三毛田
2026-05-13 21:35:38
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56 【56/いつか離れていくのなら】

56日目
そんなこと許さないけど

 何か外部からの干渉がきっかけで、いつか離れていってしまうのであれば。
 今ここで無理やりにでも繋ぎ止めても、問題ないよな?
「丹恒、好きだ」
「そうか」
 案の定、淡々とした冷めた返事。
「つまんないなぁ」
「お前は、面白いかつまらないかで好意を伝えるのか」
「違うって。丹恒の反応がいつも通りだから、つまらないってだけ」
「何故いつもと対応を変えないといけない」
 呆れたような表情。いつものことだけど、やっぱりつまらない。
「本当に、俺の何が好きなんだ」
「全部!」
 これはもう決められない。だから全部と答えると、胡乱気な表情に。
 なんでさ。
「まずは、その艶サラな髪。手触りもいいし、たまーにいい匂いするし。それから、目! 戦闘の時は格好いいのに、リラックスしてる時は優しい。俺やなのには冷たい視線を向けてくる時もあるけど、それだって俺からしたら嬉しいよ。俺の事、少しでも意識してもらえてるってことだから」
 目をしっかり見ながら告げると、照れたようにそっぽを向いて。
「後褒めやすいのは……手、かな」
「手……
「そう! 槍を持つときは頼りがいがあるのに、作業をしてる時は守ってあげたくなるっていうかなんていうか……
 彼の手を見て、触れている時の気持ちを言語化しようとしたけれどなかなかうまくいかなくて。視線があっちこっちに動く。
「俺は、別に守られずとも」
「うん。お前ならそう言うと思ってた。でもさ」
 そっと作業中の彼の手を取る。
「大好きな人の手が、必要以上に傷つくのは嫌だっていう気持ちは大きい」
「必要以上に傷つくのは嫌……
 何を言ってるんだ。
 彼の瞳がそう語っているのに気づいているが、これは本心だから譲れない。
「好きだ、丹恒」
 掌にキス。
 すごい勢いで引っ込められるとか、手を叩き落されるとか、頭を叩かれる溶かされるかと思っていた。
 ので、恐る恐る顔を覗き着込んでみたらポカンとしていて。
 大丈夫かな? って思っていたら、じわじわと真っ赤に。
「おま、えは」
「うん。ごめん」
「不衛生だとか、いきなりやるなとか。色々言いたいことはある」
「うん」
「本当に、俺が好きなんだな」
 俺が触れていない方の手で顔を覆い、ボソッと。
「そうだよ。俺は、心の底から丹恒が好き」
 これだけは揺るがない事実。
 というか、この反応ってさ。
「俺の事、信じてなかっただろ」
「それは、すまないと思っている」
「思ってるなら、チューして」
「残念だが流石に無理だ」
 うん。断られると思っていた。