meru2408
2026-05-13 18:09:35
5863文字
Public モンギル
 

クラベル(クラウド×ベルナ)

初夏の特別なプレゼント

side:ベルナ


「ベルナ、ちょっといい?」

扉の向こうから呼んできたのはクラウドだ。はて、何かあったのかと首を傾げる。

「何?もう寝るところなんだけど」
「いいからこっち来てって」
「何よもう

あまりにしつこく呼ぶので仕方なく扉を開ける。

「何?どうかした?」
「へへ、じゃーーん!ベルナに!」
ん?何これ」

差し出されたのは割と大きい包み紙。なんだ、ちらっと見えてたのはこれだったのか。体格のいいクラウドの影に隠れきれなかった包み紙の端っこが目に留まる。あとさっきからソワソワしてるし。

「よその国では冬に贈り物をする風習があるらしいよ。だから考えに考え抜いて買ってきた!ベルナって何が好きかってご飯しかないし」
「失礼な。好きな物くらいあるわよ。……ん?っていうかこれって冬に贈り物をするんじゃなかったっけ?今は初夏なんだけど」
「あっ」
「もうほんとせっかちなのね……ふふ」
「!」

クラウドが持っていた包み紙を手に取ると何やらふわふわとした感覚。ん?食べ物じゃない?

「ほんとに貰ってもいいの?」
「ああ!別に気にくわなかったら捨ててもいいから!」
「いや貰い物なんだから……開けてみてもいい?」
「どうぞ!」

いやにそわそわと落ち着かない男である。

「あ、落とすと怖いし、机の上でもいいわよね?」
「いいよ、ベルナの好きなようにして」
………

たまにこの男の発言はどう反応していいか迷うときがある。

部屋のサイドチェストに向かう。もちろんクラウドも中まで着いてくる。クラウド曰く、「ベルナの部屋は普通に入れる」とのことだ。
私をなめてんのか。まあいつものことである。

包み紙を机の上にそっと置き、丁寧に封を切る。

「もっとバリバリ開けていいのに」
「私は淑女なのよ。そんな豪快にするのはあんただけでいいわ」
「え?!ベルナって淑女だったの!?」
「燃やされたいのね?」

小言の掛け合いをしながら包み紙を全部外すと、中からふわっとしたブランケットが出てきた。

「これ……
「この時期探すの大変だったんだけど、丁度いいのがたまたまあってさ。なんだっけ?毛布じゃなくて
「ブランケット!名前くらい覚えなさいよね」
「そうそうそれ!」
「それ!じゃないのよ。ブランケットも冬に使うものよ!まーたあんたは考えなしに買ってきて

クラウドは頭をかくと照れくさそうに言った。

「いや、俺もそう思ったんだけど……この、えーとブランケットを見たらこれに包まれてるベルナを想像しちゃってさ……はは」
「なん………、」

なんっでこんな小恥ずかしいことを平気で言うかなあ!?いや平気そうではないけど!!

「だって色も深い赤だし、丁度いいかなって。ほら!まだ朝晩寒い時もあるだろ、だからそれ使ってくれればなって」
………うぅ」

結局使う前提じゃないの!気に入らなかったら捨ててもいいって言ってたくせに。

「やっぱりダメかな……?」

ほらあ!こんな子犬みたいな反応をする!こういうところが苦手なのよ!

「ダメじゃないわよ!ボロボロになるまで使ってやる!」
「えっあ、うん?えっ使ってくれるの?!」
「いやだって貰ったからには使わないと勿体ないし………それに、普通に嬉しいし」
「えっ」

なんかこっちまで恥ずかしくなり、声が小さくなってくる。ダメよベルナ!しっかりしなさい!

「あーーー………ベルナ、ちょっとま、……
「ん………?」
「いや、ちょっとまだこっち見ないでくれ

ここでクラウドの様子がおかしいことに気づきそっと近づいて様子を窺おうとするとやんわりと断られた。

「何よ、今更返せって言われてももう使うんだからね!」
「や、それは全然いいんだけど……
「何よ、……どうしたの?」
…………ベルナが可愛すぎて………
「は、?」

またもや爆弾発言である。この人は私をどうしたいのか。顔を背けた耳まで赤くなったクラウドを見てこっちも火が付いたように顔が熱くなる。

………とりあえず、ブランケットの端っこ探してみて
「えっなんで」
「いいから探してみて」

訳も分からずブランケットの端っこを見てみる。ない、こっちもない、こっちは……ん?なんか白く、……刺繍してある?

「これって………私の名前?」
「そう。お店の人に「渡す用ですか?」って聞かれてはいって答えたら、相手への贈答用に刺繍とか出来るって言われてさ。だから、その、……俺は氷だからさ、ちょっと………白い糸で、ベルナの名前入れてもらった
……………

恥ずかしそうにどもるクラウドを前にどうしていいか分からず、でも何か、こう、独占欲???ありすぎじゃない???
それが無意識だっていうんだからもう

………ぐすっ」
「えっベルナ?!えっえっごめん嫌だったね?!やっぱりない方が、」
「違うわよバカぁ!」
「わっぷ!」

勝手にぼろぼろ出てくる涙もかまわず、ブランケットをひっつかんだままクラウドに突進して抱きすくめた。

「えっちょ、ベルナ、待って、一回離れ、」
「いや!!!もうこのままでいる!!!っていうか一緒に寝る!!」
「は!???!いやそれはちょっとこま……………………、っうぅ、…………分かったって、分かったからそんな顔で見るなよ………あーもう!」
「んっ……うぅ、ふえ……

私の我儘に終始おどおどしていたが、泣き腫らしたままキッと睨みつけると、観念したように抱きしめ返してくれた。
そうしたら安心感がどっと出てきて更に涙が溢れてきた。

「もう泣くなってお前らしくない……いや、俺がこうさせちゃったのか……?いや、でも……

1人でぶつぶつ挙動不審になってるそいつはずっと私を抱きかかえたままだ。なんでこんなに安心するんだろうお父さんみたい。
もう何分か経ったのか分からないけど、ようやく涙は止まった。
そっと離れる。相手は名残惜しそうだ。

「ごめん………変なとこ見せちゃったわね
「いや、可愛かったから全然大丈夫」
………

こいつの素はもう慣れるしかないのか。

「あー……あとさ、もう一つ、あるんだけど」
「えっ?ま、まだあるの?!」
「いやあと一個……

思ったよりもふわふわで使い心地良さそうなブランケットをもふもふしてると、そんな言葉が出てきて天地がひっくり返るかと思った。

「え、何?もう何も持ってないわよね?」
「そうなんだけど………えっと……

さっきから歯切れが悪いな。ちゃっちゃと言いなさいよ。

「ベルナが良ければ………だけど」
…………あんたからの贈り物は受け取るつもりだけど」
………っ、」

そっちが馬鹿正直になるんならこっちも馬鹿正直に言ってやろうじゃないの。
というか今なんかクラウドの方から変な音しなかった?
と思いもう一回顔を見合わせると、

「な、ん、……………そんな顔、」

見たことない顔してた。言わば、ダイオーカミィみたいな、獣の目。飢えた獣の顔。今にも噛みつきそうな、

「ベルナ、一回目、閉じて」
「え、あ……ちょ、待って、」
「待たない。俺からの贈り物は受け取るんだろ?」
「えっと、そうだけど…………え、いやいやいやちょっとまっ」

じりじりとクラウドが迫ってくるので、ブランケットを机にほっぽりだし、後ずさる。待って待って??形勢逆転してない???!
逃げられる体勢を整えるがすぐにトンッと壁に追いやられてしまった。

「ま、待って!?何する気?!」
「何って贈り物をあげるだけだよ」
「本当にくれるだけなの?!そうよね?!」
「そうだよ」

こいつの素の感情はいつものことだと思うのだけど、今回ばかりはそうも言ってられない。だってそんな、獲物を見る顔して淡々と喋るのよ?!怖い!

「もう観念して、ベルナ」
「は?!観念って、やっぱり何かする気じゃ、」
「しーみんな寝てるから」
「うぐ

そうだった。贈り物でいろいろ忘れてたけど、私ももう寝るんだった。というかなんでいつの間に扉閉めてあるの???

「じゃ、じゃあもう一つの贈り物は明日貰うわ!それでい、」
「だーめ。今。だから目閉じて」
………うぅ、分かったわよ…………

これから何をする気なのか、おおよそ検討はついていた。でも恋愛に臆病な私は積極的なこいつと合わないんじゃないかって逃げてしまっていた。
それは考えに考え抜いて贈り物を用意してくれたクラウドに失礼なんじゃないかって、クラウドに失望させるんじゃないかって思って。

観念した。

………ベルナ。愛してる」
………っ、」

目を閉じてからしばらくしてぎゅっと包み込まれる感触。クラウドの匂い。そっとクラウドの背中に手を回すと更に腰を抱く力を強めてきた。
これが男の子なんだ。そう思ったらまた顔が赤くなるのを感じた、その直後。

「いっ………えっなに、ん……っ」

自分でも変な声が出ていると分かっていたがそんなことはもう気にしてられない。
今、こいつは何をしている???私の首筋噛んでる???何の意図があって???
ちゅ、ちゅっと音がするたびにぶわりと体が震え、今まで感じたことのない熱さが体の奥から出てきている感じがする。

「んぅ、ちょっと……クラウド、何して……いったい!!」

クラウドの唇が触れ動くたびにびくりとするこの体が恨めしい。そして最後に思いっきり噛まれて吸われた。蚊かこいつは。

「ん………ぷは、んん、良かったちゃんと付いた」
「ちょっと!痛いじゃないのよ!最後なに?!あんたは虫の類か!」
「しーー!ベルナ声が大きいって!」
「うぅ………何したのよ………
「何って………………………キスマーク」

思わず近くにあった手帳でそいつの頭を叩いてしまった。

「いたあ!ベルナ!加減してよ!」
「いや思わず……
「あ、これも贈り物だけどもう一つあるからね?」
「は?」

え、今こいつなんて言った?もう一つある???これで終わりじゃなくて?ひりっとする首筋をするすると撫でているとまたクラウドの方から変な音がした。
今日のクラウドなんか変じゃない???熱でもあるの???

「え、ちょっと、なに」

がしっと力強く肩を掴まれ、かと思いきや片方の手で両腕をしっかり拘束された。

「や、ねえ、何するの」
「もう一回目閉じて」
「も、もういいって!もうありがたく貰ったから!………んん!何その目!あんた今日怖いわ!」
「えっ……怖い?」

また獲物を狩る目つきになっていたが、怖いと聞くとぽかんとした表情を見せたので、ちょっとほっとしたのはある。

「ご、ごめん……そんなに怖いかな、俺……

しゅんと子犬みたいな反応されてまた困る私。はぁ
ちなみにそんな反応してもまだ両腕の拘束は解けていない。
ということは、まだ贈り物を届けたいという気持ちはあるのだ。

「う………あのね、その、こういうのは順序ってもんがあるのよ?」

その子犬みたいな反応は本当にくるものがあるので結局は私が折れるしかないのである。クラウドという男、恐るべし。
いやなんで恐れてるのよ。

「うんわかってる、わかってるよ」

自分に言い聞かせる感じで喋るのでまた怖くなってきた。というかそろそろ腕の拘束を外してほしい、存外、痛い。

「ダメ。痛くないようにするけど、腕を離したら何かが飛んで来かねない」
「いやまぁ

図星である。私は照れくささにいつもこいつの頭をひっぱたいたり物を投げたりしているから。淑女としての私はどこいったの。

………もう正面突破だな」
「え?んっ、ぅ、」

小声で聞こえたので聞き返そうと頭を上げた瞬間、唇を塞いできた。

「ん、………ふ、んぁ、んん?!」

するりと肩を撫でられびっくりした瞬間口を開けてしまい、熱い舌が割り込んでくる。

「んーっ!っぷは、ちょ、クラウド、待っ、あ、んぅっ」

息継ぎのために唇を離されたが、今度は背中をつーっとなぞられのけぞった瞬間にまた口づけられる。


そうして数分経った頃。

「はぁ……はぁ……、っこの変態クラウド!」
「おっと、まだ腕を離しちゃダメだったな。………どうだった?贈り物は?」
「うぅ……!もう!」
「暴れるなって」

あまりの恥ずかしさに意識が遠のきそうだ。がっしりと掴まれた腕を外そうともがくけど男の力には勝てそうにない。
もうダメだ。
ぽすんと頭をクラウドの胸に置いた。するとさっきまで強く掴まれていた腕がするっと解かれ、その代わりにまた強く抱きしめられる。

「お気に召したんだ?」
………好きなように解釈してちょうだい」
「そっか…………へへ」

今度は大型犬みたいに嬉しそうに見えないしっぽをぱたぱたさせながらにこにことしているのだろう。子犬みたいだったり大型犬だったり、
はたまたオオカミみたいになっていたり……七変化にも程がある。

「だいぶ遅くなっちゃったな……そろそろ寝ようか?」
………あんたのせいよ全く………そうね、さっそくあれ使わせてもらうわ」

あれとはブランケットのことである。結構ふわふわとしていてやみつきになりそうな素材だ。

「あ!じゃあ今夜俺も一緒に使わせてもらおうかな!」
「え?」
「ん?」
「もしかしてちぎって使うとかじゃないわよね?」
「何を言ってるんだベルナ……一緒に使うんだって」
え?」
「え?じゃなくて。ベルナが言ったんだろ。さっき、一緒に寝るって」

あー、そういえばそんなことをのたまったような気がしなくもない。あっやばい、思い出した。あーーー、

「あ………そんなこと言ったかしら……
「ベールーナー?忘れてただろ?俺は覚えてたからな?」
「う…………明日にするって……ことで、」
「よしっベッドに直行だー!」
「きゃっ!?ちょっと!!」

じとーっとしたクラウドに睨みつけられ縮こまってると、ふわりと体が浮いた。そう、お姫様抱っこされているのである。

「ベルナ、静かにしないと……、キスだけじゃ終わらなくするよ?」
「ひ……、」

思わず口元を覆ってしまい、そのままベッドに寝かせられてしまった。
もちろん貰ったブランケットも一緒に。