三毛田
2026-05-16 14:08:18
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59 【59/面影を宿す】

59日目
君であって君でないと知っているのに

「言いたいことがあるのなら、口にしてくれ」
「あー……うん、ごめん。他のこと考えてた」
「そうか」
 俺が誤魔化すように告げると、彼は興味をなくしたようにそっぽを向いて。
 再び槍の手入れに戻る。
 同じ道を辿るんだな。とか、あの頃と全然変わってないな。とか。言いたいことは沢山あるのに、いざ本人を前にすると言葉にならなくて。
 俺の大切な人は、俺たちを守るために一人卵の中へと還り。
 当時一緒にいた人たちが皆、眠りについて二度と会えなくってから数百年。
 なのは皆いなくなってから旅の途中である星に降りてから行方不明だし、俺もどうしてここまで生きているのかもよくわかっていない。
 〝彼〟を一人にしたくなかったから、いいけど。
……一緒に寝ないか」
「いい年した大人だろう?」
「大人でも、寂しい時があるんだよ」
 卵から出てきた彼は、知らされていた通り何も覚えておらず。でも、あの瞳に写った自分を見て。
 また恋をした。
 あの頃と比べてしまうことがあり、薄々気づかれているようで、こうして冷たくされる。
「なんじゃ。また喧嘩が?」
「何もしていない」
 パムの声にムスッとした表情。
 抑制されずに育てられ、ナナシビトに憧れて列車に乗ったためか、感情表現があの頃よりも豊かだ。
「それならよい。手が空いたら、下拵えを手伝って欲しいのじゃ」
「もう少しで終わる。お前はどうなんだ」
 二人分の視線が、こちらへと向けられ。
「はいはい。先に行ってるから、ちゃんと来いよ」
「言われなくても」
 頭を撫でて、パムと二人でキッチンへ。
「構いすぎると、嫌われるぞ」
「これでもだいぶ懐いてくれたから、大丈夫」
 答えるけれど、嫌われてたらしばらく立ち直れないな~。って気持ち。
「開拓の方はどうじゃ?」
「航行日誌読んでるだろ」
「心情まではわからん」
 それはまあ、そうだ。
「やっぱり生物には興味があるみたいでさ。自由時間になると、その星特有の生き物の観察してる」
「そうか。楽しそうに過ごしているのなら、よい」
 俺もパムも、昔を知っているからこの会話。
「戦闘面は?」
「問題ないよ。景元や彦卿に訓練をつけてもらっていたみたいだから」
「なるほど」
 とはいえ、よくまあ列車に乗るのを許してくれたよな。白露が龍尊として、羅浮にとどまっているからだろうか?
 一度だけ、飲月の姿になったのを見たことがある。
 本人は見られたっ。って慌ててたなぁ。
 あまり他人に見せないようにしていたのかもしれない。
 まあ、可愛いけど。