meru2408
2026-05-13 23:42:05
4167文字
Public モンギル
 

クラベル(クラウド×ベルナ)

結局飲み終わったの?

side:ベルナ



いつもより早めに依頼がこなせたので夕方には終わり、のんびりと過ごしていた。一緒に行動していたクラウドは、先にモンスターギラーズのニシキヘビに報告に行っている。

「うーん………なんか飲みたい」

宿屋の一室でのんびりしていたわけだけどさすがに動き疲れたら喉も乾くわよね。

「んー今日はコーヒーにしようかしら」

コーヒーはむしろ水分補給にならない飲み物だけど、また後で水も飲むし、いっか。
宿屋の主人にコーヒーを頼むとそのままベッドに突っ伏した。
あーこのまま寝ちゃいそう。いやダメダメ、まだ予定の確認もしなきゃなんだから。
頑張って起き上がり、ベッドに腰かけた状態で手帳を取る。
数分くらい手帳とにらめっこをしていると、「おーい、開けて
と、クラウドの声が扉の向こうからかかる。
は?自分で開けなさいよ子供じゃあるまいしと思いながらもなんだかんだクラウドに甘い私は重い腰を上げて歩き、扉を開ける。
すると両手が塞がったクラウドがいた。

「ありがとうベルナ、はいこれ」
「えっあぁありがと」

さっき頼んだコーヒーだ。でもどうしてクラウドが?

「今さっき宿屋の主人と少し話してたんだよ。それでついでにベルナのコーヒーを持って行ってくれ、だってさ。あとついでのついでに俺の分も頼んできた」
「ああそういうことだったの」

半分納得しかけたが、いや、主人も主人で横着な人なのね。宿のお客に運ばせるなんてと呆れていたが、
当の本人は気にすることもない様子でつかつかと部屋に入り、当たり前かのように一つしかない椅子に座る。

「あのね、ここで飲む気なの?」
「え?そうだけど」
「はぁ……

最近は私の部屋に入り浸る日が多くなった。この前、自分の墓穴で告白を受けてから否応なしに、その、恋人になってしまい、私のパーソナルスペースにやたら入りたがるこの男をどうすればいいか分からなくなってきている。
仕方なくベッドの端に腰かけてコーヒーを飲む。………………なんかずっと見てくるんだけど。

……何よ、飲みにくいんだけど」
「え、いや、うん………

ぼーっとカップ片手にじっと見られていると落ち着かない。思わずクラウドとは別の方向を向いてコーヒーを飲む。

「え、なんで向こう向くんだよ」
「いやあんたがじっと見てくるから落ち着かないの、じっとしてて頂戴」
「じっとしてるけど?」
………

なんかあまりにも見られすぎて頬がどんどん熱くなっていくのが分かる。でもその熱さを見られたくない。
というか変な会話になってきてない?あーあっつ。
手でぱたぱたと仰いでいると、なんと椅子に座っていた男はおもむろに立ち上がり、ベッドに腰かけた。
私の隣に座って。

「えっ何何何?!」
「いやそんなにびっくりされるとは」
「びっくりするわよ!なんでこっちに来たのよ。椅子が空いたじゃない!」

慌てて立ち、椅子の方に行こうとするとぐっとお腹の方まで片手を巻き付けられベッドに戻される。

「ダメ。ここにいるの」
「なんっ………危ないじゃない!コーヒーがこぼれる!」
「ベルナ、いつも思うけど声が大きいって。しー!」
「うぐぅ………

常識人なのか分からない人に常識を説かれるとなんかちょっとムカつく。

………じゃあじっと見てないで自分の飲みなさいよ。あんたも疲れてるんでしょ」
「うん、分かった」

本当に分かってるのか分かってないのにうんって言ってるのか私にも分からない。
本当、最近のクラウドは分からない。………やっぱり見てくるし。

もうさっきからなんなの?何か気になることでもあるの?」
「うん」

素直に返事するのはいいことだけどその後が怖い。この間は身をもって知った。

「それってブラック?」
「えっ、ああ、うん、そうだけど?」
「ふーん

なんとも拍子抜けな質問が返ってきたので拍子抜けな返事をしてしまった。

「それ、飲んでみてもいい?」
「は?」
「そのベルナが飲んでる”ブラック”、飲んでみる」

「ブラック」という言葉を強調しながら言うこいつは今度は一体何を企んでるのか。
あ、ははーんそういうことね。

「いいけど
「やった!じゃあ俺の飲んでいいから!はい交換」

なされるがままにカップを交換し一口飲む。クラウドも口をつけると、

「あっっっっま!!」
「にっっっっが!!」

2人して大げさに転げまわっているが本当のことである。クラウドの飲んでいるものは甘すぎる。
逆に私の飲んでいるコーヒーは苦い。それはそうだ、砂糖も何も入ってないんだから。

「やっぱり苦いはい終了」
「こっちは甘すぎるわよ何飲んで、いや言わなくていい分かった」
「ココアだけど?」
「いや分かったって」

交換終了とともに自分のカップが返ってくる。それと同時に耳に囁くように、

「間接キスありがとう、ベルナ」

思いっきり片手を振り上げた直後にはもう隣にはいなくて、さっき座っていた椅子に座りかけるところだった。

「あんたねえ!」
「何?どうしたの?」

何でもないような顔して……こいつは……

「もう!………久しぶりの交換は楽しかったかしら?」
「もちろん!苦かったけど」

さっきクラウドが企んでいたものはこれだった。お互いの好きな物を交換して食べたり着たりしてみよう、なんて。昔小さいころによくやってたわね。
服は……クラウドのはいつもぶかぶかだったけど。
というか間接キスって何よ!コーヒーの美味しさも知らないお子ちゃまに!
あ、そうか、お子ちゃまなんだな。
そう考えた瞬間、頭に余計なことがよぎる。余計なのだからしなくていいのに。
この後大惨事が起こることも考えずに。

………なんかものすごく失礼なこと考えてない?」
「えー?クラウドはお子ちゃま舌だなって思ってただけよ」

つん、と口を尖らせ、残りのコーヒーを一気に飲み干す。

カタン、と音がした。その方向、つまりクラウドがいる方向に目を向けようと思った瞬間、目の前に大きな影。
それがクラウドだと思うまでに3秒くらい時間を費やした。

え?」

肩を押され、為すすべもなくベッドの上に転がされる。飲みきったコーヒーのカップが床に転がる音がした。

「お子ちゃま舌って、本当にそう思う?」

静かな声が響く。基本的にクラウドは穏やかな性格だから滅多に怒ることはないんだけど、今のは、

「確かめてみようか?」

お、怒ってる………?!

「えっと、ごめんクラウド
「え?怒ってないよ、別に」

いや怒ってるじゃない?!というか体全身使ってのしかかってくるんだけど!

「本当に怒ってるわけじゃないって。だからベルナ、そんなに怖がらないでよ

人の体にのしかかっておいて何をのたまってるんだか!しゅんとした表情に思わず手を伸ばし、クラウドの頭を撫でてしまった。存外、さらさら。
いやそんなことを考えてる場合じゃない!ほらー!嬉しそうに手にすり寄ってるんじゃないの!
……ん?嬉しそう?

「もっとベルナのこと知りたい。そう思うのは俺だけ?」
………昔っから知ってる仲じゃないの
「そうじゃなくて。可愛いところも気持ちいいところもこうしたら嬉しいとか、どうしてほしいのかも。言ってほしい」
………っ」

人のパーソナルスペースにずかずかと踏み込むのはこういうことだったのか。
……私だって……そんな想いが無いわけじゃ、ない。

「じゃあ、今どいてほしい」
「それは無理なお願いかな」
「結局ダメなんじゃない!どうしてほしいか言ってほしいなんて言って!」
「いや、今のは違くて」
「え?」
「今は………お子ちゃま舌ではないってことを、分かってほしいだけ」
「は?いやあんたは……んっ」

のしかかられて身動きが出来ないうえに両手を片手だけで拘束されて、尚且つ両足の間に腰を据えられて足が半開きになっている。そして口付けられている。こんなところ誰かに見られたら発火どころの騒ぎじゃない。
というかたまったもんじゃない。

「んぅ、んん」

でもなんだか頭がぼーっとしてくるような感じがする。このまま蕩けるような時間がずっとあったらいいのに。
と、思うところで口を離された。

「ぷぁ、んんはぁはぁこんなの、」
「どう?お子ちゃまじゃないでしょ?」
「なんであんたはそんなに余裕なのよ……

余裕綽々で困る。というか私ののんびりタイムはどこいった?

「いや別に……余裕ではないけど」

照れくさそうにそっぽ向くクラウド。そういうところが、……あーーもう!

「もうどきなさい、よっ!」
「わっ、とと、ちょっと待て落ち着けって」
「落ち着いてるわよ!もう!」

思いっきり足を折り曲げ、鳩尾にヒットさせようと力を入れるがやんわりと足を絡ませられる。
は?なんで???そして腕の拘束を解かれ、ぎゅっと抵抗できない程度に抱きすくめられる。

「うっ……ちょっと、痛い」
「痛くても我慢して。俺だって蹴られるのはいやだ」
「うぅ……

馬鹿正直に言われたらもう返す言葉が無いじゃない。

………ココアは全部飲んだの?」
「あっまだ少し残ってる」
「じゃあそれ飲んであげるから離して」
「えっほんと!?……うーんでもなぁ……

え?そこで迷う?これ言ったら離してくれると思ったんだけど……そこは男か。

「いや、やっぱり自分で飲むからしばらくこうしていたい」
………物好きめ」
「ベルナこそ」

くすくすと頭上から含み笑いが降りてくる。それと同時に頭をさらさらと撫でられ、背中をぽんぽんと叩かれる。また形勢逆転してる。私は子供じゃないってば。

「ベルナは可愛いからこうしたくなるんだよ」
「それ……理由に……なってない、から……

なんだか眠くなってきた。疲れてるのにどうしてこの人はすぐに休ませようとしてくれないのかしら。
まあ……別に嫌いじゃないけど。
うとうとしだした私に向かってクラウドは囁いた。

「おやすみ、ベルナ。夕飯になったらちゃんと起こすからね」