絶対長く続かない店ってあるじゃん。ちょっと流行るけどすぐに入れ替わっちゃう店。そういうのの家版てあるのかなって。事故物件を気にしなくても、そういう場所ってやばい場所かどうかとか、気にしない住民ばっか集まってて治安最悪で精神病むみたいな話も聞くじゃん。そういう、何もないんだけど居心地悪い、変な人ばっかくる家なのかなとか思って気味悪くなってきてさ。
でもそこでふと思ったんだよ。
出て行くかどうかは、住む人が決めてるけど、誰が住むのかは大家とか、まあ今だと不動産屋とか管理会社とかが決めてるわけじゃん。じゃあ、やばいのって部屋じゃなくてハルカさんだけ選んで入居させてる管理会社だよな。
もしかしたら、その部屋に入るやつには、ハルカって名乗れってルールがあるのかなって思ったわけ。
今時、隣の家のやつだったとして、わざわざ名乗らんでしょ。表札だって部屋番号だけで名前出してないところの方が多いよ。だから、そこに入居する人が全員ハルカさん何じゃなくて、その部屋に住むにはハルカって名乗らないといけないんだよ。
理由とかは、知らんけど。でもそっちの方が自然じゃね。お前、ゴミ捨てにいくときに顔合わせた人にわざわざ名前教えたことある? ないだろ。
何でそんなことするのかは全くわからないけどな。
でも流石に気になったから、管理会社に聞いてみたんだよね。何言ってんだお前って顔されたよ。ついでにハルカの話をしたら、それも意味わからんて顔された。なんか俺が頭おかしいやばクレーマーみたいな感じになったんだよ。
個人情報だ何だって言って教えてくれなかったけど、あの感じだと実は今まで入居してた人の名前ハルカじゃなかったんじゃないかな。
管理会社も知らないとなると、いよいよわけわからんよな。でも引っ越すほどではない。金もないし新しい家の当てがあるわけでもない。別に被害があるわけじゃないし、怖い思いもしてない。うるさくもないし。隣の人が同じ名前ですぐに引っ越して行くってだけ。
入居者自体は行儀がいいんだよ。本当に。
で、六人目だよ。次のハルカさんがくると思ったわけ。
その人はご丁寧に粗品持ってご挨拶に来るタイプだった。
インタホン鳴って、ああまたかと思ってドア開けて、そのときにふと思いついたんだよね。先回りして名乗ってみたんだ。
「初めまして、ハルカです」
隣の人がハルカさんになる前に、俺がハルカさんになってみたってわけ。
どうなるか気になるだろ。
そうしたらさ、その人突然笑い出したんだよ。六人目は、男だった。真っ当な社会人て感じのスーツのおっさん。それが口開けて、でかい声でアハハハハハハて笑うの。しかも止まらない。怖いよ。怖くて俺はそのままドアを閉めた。ドアが閉まる寸前に、隙間からそのおっさんの声がした。
結局名前は、聞かなかったから、誰さんだったのかは知らない。
「ありがとう。これで私は助かりました」
何言ってんのかわからなかった。そのおっさんは、それからずっと部屋に住んでる。それから一度も入れ替わってない。
これってさ、もしかして俺に〝移ってる〟ってことにならないか。なるよな。俺がまずいんじゃないか。何が、ってのは、わからないけど、でもだって、隣の部屋っておかしかったわけじゃん。
怖いんだよ。俺ってどうなると思う。
わかんないよな。俺もわかんない。だから、お前のこと呼んだんだよ。
それでさ、本題だよ。
お前ってさ、確か下の名前ハルカだよな。だからお前ってハルカさんじゃん。これで俺はOKってことにならないか?
譲るよ。今日からお前がハルカさんだ。
これで俺は助かった。
助かった!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
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