meru2408
2026-05-15 03:22:47
4039文字
Public モンギル
 

クラベル(クラウド×ベルナ)

堪忍袋の緒が切れる時は地雷を踏んだ時

side:ベルナ




「はぁ………

今日も今日とて一人でため息をつく。最近は依頼が別の人とあることが多く、クラウドとは別行動が多くてなかなか会えないでいた。
会えるとなったら夜、たまに部屋に覗きに来るくらい。それもすぐに「おやすみ」って言って自分の部屋に帰ってしまう。
フランシス曰く、「最近ベルナが忙しそうにしてるから遠慮してるんじゃない?」ということだが

「たまに見かけるあいつは他の人と結構楽し気に話してるのよね……ムカつく」

自分は一言二言会話をするだけで済んでしまうのにとそこまで思ってはたと気が付いた。
いやなんでムカついてんのよ!そんなこと、言ったら……焼きもちやいてるみたいじゃない。

でも実際そうなのだ。見かけたクラウドは親し気にいろんな人と話し込んでいて、すぐに割り込めるような状況じゃないことが多い。

「はぁ……

本日二度目のため息。今日は依頼が少なくて午前で終わってしまったため、昼ご飯までのんびり待っているということなのだが。

「あんまりお腹空かないなぁ………今日もいっか」

そう。食欲が無いのである。この、食べるのが大好きな私が食欲が無いなんてでもしょうがないじゃない、無いものは無いんだもの。
昨日だって一昨日だって、その前の日だって昼食を食べてない。朝は食べた方がいいから食べるけど、夜も食欲が無いことが多い。なので、

「今夜もやめとこうかな……無理に食べて吐いてもいけないしね」

と一人で呟いた。

一応この宿屋には食堂があり、好きなタイミングでご飯が食べられるけど、私は今日も遠慮しておこう。
あと………

「クラウドに会わないようにしたら………この気持ちも無くなるかしら……

この気持ちとは、クラウドに会って話したいという気持ちと、もっと自分を見てほしいという我儘な気持ちのことである。

「鍵かけとこう。クラウドが来ても寝てれば帰ってくと思うし、極力会わないようにすれば

もうこの時だけでだいぶ憔悴しきっているとはあんまり思ってなかった。




ーーー1週間後ーーー


「あら、あらあらまぁまぁ~~」
「げっフランシス
「そんな嫌な顔しないで~?ひどい顔が更にひどくなっちゃうわよ~?」

フランシスの診療所前でばったりと会ってしまった。

「あーー……別に大丈夫だから放っておいてね?」
「そういう人って大概大丈夫じゃないものよ~?くんくん、あなた、ちゃんとご飯食べてないわね?」
「はぁ………
「何か悩みでもあるの~?お姉さんが聞いてあげるわよ~?」
「いいです……ちょっと急いでるから……
「あらまぁ無理は禁物だからねぇ?」
「分かった、善処するわ」

クラウドとなるべく鉢合わせないためにそそくさと逃げる私。なんだか泥棒みたいな感じでかっこ悪いわね
フランシスは相手の匂いを嗅ぐだけで体調とか分かるらしい。現に今も原因を当てられてしまった。

ここ一週間、まともにご飯を食べていない。食堂にもクラウドと鉢合わせするかもしれないから部屋であり合わせの物を食べているくらいだ。ちゃんと鍵もかけてね。
数日くらい、部屋にノックが響き、クラウドの声が聞こえたが無視。本当は声も聞きたいし、心配はしてくれてるんだと思うと嬉しさがこみ上げたが、それ以外はぱったりノックをされなくなった。

やっぱり無視し続けると、人間、飽きてくるわよね……
今も他の依頼で駆けずり回ってる頃だろうし、また村の人にお世話になってるんじゃないかしら。

ここ一か月のことを思い出す。クラウドに告白された日、贈り物を初めて貰った日、コーヒーを一緒に飲んだ日、一緒にお風呂に入った日……どれもが昨日のことのように思い出しては胸が熱くなる。
同時に目の前が歪んできた。ん?なんで……?なんで私は、

泣いてるの………

ぼたぼたと大粒の涙が頬を伝い前が見えなくなる。そういえばどこ歩こうとしてたんだっけ、クラウドと鉢合わせるとまずい。
どこか、身を隠せるところで………泣くのをやめなきゃ。
だけどぼたぼたぼたぼた自分の意志関係なく流れてくる涙にさすがに苛立ちを覚えつつ、ふらふらと歩きだす。
歩き方もふらふらしていてどこかおぼつかない。早く………隠れられる………ところ、に、

急に地面が、近く、

バタッと音がして初めて自分が地面に倒れているのが分かった。こんなところで寝転んでいてはいけない。
最近の不摂生が今仇となって帰ってきて、ちゃんとご飯食べなきゃなぁと今更ながら思った。
なんだか眠くなってくる。寝たら回復するかしら……こんな道の、ど真ん中で…………




……
………
……………

……!!

……………?誰かの叫び声が聞こえる……

…………ベルナ!!

………?もしかして……

「ベルナ!おいしっかりしろ!!なんでこんなところで倒れてるんだよ!」
…………………クラウド……?」
「そうだよ俺だよ!ああ……こんなにやつれて……俺のせいだよな、ごめん
なんでクラウドがここに……
「私が教えたのよ~?まさか私と話した直後に村のはずれで倒れてるなんてぇ……やっぱり顔を見た時に強制的にお注射すれば良かったんだわ~もう~」
「フランシス……
「ほらクラウド、診療所までベルナを運ぶわよ~」
「分かった。ベルナ、辛いだろうけどもうちょっと辛抱してくれな?」
………

ふわりと体が浮くような感覚がする。まだ意識が朦朧としててフランシスとクラウドが何を喋ってるか聞き取りにくい。
でも暖かい腕と体が心地よくて、思わずぎゅっとその体にしがみついた。
クラウドは何も言わずただ私を抱く手に力を込めて、診療所まで運んでくれた。


ーーーーーーーーー


診療所で過ごして三日。

「はい、あーん」
「いいってば!自分で食べられるから!」
「ダメだ。こんなにやつれてる奴が自分で食べられるわけないだろ」
「うぅ……あー

一日目からこのやりとりだから困る。ちゃんと手も動くのにクラウドは心配性すぎる。
そんなことを言ったら「何日もろくに食べてない恋人を心配するのは悪いこと?」と逆に聞かれ言葉に詰まってしまった。

診療所に運ばれてから点滴を打たれ、おかゆ三昧。正直肉とかの方が良かったんだけど、すきっ腹にそんな贅沢させたら胃がびっくりしちゃう♡とかフランシスに言われて食べさせてもらえなかった。
寝ようとすると今度はクラウドが「寝るんだよな?!気絶じゃないんだよな?!??」って大げさに騒ぐからもう大変だった。

「ふぅ……まだなんか食べたいんだけど」
「一週間ろくに食べてない奴が言うセリフじゃないだろ
「だってなんか食欲回復したみたいだし」
「そうなのか?」
「うん………多分、……クラウドのおかげで」
「えっ」
「食欲不振になったものクラウドのせいだけどね」
「えぇ

なんか病気になってもこいつに振り回されっぱなしで困る。振り回されない方法ってあるのだろうか。

「その……さ、ベルナ……
「ん?何?」
「ごめん……最近忙しくて
「あぁ……別に……いいけど」
「よくないよ!お前も忙しそうだったから声かけづらかったんだけど、本当は会いたかったんだよ!無理にでも!でも部屋に行っても音沙汰無いしさ、もう寝てるんじゃないかって疲れてそうだからそっとしとこうと思ってたんだそれが食欲不振で倒れてるなんて!」
………

最後のは捉えようによってはちょっと勘違い起こす人がいるかもしれない。

「だから頑張って探してたんだ、いつもの食堂には全然いないし、村の人たちに聞いても一人で依頼こなしに行ったとかで
「そ、そうだったの……探してたの?私のこと」
「当たり前じゃん!なんで恋人になったと思ってるんだよぉ!」
「ちょ、声大きいってば!」

慌ててクラウドの口を塞ごうとするが時すでに遅し。そんな恋人宣言を公の前でされても困る。非常に困る。

「その……クラウドはてっきり、私に飽きたんだと思ってたわ」
「はぁ?!おまっ、」
「待って聞いて!それであんたは最近いつも村の人たちといろいろ喋ってるから……その……あんまり私と話をしなくなったのも……。だから、邪魔にならないように避けてたの
………
「でもそれを聞いてちょっと安心したわまだ飽きられてないって。そう思えたか…………、」

ほっとしたというのもあるが、心配性な彼氏を宥めようという気持ちで顔を上げたら、…………またそんな顔をする。
というかこれは完全に怒っている。え?私なんか間違えた?あの優しいクラウドを、私、怒らせちゃっ、

……ベルナはまだ俺の愛情が全然伝わってなかったみたいだね」
「ひ……

暗い笑顔で淡々と喋るその表情が怖すぎる。優しい人がキレると怖いって本当だったのねいやそんなことはどうでもよくて。

「ご、ごめんなさいクラウド……別にそんな、伝わってないわけじゃ、」
「いいや、伝わってないね。飽きたって何。まだ飽きられてないって何。俺がそんなすぐに興味失う男だと、そう思ってたの?ベルナは」
「い、いや…………ふぁっ、」
「とりあえず今は許してあげるけど、完全に治ったら、するからね、お仕置き」
「ひっ!」

私の両手をぎりりと握りしめ、そんな残酷なことをのたまう彼氏。

「あ……、ほんとにごめんなさ、」
「今は許してあげるって言ってるよ?だからそんなに怯えないでくれ……な?」
「うぅ………

にっこりと笑うクラウドだったけど全然目が笑ってない。怖い。すごく怖い。今まで見た中で一番怖い。
なんなら対峙したモンスター達よりもタチが悪い。


私が処刑(お仕置き)されるまであと何日あるだろう………