三毛田
2026-05-15 20:33:44
1068文字
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58 【58/恋煩い】

58日目
君に恋してるから

「なの〜」
「アンタ。またなにかやったの?」
 泣きながら隣に座ると、作業の手を止めて呆れた顔。
「痛い。苦しい」
「何処かにぶつけた? 丹恒に診て貰えば?」
「そうじゃないんだ」
 鼻をすすりながら答えると、今度はちょっと困ったような表情。
「じゃあ、恋煩い?」
「こいわずらい?」
 初めて聞く言葉に、涙を拭いながら首を傾げる。
「そう。食欲が落ちたとか、気分がふさぎ込んだりとか。心身に不調をきたすもの。って書いてあるよ」
 と、スマホを見せてきて。
 なんだ、自分で知ってることを離してくれたんかと思ったじゃん。
 白い目で見るけれど、彼女は気にしていない。
「多分違う。ご飯食べられないとか、ふさぎ込んでるとかないし。というか、なのから見て俺ってふさぎ込んでる?」
「全然!」
 元気に返されてしまったので、今度は俺がため息。
「ウチよりご飯いっぱい食べてるし、いつも楽しそうに丹恒に突撃してるもん。そのアンタが恋煩いとか、ナイナイ」
 先に恋煩いじゃ? って言ったのは自分だったことも忘れていそうだ。
 まあ、それがなのだからいいけど。
「で、さっき泣いてたのは丹恒に雑にあしらわれたからでしょ?」
「そうだけどさぁ」
「結構アンタに甘い丹恒が、雑にあしらうって珍しいね」
「いや。案外俺のこと雑に扱うぞ?」
 なのは自分が雑にあしらわれていることに、気づいているのだろうか。俺への扱いよりも、ひどいと思うけど。
 女子に対する態度じゃないぞ。って言ったことはある。
『三月はあれくらい雑でいい。急に優しくしたら、それこそもっとうるさくなる』
 煩わしい。と言いながら、作業をしていた。
 そして今日も、俺を雑にあしらいながら作業をしていた。ただ、今日に限っては論文の作業に集中したいからといつも以上に雑に扱われて。
 それで、えぐえぐ泣いていたのだ。
「そういえばそうだったね。で?」
「で? ってなんだよ」
「アンタって丹恒のこと好きでしょ」
「そりゃあ好きだよ」
 優しい時と厳しい時の差はあれど、俺のことを思って色々してくれる相手に惚れるなっていうのが無理だろ。
「そうじゃなくって。恋してるよね?」
 目を爛々と輝かせながら、問いかけてきて。
「そうだったとしても、なのには関係ないじゃん」
 そうだよ。関係ないじゃんか。
 唇を尖らせてみるけれど、彼女は一歩も引かない。
「だって。恋バナとか他の人とじゃできないじゃん?」
「姫子とすればいいじゃん」
「姫子はそういう相手いない感じだし」
 それは確かに。