石を投げてからというものあきれうすとの追いかけっこ鬼ごっこが習慣化してしまいぐったりなへくと〜る、かと言って馬鹿正直に手合わせしてマスタ〜に心配かける(あきれうすが手合わせで済ます信頼0)のはな…と思案したのち「やっと捕まりやがったなヘク…」「提案があるんだけどさ」「あ?」「此処で君の望むことは御法度な訳だ。君がいくらオジサンのこと殺したくてもそれは許されないし、かと言って君はただの喧嘩じゃ気が済まないだろ?」「…何が言いたい」「他の方法で発散できない?それ」
犬に噛まれたと思って尻くらい犠牲にしてやる…一度くらいなら耐えられるだろ…そう考えるへくと〜るは知らなかった…一度どころでは済まないことを…
「ヘクトール」
「……離してくれない」
「シたい」
「…………」
下手を踏んだ。失敗した。
俺に対する怒りや殺意、そして戦闘バカであるが故の欲求不満を一度解消してやれば多少は大人しくなると思ったのだ。その一度だって、逃げ回る俺を相手にムキになっていただけのクソガキにただの男のものでしかない裸体を見せる。そうすれば諸々萎えてお開きになるだろうと楽観的だった。
「ヘクトール」
「離せって」
「いやだ。抱きたい」
「……ハグなら今してるね。気が済んだらとっとと」
「分かってんだろ」
アキレウスの熱い息が耳を擽る。びくりと揺れた身体が強張ると、奴による拘束が更に強固なものになる。捩じ込まれた舌の熱と遮ることのできない水音に思考が曖昧になる。
どうしてこうなったんだろう。
ぼんやりと思い返すのは初めて自分の意思で(当然本意ではない)アキレウスに肌を晒したときのこと。「何やってんだ」「ンなことアンタに求めてねえんだよ」「興醒めだ」きっとそう言ってさっさと退室してくれるだろう。その後あることないこと吹聴されたとしても受け流せばいい。マスターはきっと俺を信じてくれる。……少々思考が飛躍してしまったが、とにかくこの場を乗り切れば勝ちであるのだ。
――安心していた。油断とも言える。
すっかり意識の外に置いた存在が、寝台に飛び込んでくるまでは。
「アンタのナカに俺のチンコぶち込んで、滅茶苦茶にしたい。アンタとセックスしたい」
記憶の中のそれと重なるぎらぎらとした目の色に、あくる朝の疲労感が蘇りため息が出た。なんでそんなに乗り気なんだ。セックス覚えたての童貞か?生前はともかくサーヴァントになってから初めての相手がオジサンだったからなんか変な勘違いしちゃったのか?
「アキレウスくん」
「なんだ」
「今度シミュレーターで手合わせしようか。マスターにはオジサンから説明しておくから」
「!」
一瞬で瞳の輝きが別物に変わる。こうなることを避けるための作戦だったが背に腹は代えられない。この男も快楽に夢中になっていたとはいえ本来望んだ条件の方に飛びつく筈、と本末転倒ではあるが己が身の可愛さにこの状況を脱するための代替案を打ち出した。「ということでさっさと退いてくれたまえ」肩をぐっと押し退ければアキレウスは起き上が……らない。なに?
「なんで退かないのかな」
「なんで退く必要があるんだよ。これからスんのに」
「は?手合わせするならセックスする必要ないだろ」
「あ?デートの約束したらセックスお預けなんて聞いてねえぞ」
「デート!?」
やばい童貞思ってた以上に浮かれてる……チンコに脳が乗っ取られてる……!
大英雄をとんでもない状態にしてしまったことに若干の責任を感じるも、過ぎてしまったことは仕方がない。というかこっちは手合わせの件で妥協してやるのだからあとは自分でなんとかしてほしい。せめてセックスの相手くらい見つけてくれ。
「アキレウスくん。手合わせはオジサンが相手するけど、ならセックスは他の子でいいよね」
「……ア゛?」
「だから、戦えない苛々をセックスで発散してたんだからそれが解消された今俺が君のセックスの相手する必要はないよね、って、言っ……顔怖」
丁寧に説明する俺の何が気に食わないのか、戦争中もかくやと言った顔をしたアキレウスが未だお元気な下半身をグイグイ押しつけながら唇に噛み付いてきた。そういえばコイツ最初からキスするの好きだったな。
「アンタ何も分かってねえんだな」
「なんの、こと」
「俺はいつも言ってる…あー、アンタがトんでるときしか言ってなかったか?」
「ン、む」
「今から教えてやるから、ちゃんと聞いてろよ」
――食べるという表現が正しいほど噛みつかれながら、俺は嫌な予感に背筋を震わせた。
どこを間違えたのか。初めから喧嘩を買っておけばよかったのだろうか。後日マスターに全容をぼかしつつ相談したときには「いや遅かれ早かれだと思うよ……」生温かい笑みを向けられてしまったしいつのまにか背後にいたアキレウス本人からは「アンタと俺があの戦場で相対したときから決まってた。諦めろ」などとふざけた回答を貰った。お前には訊いてないしサーヴァント童貞捨てた影響で頭パーンしただけなのに生前のこと持ち出すのはやめろ。ちょっと馬鹿にしたのが顔に出ていたのか窒息が目的としか思えないキスをされた。マスターはいつのまにか居なくなっていたので私闘云々は忘れて思いきり殴った。無敵貫通スキル欲しい。
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