幸希(ユキ)
2026-05-13 23:21:30
2421文字
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どんな君も

「ちょっとS寄りに迫ってくれない?」と無茶振りした後。自業自得。

「説明してもらえんか。」

朝に「ちょっとS寄りに迫ってくれない?」とむっちゃんに無茶振りをした。何でこんな事言ったかと言うと、起きて布団から出るまでの間、むっちゃんにされる事の是非を考えていたから。

頭沸いてる自覚あるけど、何してても何されてもむっちゃんがかっこよく見えるし可愛いしめちゃくちゃ大好きだ。通常時の私であれば、真顔で表情筋も仕事してない程で、男っぽい仕草や格好を好んでする。言葉遣いだって荒っぽい。
でもむっちゃんを目の前にしたら、ちょっとでも可愛く見られたいし表情筋ゆるゆるだし、柔らかめの言い方に変わる。南海先生曰く「猫が懐いた時のそれ」らしい。猫ではないが。

まぁ話は脱線したけど、とにかくむっちゃんにベタ惚れ。いい加減周知の事実だろう。どんなむっちゃんでも「好き💕」と死ぬほどハート飛ばしてるレベル。
そんなむっちゃんバカの私でも、あまりにかっこいいが過ぎると許容オーバーで逃げ出す。もちろんその後捕まるし、むっちゃんの気が済むまで構い倒される。それを続けてきた結果というか弊害というか、その………追いかけられる事や捕まって迫られるのがクセになってきてる。いや本当こんなの言うの大分恥ずかしいんだけど、むっちゃんに逃げ場無くされたり雄出されたりすると、とてつもなくドキドキしてもう堪らない。本当はそういうむっちゃんも堪能出来たらいいんだけど、急にね!やられるからさ!?心臓持たないんだよね!?
だから考えたわけですよ。「前もって予告されてれば耐えられるのではないか」と。無告知でやられるから耐えられない。だったら知らせてもらえたらいいじゃんって思ったの。上手くいくかは知りません←
いやね?若干不本意さはあるよ?何か自分で意図してないうちに変態くさい状態になってた訳だし。本来私Mじゃないしね!?でも見たいものは見たいからやってほしいんだよね。



……っていう旨の内容を言い訳交えて話をしたら、むっちゃんは言い表しにくい顔して唸った。

「やっぱ引いた?!いや正直自分でも引いてるよ!?仕事行った後に『何頼んでんだ!?』って思ったしね?!でもちょっと欲求には抗えなかったですごめん嫌なら撤回するから。」
「引きはせんし、わしも原因作った一因じゃろうし、一応理由としては分かったきそれはえい。ええんじゃが……。」
「な、何?」
「おまさんの言う【S寄り】っちゅうのがどういうもんかいまいち分からんかったんじゃ。やり過ぎて泣かせとうはないし、かといって不満漏らされたらわしの沽券に関わる。」
「んな大袈裟な。てかそんな真剣に考えてくれてたの?」
「真剣になりすぎて燭台切と歌仙に心配されたぜよ。」
「何かごめん。」

とりあえず怒ってはなさそうだし、呆れられてもなさそう。良かった。

「S寄りって言い方したのが悪かったね。ちょっと強引にされたいっていうのが正しいかな。」
「燭台切大当たりじゃ。」
「なんて?」
「いや、こっちの話じゃ。強引のう。」

咄嗟に“S寄り”としか頭に浮かばなかったのがいけなかった。変な時に私の頭は語彙を落っことす。

「ガチのドSは不快だし普通に怖い。」
「距離感を適度に持ちながら迫る感じかえ。」
「かな?むっちゃんがよくやるやつだと─」
「こういうのかの。」

する、と手を取られてそのまま手の甲にちゅ、と口付けられる。

「え、むっちゃん?」
「嫌なが?」
「え、あ、嫌では……ない、けど。」
「不快さや怖さはないかえ。」
「な、無い。」
「ほうか。」

僅かにトーンダウンした声。壊れ物みたいに触れてくる手。あ、これ、駄目だ。

「むっちゃん、も、もういいよ。」
「まだほとんどしちょらん。」
「や、なんか、ちょっと止まって欲しい
「本気で嫌な訳やないろう?」
「いやちょ、あの!」
「嫌なら振り払っとうせ。おまさんが嫌がる事はしたくないがよ。」
「むっちゃん!」

手の甲から始まったキスは、指先、手のひら、手首、前腕と徐々に場所が上がっていく。触れる唇の感触に嫌でも心臓が跳ね上がる。もう既にドキドキしまくっててしんどいのに、私の口は制止の言葉を紡がない。

「ちょ……くすぐったいっ」
「ゆき。」
「あ!?」

いよいよ首にキスされる。頭が沸騰しそう。

「真っ赤やにゃ。」
「も、もうやめ!」
「やめん。」
「無理無理心臓壊れる!」
「本気で嫌なら叩けばえい。突き飛ばせばえい。……けんど」

す、と顎を掬われて視線が合わせられる。眼前に迫る不敵な笑み。

「強引な方が好きながやろう?」
「ゃ、ぁ!」
「こがなわしも堪らん、じゃったか?おまさんがここまで堕ちちょったのは知らんかったがよ。」
「だ、だって!んぅ!」

ようやく反論出来ると思ったけど、間髪入れずに塞がれる。いつの間にか壁際まで追い詰められてて、これ以上逃げようもなくて受け入れるしか出来ない。

「ん、ぁ、ぁ!」
「んん

キスをしながら耳も塞がれて、頭いっぱいに響く水音が思考をめちゃくちゃにしていく。
逃げたい。逃げられない。逃がして。逃がさないで。恐怖心なのか、歓喜なのか。相反する気持ちでどうにかなりそう。

「む、ちゃ……っ」
「おまさんそがな素振り見せんき、まだ知らん部分がありそうじゃな。洗いざらい見せてもらおうかのう。」
「も、も、無理!やだ!」
「んはは、へろへろじゃなあ。」
「~~~っ!!」

どかどか胸板を叩いてみたけど、むっちゃんはどこ吹く風。悔しい!腹立つ!



「えい事聞けたし、ここまでにしとこうかの。……もっともっと、わしに染まっとうせ。わしの手で変わるおまさんを見るがは、えいにゃあ。」

恍惚と、でも幸せそうにこっちを見やるむっちゃんを見たら、苦し紛れの言葉すら吐けなかった。








だってどんな君も好きなんだもの。