてきた。そうだったと思い出して力が抜けて後ろに倒れていく。
「なんや二度寝か、今日は観光せんのか?」
「しーまーすぅー……
珍しくお互いの予定が噛み合って遠出をしたわけだが、なんだかんだはしゃいでしまった。それを隣で見守られていたことは少しばかり恥ずかしいが、好きな相手が隣に居るという事実がそれを打ち消す。だってお泊りデートだもの。
「先どこ行くんでしたっけ」
「言うとった神社。足腰の御守りあるんやって」
「へぇ~、なんでもありますね」
「まぁ日本って神様いっぱいおるからな」
きっと彼の祖母用のお土産だろう。聞けば同じ境内に戎さんもお稲荷さんもあるようなのできっちり参っておかなければ。
「ついでやし蛙の御守りも買っとくか」
「カエル?」
けろけろ? けろけろ。
顔を見合わせて鳴いてみせれば同じように鳴いて返ってきた。
「なんで蛙なんです? てかあるんすか?」
「そこそこ大きいとこやしある思う。観光地ってのもあると思うけどなぁ」
「ええ? 観光地やからっすか?」
「観光地やからってわけやないけど言葉遊びみたいなもんや」
言葉遊び、と聞いて蛙蛙と口にする。観光地、蛙。
「俺らも旅行終わったら?」
……帰る」
「無事に帰れるように、の御守りやな」
なんて単純な。それでも彼があるだろうと言われるぐらいには一般的なのかもしれない。
「お揃いで買います?」
何も考えずに何気なくぽつりと彼に問う。
不自然に静かになり、そこであれ? と思って彼の顔を確認すると、彼は目を丸くさせて俺の言葉を飲み込んでいるようだった。
「あ、え、俺なんか変なこと言いました?」
「いや……言うとらん。言うとらんよ」
なんだか彼の動きが鈍い。やはり何かへんなことを言ってしまったのかもしれない、そう思って謝ろうとしたら彼の手がそっと俺の口を塞いだ。
「御守り、お前に買おうと思っとったんや」
「ええ? なんでまた」
「お前出店であちこち行やろ。無事帰ってきてほしい、思て」
旅行関係なく俺のことを心配してのことだということか。それに対してお揃いだなんて、俺も買うなんて言い出すと思っていなかったようだ。確かにあまり御守りなんてもの買わないかもしれない。御守りって返したりするらしいしそこらへんもよくわからないから。
ああ、ならば。
「一緒に買って、また一緒に返しにきて、また買う……?」
なんという永久機関。デートの口実ができてしまった。
天才かもしれないと一人頭の中で自分を誉め散らかしていると彼が笑い始める。
「毎回お揃いにしてくれるんや」
「そらもちろん。俺だって北さんに無事帰ってきてほしいし」
「そうかぁ」
彼がゆるりと笑う。どことなく嬉しそうだ。

その日の帰り道、お互いのスマホには色違いの御守りがぶら下がっていた。